さようならOH-6。日本の空を駆け巡った「空飛ぶタマゴ」
2020年3月、日本の空を40年に亘り飛び続けてきた小さなヘリコプターが、間もなく最後の瞬間を迎えようとしています。
OH-6、タマゴともレモンとも呼ばれた、丸っこい軽くて小さい、働き者のヘリコプターのお話です。
OH-6・オスカー
OH-6、陸上自衛隊でのコールサインから「オスカー」とも呼ばれるこの機体は、とても小さなヘリコプターです。
UH-1Jがローター直径およそ15mに対して、OH-6は約8mとおよそ半分、また荷物・燃料を一杯に積んだ状態でも重量は約1300kgと車1台分とさほど変わりません。何も乗っていなければ650kgほどしか無いので、2人掛かりで押して移動出来てしまうほどです。
この小さなヘリコプターが生まれたのは、1960年代。小型で高い機動性を有し、かつ航続距離も満たす観測ヘリコプターOH-6カイユースとして米軍に採用されたのが始まりです。
OH-6はベトナム戦争の戦場で、攻撃ヘリコプターの元祖であるAH-1コブラとチームを組み、その小柄な機体を活かして戦場を飛び回り敵を探す任務で活躍しました。
日本で導入されたのは1969年のこと、当初は観測ヘリコプターとしての導入でしたが、後に陸上自衛隊のパイロット養成コースで練習機としても活躍。
また海上自衛隊でも初等訓練終了後の、回転翼訓練機としてOH-6を導入しました。
OH-6はその高い機動性を活かして「空飛ぶジープ」としても活躍しました。
ちょっとそこの丘の上の陣地まで、人を物資を運ぶのに、小さくて軽量で取り回しの効くOH-6は非常に扱いやすいヘリコプターだったのです。
日本におけるOH-6の導入はOH-6J→OH-6Dへと変わり、最終的に1997年の313号機まで続きました。
(海上自衛隊で一部、民間型のMD-500を購入した実績もあり。こちらはOH-6DAとして運用)
空飛ぶタマゴ
OH-6の特徴とも言えるのが、丸みを帯びた胴体。
この形状から通称「フライングエッグ」、空飛ぶタマゴという愛称も有しています。
また海上自衛隊の練習機は黄色に塗られていたことから「レモン」という愛称もあります(海上自衛隊の救難行動時の機種別コールサインとしても”Lemon”が制式に割り振られていた)
OH-6は非常にシンプルなヘリコプターでもあります。
操縦系統は機械式のリンクで構成されており、パイロットの手足の操作がほぼダイレクトに機体に反映されます。
コンピュータによる自動補正などは無く、その操縦はまさに「人馬一体」とも言えるものです。
航空祭でOH-6を扱う隊員さんにお話を伺うことが出来ましたが
「とにかく操作がダイレクトで、自分の手足で飛ばしているという実感がある」
「その分、非常にシビア。僅かなズレが機体にそのまま影響する。ホバリングするのはなかなか大変」
「だけどその分、飛ばしがいがある」
と、シンプル故の特性をとても楽しそうに、そして少し寂しそうに語って頂きました。
パイロットや整備員にも空飛ぶタマゴは、とても愛された機体だったようです。
しかし残念ながら練習ヘリの後継機は陸上自衛隊ではTH-480、海上自衛隊ではTH-135となり、また観測任務もOH-1が後継となったことから、退役が決定。
先日、3月6日に第12ヘリコプター隊に残っていた最終号機313号機もラストフライトを迎え、恐らくこの記事を書いている時点では全て退役しているか、あるいは明野の航空学校などにかろうじて最後の機体が残っているかという状況でしょう。
日本の空を飛び回った小さな「タマゴ」、OH-6とそれを支えた全ての人達に感謝の言葉を以て締めくくりとしたいと思います。
ありがとう、OH-6。お疲れさまでした。
※参考資料
- 軍用ヘリコプター事典(イカロス出版)
- 世界航空機年鑑各号(せきれい社)
お疲れ様でした。
分厚い、整備マニアル、懐かしいです。