自衛隊に導入が決まっているV-22オスプレイ。

現在の配備先は陸上自衛隊となっていますが、実は陸自よりもオスプレイを欲しいのは「海自」じゃないかというお話です。

過去にもあった
幻の海オスプレイ計画

実は日本で一番最初にオスプレイに関心を持ったのは、他ならぬ海上自衛隊です。

遡る事、約四半世紀。
1990年代の中期防衛力整備計画において、海上自衛隊のUS-1飛行艇に代わる救難捜索機としてオスプレイの導入が検討されていました。
(オスプレイの開発は81年の提案要求から始まり、89年に初飛行)

しかし試験5号機・2号機が相次いで開発段階に事故を起こし、オスプレイの開発計画自体が大幅に遅延したため、海上自衛隊も計画そのものを断念せざるを得なかったようです。

海自はオスプレイを
何のために使う?

母港を離れて任務に就く艦隊は、当然十分な物資を艦内に積んで出港していますが、戦闘艦の場合はどうしてもスペースに限りがありますし、生鮮品などの保存にも限度があります。

その為、補給艦から必要に応じて物資の補給を受けますが、更にそれでも足りない分は陸上基地からの航空輸送で対応する必要があります。
また逆に艦内の設備では対応できない急病人等を、艦隊から陸上に送り返す任務もあり得ます。

この任務を担う機体を艦上輸送機・COD=Carrier Onboard Deliveryと呼び、アメリカ海軍の空母打撃群ではC-2グレイハウンド輸送機が、海上自衛隊では救難隊のUH-60Jヘリコプターがこの任務を担当しています。

UH-60Jはヘリコプターの中でも優れた航続距離を持ち、1000kmを超えます。

その為、日本近海はほぼカバーすることが可能です。

しかし先日、潜水艦「くろしお」が南シナ海で訓練していたことを公表するなど、海上自衛隊の作戦行動範囲は今後、台湾とフィリピンに挟まれたバシー海峡を越えて拡大していくことが確実です。

沖縄本島からバシー海峡までは、おおよそ1000km。

更に南沙諸島周辺となると沖縄から2000km、石垣島からでも1500km

既存のあらゆる回転翼機をもってしても到達不可能な距離です。

しかし艦隊の運用に置いては、陸地と即応性の高い手段で結ばれた「補給線」たる輸送機の存在は重要なものとなります。

かと言って、固定翼のグレイハウンドのような輸送機を運用するにはカタパルトを設けた正規空母でなくてはなりません。

回転翼では届かない、固定翼は運用できない。

と、なると必然的にSTOVL性能を備えた機体しか選択肢が無く、現状その条件に合うのはオスプレイしかありません。

オスプレイは約4.5トンの貨物・人員を積んで1700km以上を飛行することが可能です。

またアメリカ海軍もC-2グレイハウンドの後継機は固定翼機ではなく、海軍用のオスプレイCMV-22Bを導入する事が決まっており

「オスプレイを艦上輸送機に」

というのは何ら不思議な話ではないのです。

オスプレイを何処まで本気で考えているかというのは未知数ですが、少なくとも海上自衛隊の作戦行動範囲が広がる以上、「補給」をどうするかというのは積極的に検討しなければならない課題でしょう。

※参考資料

  • 徹底検証!V-22オスプレイ(著:青木謙知)
  • 世界の名機シリーズUH-60ブラックホーク(イカロス出版)