防衛省・自衛隊においては「防衛省規格(NSD)」が定められており、JIS規格などと同様に自衛隊で使用する車両・武器などの厳密な規格が存在します。

その防衛省規格の中に「用語」を定めたものがあります。

簡単にいうと「自衛隊で使う言葉の辞書」です。

今回は、この防衛省企画の用語集を参考に、用語やルールを統一する重要性について解説していきます。

実際の用語集はどんな感じか

例えば現代の歩兵の一般的な装備であるアサルトライフル=突撃銃を防衛省規格から調べてみましょう。

火器用語(小火器)Y0002Bから探すと

突撃銃
小銃の一種で、突撃射撃に適している銃。全自動と半自動の機能及び多数弾を給弾出来る弾倉を有する。

とあります。

では小銃とはと調べると、個人携行の肩撃ち銃とあります。
では肩撃ち銃とは?そもそも銃とは?
これらを同様に防衛省規格から探していき、更に細かい用語に分解していくと

突撃銃
個人携行の肩撃ち銃(両手と肩で保持して射撃する、火薬類の燃焼ガスの圧力によって、飛しょう体を射出する小型の装置)の一種。
突撃射撃(突撃に際して、通常腰だめまたは立姿で行う射撃)に適している。
弾薬を発射するための装填(弾薬を薬室に入れること)、閉鎖(薬室を閉じること)、撃発(衝撃などのエネルギーによって火薬を発火させること)、開放(閉鎖機構を解き、薬室を開くこと)、抽筒(薬室から薬莢、弾薬などを引き抜くこと)などの各操作を自動で行う方式の一種である全自動(自動式の一種で、初弾発射後、引き金を引く操作を停止するまで発射が持続する方式)と半自動(初弾発射後、自動的に次弾装填まで行うが、撃発機構は準備状態となるため、1発発射ごとに引き金を引く操作を行う方式)の機能及び多数弾を給弾(小火器に弾薬を供給する)出来る弾倉(多数の弾薬を収納できる装置)を有する。

(ノTДT)ノ ┫:・’.::・┻┻:・’.::・

とてもじゃないが読んでいられませんよね。
ただこれでもまだ短いほうで、長くしようと思えばさらに長く出来ます。

しかし「突撃銃」という言葉一つを取ってみても、実はこれだけの意味を有する言葉なのです。

それを「突撃銃」という言葉に省略出来るのは「突撃銃とは、こういうものである」という双方の共通認識があるからなのです。

道路の信号の意味が
人によって違ったら?

さて、小難しい文章になってしまったので、もう少し身近なもので。

皆さんは信号が青信号だったら当然、進みますよね?

それは何故かと考えたとき

「信号が青なら進んでよい。青の時は相手の信号は赤。赤なら止まる」

という「信号の青は進む、赤は止まる」というのが道路を通行する上での最低限のルールとしてお互いに認識されているからでしょう。

では、もしも「信号の青と赤が人によって解釈の違う世界」だったら?

交差点で事故を起こさないようにしようと思ったら、信号が青でも赤でも一度止まるしかありません。
その上で交差する車がいたら、相手は進みたいのか止まりたいのか見極めて、ゆっくりとお互いに進むしかないでしょう。当然、道路は大渋滞です。
もしかしたら後ろの車が突っ込んでくるかもしれません。そこら中で事故が相次ぎ、立ち往生が更に混乱を・・・

突拍子も無い想定ではありますが「お互いに同じ認識」が崩れた時というのは、こういう状態になるのです。

用語・ルールの統一

軍隊というのは、非常にシビアな判断が求められる世界です。
1発の銃弾が政治問題に発展するかもしれない、一瞬の躊躇が自分達の命を奪うかもしれない。

故に戦いの9原則の中にも「簡明の原則」というのがあり、出来る限り指示・命令は簡潔明瞭・分かりやすくするのが望ましいとされています。

しかし簡潔明瞭な指示を出すには先ほどの用語集のように、長い言葉を短く言い換える必要があったり、また中身を正確に伝えるには双方が共通の認識を確かにしていることが欠かせません。

このような軍隊における、用語・ルールの統一は、軍隊意外でも役に立つ場面は少なくないと思います。

例えば建設の現場では重機の操作をする際にはハンドサインが決められており、双方が確実に意思疎通を取れるようにしています。
これも「用語・ルールの統一」の1つと言えるでしょう。

逆にこれらが統一されていない状態というのは、先ほどの信号機の事例のように、円滑な流れが妨げられてしまったり、事故・トラブルが起きやすい状態を容易に招いてしまうのです。

筆者の実体験

先ほどのダメな例として、筆者が新卒で入った会社のお話を(退職済み)

筆者が入った会社は入社前後にちょうどグループ内でAとBという二社が統合・合併をした会社でした。筆者が入ったのは元A社に属する部署。

合併・統合直後の混乱は当然のことかもしれませんが、その後数年間に亘り、お互いが全く歩み寄らずにそれぞれの会社で使ってた「常識」を押し通すという社内分裂状態。

当然、仕事にも多大な支障が出ていました。
相手がどういう意味で、その言葉を使ってるのか、いちいち確認を取らないといけない。書類1枚とっても使ってる書式が違うから2種類の書式をわざわざ用意しないといけない。
このような状態に対して経営陣は「人事シャッフル」で対応しようとしました。
強引に混ぜてしまえば、うまく混ざり合って回るだろうと考えたようです。
・・・が、どうなったかは容易く想像出来るかと思います。
余計に混乱する羽目になり、退職者も増えました。

間違いなく会社の上層部がやるべきことは「共通のルールを作り、それを運用すること」だったでしょう。
にも関わらず社内ダブルスタンダード状態を放置し、挙げ句にそのツケを末端に押し付けた上層部は「用語・ルールの統一」の重要性を理解していなかったのだろうなと、今も時々そんな会社で働いてたことを悔やみながら思い出します。