まもなく退役レコンファントム。RF-4EとRF-4EJの違い。

まもなく退役レコンファントム。RF-4EとRF-4EJの違い。

2019年度末に退役の迫る百里基地の偵察航空隊・第501飛行隊。

ウッドペッカー・キツツキのマークを冠する部隊で、航空機による写真撮影・偵察を主任務としています。

この部隊が使用する航空機には、RF-4EとRF-4EJという2種類があります。

どちらも同じF-4戦闘機をベースにした機体ですが、それぞれ何処が違うのか。

501飛行隊最後の航空祭も迫る中、両者の違いを解説していきます。


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偵察専用機 RF-4E

RF-4EはF-4戦闘機をベースとした機体ですが、最初から戦闘機ではなく「偵察機」として専用の設計がなされた機体です。

また航空自衛隊のF-4EJは三菱重工でライセンス生産を行った日本生まれの機体ですが、このRF-4Eについてはアメリカから直接完成品を購入する方式が取られています。機体番号もF-4EJとは全く違う901~913番です。
(RF-4Eもライセンス生産すると、F-4EJの調達が遅れてしまうため)

ミサイルの搭載は勿論のこと機関砲すら装備しておらず、その高い機動性をもってひたすら撮影ポイントへと気付かれないように忍び込み、更に撮影後は敵の追撃を振り切って基地へ戻る。途中で敵機に出会っても回避する他ありません

RF-4Eは今となっては珍しいフィルムカメラなので、撮影に成功してもフィルムを基地に持ち帰って初めて偵察ミッション成功です。
それ故、とにかく「見つからない」「逃げる」がセオリーなのです。

F-4EJ戦闘機では機首部分にはレーダー及び機関砲の弾倉などが設置されていますが、RF-4Eでは大型の撮影機材が収められています。

この撮影機材は低高度用・高高度用など、任務に応じて載せかえることが可能で、偵察目的や対象に応じて最適なものが選択されます。

なお青い迷彩塗装が施されたファントムも存在しますが、これは別機種ではなくRF-4Eの塗装違いです。

上の905号機・913号機を含め3機が洋上迷彩機として活躍しましたが、今や最初に洋上迷彩に変わった901号機、1機のみが青ファントムとして残るのみになりました。

最後の洋上迷彩・青ファントムとなった901号機。最初に導入されたRF-4Eでもあります。

元戦闘機から
ジョブチェンジ
RF-4EJ

一方のRF-4EJは、真正面から見ると分かる通り戦闘機のF-4EJと同様に機首の下には機関砲が搭載されています。
また塗装が緑とクリーム色のRF-4Eに対して、緑とグレーになっているのも特徴です。


写真左側の機体のようにミサイル(訓練弾)を積んで飛行することもあります。

(拡大図)

RF-4EJは元々は全てF-4EJ戦闘機として活躍していた機体が、偵察用途へとジョブチェンジをした機体です。
しかしRF-4Eのように機体内部に専用の偵察機材を組み込む改修を行うのは多額の費用を要することから、機関砲などの装備はそのままで外付けで撮影機材を搭載する方式が採用されました。
なお機体番号3桁はRF-4Eの900番代とは異なり戦闘機時代と同じものを引き継ぎましたが、その手前にある用途番号が戦闘機を示す『8』から、偵察機を示す『6』に変更されています。

一番頻繁に使われるのは、一見すると燃料のドロップタンクと見分けが付かない形状のLOROPポッド。この中には長距離撮影用のカメラが収められています。
なおRF-4EJには初期の限定改修機と、量産改修機がありますが限定改修機はこのLOROPポッドの運用しか出来ません。

量産改修型では更に2種類のポッドが追加されました。

1つは前側が少しカットされたような形状をしているTACポッド。
低高度用・高高度用・赤外線偵察の3種類のカメラを搭載している高性能ポッドです。

そしてもう1つは写真撮影ではなく、電波情報を収集するためのTACERポッド。
これを搭載している時は、RF-4EJも一種のELINT(電波偵察)機であると言えます。

なおRF-4EJは有事の際には戦闘機に「戻す」ことも視野に入れられていると聞きますが、幸いなことに偵察機のままで、その翼を休める時を迎えられそうです。

※参考文献

  • 世界の傑作機F-4E,F,GファントムⅡ(文林堂)
  • 航空自衛隊F-4マニアックス(著:青木謙知・石原肇)
  • F-4ファントムⅡの科学(著:青木謙知)