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海上自衛隊, 自衛隊雑学, 航空自衛隊, 陸上自衛隊

自衛隊機の最低飛行高度は何メートル?

最近、何かと聞く「低空飛行」という言葉。

民間機には航空法や関係法令に基づく最低飛行高度が決まっていますが、様々な特例が設けられている自衛隊機の場合にはどうなるのか?

様々な法令や防衛省の訓令から解説していきます。

民間機の最低高度

まず最初に民間機の最低高度について。

これは航空法及び航空法施行規則により定められており

航空法第81条
航空機は、離陸又は着陸を行う場合を除いて、地上又は水上の人又は物件の安全及び航空機の安全を考慮して国土交通省令で定める高度以下の高度で飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

航空法施行規則第174条
法第八十一条の規定による航空機の最低安全高度は、次のとおりとする。
一 有視界飛行方式により飛行する航空機にあつては、飛行中動力装置のみが停止した場合に地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度及び次の高度のうちいずれか高いもの
イ 人又は家屋の密集している地域の上空にあつては、当該航空機を中心として水平距離六百メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から三百メートルの高度
ロ 人又は家屋のない地域及び広い水面の上空にあつては、地上又は水上の人又は物件から百五十メートル以上の距離を保つて飛行することのできる高度
ハ イ及びロに規定する地域以外の地域の上空にあつては、地表面又は水面から百五十メートル以上の高度
二 計器飛行方式により飛行する航空機にあつては、告示で定める高度

よって、特に何も無い場所であれば『150メートル』というのが基準となります。

自衛隊では?

自衛隊では自衛隊法により、航空法の適用を免除する特例が幾つか定められています。代表的なものでは民間機のライセンス無しで操縦できる(国交省ではなく防衛省発行のライセンスが有効)、民間の耐空検査が不要(防衛省独自に検査を行う)などです。

では、最低飛行高度についてはどうなのか?

自衛隊法において航空法の特例について定められた部分を見ると

自衛隊法107条
航空法中第十一条、第二十八条第一項及び第二項、第三十四条第二項、第三十八条第一項、第五十七条から第五十九条まで、第六十五条、第六十六条、第八十六条、第八十九条、第九十条、第百三十二条、第百三十二条の二並びに第百三十四条第一項及び第二項の規定は、自衛隊の使用する航空機及びその航空機に乗り組んで運航に従事する者並びに自衛隊が設置する飛行場及び航空保安施設については、適用しない。

となっています。

先ほども書いたとおり、民間機では航空法の81条で最低高度を守ることが定められています。

それが、ここに書いていないということは

『自衛隊機も航空法により最低高度を制限される』

ということです。

陸海空、各自衛隊の『航空機の運航に関する達』でも航空法施行規則と同様の内容が書いています。

特殊な飛行の場合

ここまで書かれた内容は、あくまでも有視界における一般的な飛行の場合ですが、自衛隊機となると様々な特殊な条件での飛行もあり得ます。

これらに関しては、防衛省での内部規則として条件が独自に定められているようです。
航空自衛隊の例を見ると

・曲技飛行及び試験飛行
航空機を中心として半径5海里以内の最も高い障害物から500m以上

・超音速飛行
航空機による衝撃波が地上若しくは水上に被害を及ぼさない高度

更に低く飛べるケース

航空法での最低高度に関する定めには国土交通大臣の許可を得れば特例が認められる「但し書き」が付いています。

自衛隊機が任務または訓練の為に、法律で定められた高度より更に低く飛ぶ必要がある場合には、この「但し書き」の制度を利用しているようです。

航空自衛隊の「航空機の運航に関する達」を見ると、日本国内(領土・領海)での飛行の場合には地方航空局長・空港事務所長、公海上での飛行のケースでは防衛大臣がこれを認可するとしています。

また海上自衛隊の規則を見ると

目的達成のため必要のあるときを除き次の各号に掲げる高度を保つて飛行しなければならない。

という一文が書いており、任務飛行において必要がある場合には高度を通常よりも下げてよいという特例が定められています(恐らく潜水艦に対するソナーやMADの使用を想定したと思われる特例)

また航空法の適用に付いては「平時」と「有事」で大きく異なり、以下のケースにおいては自衛隊機は航空法における最低飛行高度の制限が排除されることとなっています。

  • 防衛出動が発令された場合
  • 治安出動が発令された場合

なお災害派遣はこの制限排除に当てはまりませんが、航空法では元々捜索・救難のための飛行では最低高度を設けないと定められているため、災害で活動する自衛隊機も当然この制度を使うことが出来ます。

 

整理すると

  • 自衛隊機の最低高度は航空法の適用を受ける
  • 自衛隊機ならではの特殊な飛行は独自の制限あり
  • 航空法の制限を超える飛行は許可を受けて行っている
  • 任務のために高度を落とすことは認められている
  • 有事の際には航空法の制限を受けない

とある異世界ものの作品で「米軍も民間機もいない空を飛べて楽しいでしょう」といった台詞がありましたが、過密な日本の空を飛ぶのは自衛隊も何かと苦労が絶えないようです。



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2 コメント

  1. 幻想堂

    昭和40年代、第一航空団検査隊でF-86Fの整備員とじて勤務していました。当時ブルーインパルスの展示飛行でのハイスピードローパスでの最低高度は10mでした。今では考えられないですね。
    余談ですが、ランナップは当然な事タクシーも整備に必要な時は整備員が行ってたんですよ。

    • HARUKAZE

      幻想堂様
      貴重なお話をありがとうございます。
      86時代のお話は本などでしか知らない世代ですが、今から見ると考えられないようなことも多く、驚くばかりです。

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