自衛隊が新たに導入する「輸送艦」はどんな船?同クラスの船から推察。

自衛隊が新たに導入する「輸送艦」はどんな船?同クラスの船から推察。

陸上自衛隊が新たに導入すると言われる輸送艦。

現時点では、その所属は未定とされていますが、自衛隊の南西シフト・離島防衛重視を進める上で重要な装備になると言えます。

400トン級及び2000トン級と言われていますが、実際にこのクラスの輸送艦とはどのようなものなのか。

一部、筆者の予想も混じりますが解説していきます。


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排水量?積載量?

この輸送艦導入の報道に際して、長らく400トン・2000トンという報道がされていた為、筆者もこれを「排水量=船の重さ」と考えていましたが、先日の防衛大臣の記者会見において

このため、現中期防において島嶼部への輸送機能を強化するため、本土と島嶼部への輸送を実施し得る大きさで、2,000トン程度の搭載能力を有する中型級船舶1隻と、喫水が浅い島嶼部の港湾にも輸送を実施し得る大きさで数百トン程度の搭載能力を有する小型級の船舶3隻を取得することとしています。
(令和3年2月16日閣議後記者会見より)

と、このトン数が排水量ではなく積載量であるといった趣旨の発言をしています。

2000トンの船と、2000トン載せられる船、だと大きく意味が変わりますが、今回はその両方の可能性を考えていきます。

400トン級はLCU?

排水量で400トン級の船というと、海上自衛隊で運用されている輸送艇1号型がこれに近いサイズになります。

基準排水量420トン、満載排水量で540トン。
多数の車両を搭載することが可能ですが、一方で戦車の積載には対応していません。

一方で積載量が400トンだと、これに近い船としてはアメリカ陸軍が運用するラミーニード級汎用揚陸艇が存在します。

こちらは軽荷排水量で672トン、満載で1102トンで、アメリカ軍の主力戦車であるM1エイブラムスの運搬にも対応しています。

輸送艇1号型・ラミーニード級、どちらも砂浜にビーチング、すなわち船首を乗り上げて先端のバウランプを用いて搭載車両を直接降ろすことが出来るタイプの船舶です。

今回の輸送艇導入に際しては、大型輸送船の着岸が難しい離島への物資輸送能力の強化が求められることから、着岸場所の自由度というのは重要な要素になると思われます。

2017年のMAST ASIAにて三井造船が輸送艇1号やラミーニード級といったLCUの発展型とも言えるLCT(Landing Craft Tank)というタイプの船のデザインを展示していたこともあったので、これに近いコンセプトの船になるのではないでしょうか。

2000トン級はフェリータイプもありか

2000トン級の輸送艦というと、過去には海上自衛隊でみうら型輸送艦(基準排水量2000トン)などの戦車揚陸艦を運用していた実績があります。

戦車揚陸艦はLCUと同様、砂浜に直接乗り入れることが可能なビーチング能力を有する艦ですが、その引き換えとして船首のバウランプを設ける為に造波抵抗が大きい形状となり航行速力が14ノットと決して速くないこと、またビーチングを前提にすると船体下部を平らにしなければならず荒天に弱いことなどの欠点も抱えています。

今回、導入される輸送艦は中型・小型と2タイプを導入することから、ハブ&スポーク方式で離島への輸送は小型に任せて、中型船はハブ輸送に専念させるという運用が合理的と考えます。

その場合、中型2000トン級はある程度港湾設備の整った港(沖縄の離島への輸送を考えるなら、沖縄本島)への輸送に専念出来るので、ビーチング能力を求める必要はありません。

また敵前に直接乗り込むわけではないので、戦闘を考慮する必要もありません。求めるとしても小型舟艇によるテロなどを警戒した12.7mmの重機関銃などでしょう。と、なると民間船やそれをベースとした船体でも十分役目を果たせます。

アメリカ海軍では現在、民間の双胴フェリーを発展させた遠征用高速輸送艦「スピアヘッド級」を運用しており、これは自衛隊が傭船契約している「なっちゃんWorld」と同様の双胴船です。

スピアヘッド級と同じ双胴の高速輸送船・HST-1グアム。元々民間フェリーとして建造されるも受注キャンセルとなったものをアメリカ海軍が調達。

スピアヘッド級では満載排水量で2400トン、兵員312名+機材545トンの積載に対応しており、最大で43ノットという足の速さを備えています。

なっちゃんWorldで培ったノウハウを活用するという点で考えると、このような双胴の高速フェリーベースの輸送艦は十分選択肢に入ると思います。

何にせよ、どのような船が新たに導入されるのか、続報を待ちたいところです。