航空自衛隊の戦闘機部隊。

第201飛行隊、第301飛行隊と200番台や300番台の飛行隊は存在するのに、第101飛行隊や第102飛行隊といった100番台の飛行隊は存在しません。

100番より手前の第3飛行隊や第11飛行隊のような1桁・2桁の飛行隊は存在するので、100番台だけがすっぽりと欠番になっています。

実は、この100番台の飛行隊、1950年代から60年代にかけて僅かに「10年」存在した幻の飛行隊なのです。

そして、そこで使われていたのが「セイバードッグ」という戦闘機。

自衛隊で僅か10年で姿を消したセイバードッグを紹介していきます。

F-86の発展型

F-86Dは第1世代ジェット戦闘機の代表機とも言えるF-86セイバーを発展させた機体で、F-86の愛称セイバーと、機体形式のDからもじった「Dog」でセイバードッグの愛称で呼ばれています。

しかし発展型といいますが、正確には新規開発のベース機とでも言えるほど、その両者の違いは大きく部品の共有率は3割以下と言われます。

外見ではレーダーを収める「鼻」が出来た事で、インテーク周りが全く別の機体といえるほど変化しています。
(左奥が従来のF-86、右側がセイバードッグ)

全天候能力

F-86セイバーを始めとした当時のジェット戦闘機の戦い方は基本的に目視による戦闘であり、その戦闘能力を発揮できるのは相手を「眼」で見つけることの出来る状況に限られていました。

しかし必要は発明の母とはよく言ったもの。

悪天候・夜間、相手を眼で見つけられてなくても戦闘が可能な「全天候戦闘機」が生まれるのにそれほど時間は掛かりませんでした。

F-86Dセイバードッグは、このような時代の中で生まれた全天候戦闘機の先駆けとも言える機体です。

武装はロケットのみ

F-86Dに搭載された武装はMk4FFAR・マイティマウス空対空ロケット×24発。

これだけです。

ミサイル・機関砲といった装備は搭載されておらず、空対空ロケットの運用に特化されています。

空対空ロケットは航空機の高速化に伴って生まれた過渡期の武装といえます。

戦闘機にはインタセプター、即ち自国を狙う爆撃機を到達前に撃ち落す役割が期待されますが、爆撃機・戦闘機、その双方がスピードアップしたことで、会敵した際に交差するのが一瞬の出来事となりました。
ヘッドオンヘッド、双方が互いに接近する状況では初撃後に旋回して再度攻撃機会を得られる保証も無いため、僅かなチャンスで確実に敵爆撃機を落とすことが求められます。

機銃では命中精度と威力が足りず、当時のミサイルも未だ射程距離・命中精度、いずれにおいてもこの条件を満足できるものではなかった為
「爆撃機を十分に落とせるだけの威力の弾を、短時間に大量にばら撒く」
という発想の兵器が空対空ロケットです。

もっとも射撃管制装置があったとはいえ無誘導のロケット弾が飛んでいる航空機に命中する可能性は極めて低く、後にミサイルの発展により空対空兵器でなく、空対地兵器としての役割にシフトすることになります。

自衛隊への配備

自衛隊へは1958年にアメリカ軍からの供与品という形で配備が始まり、第101・102・103・105の4個飛行隊がF-86D部隊として誕生しました。

自衛隊にとっては初めて配備した全天候戦闘機となります。

しかし、セイバードッグには問題が山積みでした。

現在ではレーダーや火器管制はパイロットが操縦をこなしながら個人で扱えるものになっていますが、黎明期のそれらは非常に複雑な操作・調整を必要とするものでした。とてもパイロットが操縦の片手間で扱えるようなものではなかったのです。

事実、セイバードッグと同じシステムが搭載されたF-94Cスターファイア、F-89Dスコーピオンは乗員が2名の複座機です。

しかしセイバードッグは単座。

しかも夜間や悪天候での迎撃は基本的に計器飛行となり、計器飛行を行いながら複雑なレーダーと火器管制を操作する…
「腕が3本あっても足りない」
とまで言われた、その扱いの難しさは群を抜いていたようです。

また当時としては最新鋭だった火器管制装置は真空管の塊でしたが、これが日本の高温多湿な気象条件とは極めて相性が悪かったようでトラブルが多発。

米軍からの供与品ということで部品の在庫も十分に抱えることが出来ず、機体の稼働率は決してよくなかったと言われます。

そのような事情もあってか、F-104Jスターファイターの配備も進んだことでF-86Dは配備開始から僅か10年で航空自衛隊から引退、配備されていた101~105の各飛行隊も機種変更をせずに解隊となり、半世紀たった今もその飛行隊番号は「欠番」となっています。

F-35Aの配備で第101飛行隊が復活するのでは?という話もありましたが、その役目は302飛行隊に譲られることとなり。

幻の飛行隊が復活する日は、まだまだ未定となりそうです。