海上自衛隊所属の回転翼救難部隊として、館山及び大村の航空基地を本拠地として日々活躍している第72及び第73の両航空隊。

大村の第72航空隊は五島列島・九十九島など九州の離島の命を支える部隊として、日本でもっとも多くの災害派遣(急患輸送)をこなす部隊として知られます(HPによれば平成25年時点で県知事から4500回の急患輸送実績に対する感謝状が授与されてるとのこと)

また第73航空隊も小笠原諸島などの急患輸送に、この10年で450回以上出動しているとのことです。

さて、そんな救難飛行隊ですが、4月から大幅に組織が変更されるとの話が流れて来ました。
航空隊ではなく「飛行隊」となるとのことです。

今回は、海自救難飛行隊がどのように変わるのか、そしてそれは果たして何を意味するのか。まとめていこうと思います。

「航空隊」から
「飛行隊」へ変わる

海上自衛隊の回転翼部隊の組織について簡単に説明しますと

このようになっています。

空自でも似たような編成ですが、大きなエリアを束ねる「航空群」(司令は海将補)、更に館山・舞鶴などの基地毎をまとめる「航空隊」(司令:一等海佐)、そしてその下に「飛行隊」があるという流れです。

救難飛行隊は現状、航空群の中でも「航空隊」の独立した地位が与えられてきました。
そのため、第21航空群を例に見ると、大湊基地の所属機は本来なら第25航空隊の管轄になりますが、そこに派遣される救難飛行隊は「第73航空隊の分遣隊」という扱いを受けます。同じ基地にいながら、独立した立場となるのです。

第21航空群HPより画像引用

海自の回転翼部隊の簡単な概要を説明したところで、では4月以降はどうなるのか。

館山では救難飛行隊が第21航空隊隷下・第213飛行隊に編成を変更。
また大村では同様に第22航空隊隷下に第224飛行隊として変更されます。

つまり独立した航空隊ではなく、他の哨戒ヘリ部隊と共に航空隊の1飛行隊という位置づけに変わるのです。

また従来、館山からの分遣隊扱いであった大湊分遣隊は廃止され、先の第213飛行隊に統合されるとのこと。

他の哨戒ヘリと同列の「飛行隊」として組織変更される。

これは単純に「組織の合理化」や「規模の縮小・整理」などで語れるものなのか。

ここからは筆者の予想も踏まえた話になります。

艦載救難への
移行過程か?

現在の救難飛行隊は艦載部隊ではなく、陸上基地をメインに任務に当たっており、洋上への「航空輸送隊」としての役割も与えられています。
あくまでも固定翼哨戒機部隊などと同じで「陸上航空基地」の部隊という性格が強いのです。

対して米軍の空母航空団を見ると、救難飛行隊は「艦載機」として扱われ、艦載機の事故発生時などには速やかに発艦して捜索救難任務にあたります。

言わずもがな、陸上拠点から遠く離れた場所に航空拠点を構えることが出来るのが空母の強みなので、当然ですが救難機も一緒に移動する必要があるのです。

現状、海上自衛隊では護衛艦の艦載ヘリにおいてもセンサーマン(SO)のうち、救助員の資格を持つものを救難員として搭乗されて、副次任務で洋上捜索救難にあたることがあります。

しかし救難飛行隊には衛生科から選抜された機上救護員(航空救難における救命士)の資格者がいるが、艦載ヘリには降下救助員がいるのに機上救護員がいないなど、色々と歪みがあると言わざるを得ません。

米軍空母のような「艦載救難飛行隊」の体制は海上自衛隊には出来上がっていないのです(日本領海内及びその周辺を主な活動範囲とする以上、必要が無かったので当然といえば当然ですが)

しかし昨今報道などにもある通り、自衛隊においても空母の導入が本格的に検討されようとしています。

空母を持つということは、日本本土を遠く離れて任務に当たる可能性があるということ。当然ですが、空母は現在の陸地からの救難飛行隊の担当可能範囲を大幅に超えて活動する可能性があり、艦載機による捜索救難は空母保有を考える上で必須の能力と言えます。

ならば既存のヘリ部隊を整理して「哨戒」と「救難」の両方を1つのユニットとして運用する「艦載ヘリ航空隊」という考え方が生まれるのは、それほど不思議なことではないかもしれません。

アメリカ海軍では艦載ヘリ部隊を、統合多用途艦載ヘリコプターMH-60Rと多用途・補給支援ヘリコプターMH-60Sの2機種に統合する流れとなっています。

海上自衛隊もUH-60・SH-60系列で哨戒機+多用途機の艦載ヘリ部隊を作るのかもしれません。

また先にも書いたとおり、陸地→洋上への輸送任務も救難飛行隊が担っているのが現状ですが、UH-60でも届かない距離まで自衛隊空母が進出する可能性を考えると、今後この任務をヘリ部隊が担うのは難しいと考えます。

そうなると当然、より長距離の航続能力を持つ「何か」が、これを後継することが考えられます。

もっとも、自衛隊が所有を目指すのがカタパルトを備えない空母であれば、現状その要求を満たせるのは「オスプレイ」しかありませんが。

ベル社が海自のUH-XにCV-22を推しているという話も聞いたことがあります。

対潜哨戒機と多用途機を60系列で輸送任務はCV-22という今までは想像も出来なかった海自艦載機の編成が出来上がるのかもしれません。

現在の救難体制はどうなる?

さて、海上自衛隊だけに限って話を進めてきましたが、このような話が進むと海自だけで収まる話でありません。

現在の日本では、洋上捜索救難は全国を複数のブロックに分けて、海自と空自が分担しています。

(自衛隊の航空救難に関する達より画像引用)

海上自衛隊の救難飛行隊が艦載部隊として外洋に出て行くということは、何かしらの方法で穴を埋めないといけないのです。

この点、空自の航空救難団が増強されるのか、はたまた空自を洋上救難に専念させて、陸自のヘリ部隊などに役目が回ってくるのか。

自衛隊の空母保有、その影響は自衛隊という組織全体を大きく変えることになるのかもしれません。

※参考資料

  • 第72航空隊ホームページ
  • 第73航空隊ホームページ
  • 自衛隊の航空救難に関する達