1年に1度、富士の麓で貴重な実弾射撃を披露してくれる富士総合火力演習。

そんな総火演を、100倍とまでは言わないですが、より一層楽しむ方法として

「放送で流れている射撃の号令は、どんなことを言ってるの?」

というのをまとめてみました。

陸上自衛隊チャンネルのyoutube映像の時間に合わせて解説していきます。

特科・榴弾砲編に続いて、迫撃砲編です。

 

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1、迫撃砲の射撃準備(映像22:00くらいから)

81mm迫撃砲  射撃命令
点目標射撃  目標・機関銃陣地
効力射法・小隊
観測者・FO1

装薬・3 瞬発・3発
命令終り

まずは小型の81mm迫撃砲の射撃命令から解説していきます。

81mm迫撃砲 射撃命令

81mm迫撃砲(命令を与える対象を指定する呼び出し符号)に対する射撃命令

点目標射撃 目標・機関銃陣地

点目標、即ち狭い範囲に対する射撃を行う旨の伝達です。

(防衛省用語だと点目標=特に高い精度を有する攻撃対象といった意味)

これが敵の陣地を広い範囲で制圧するとなったら「面制圧射撃」になります。
また目標・機関銃陣地は、そのままの意味で、自分達が射撃する対象が機関銃の陣地である旨を伝えています。

効力射法・小隊

効力射、すなわち本番の射撃をどの方法で行うのか。
この場合、効力射は小隊単位で行うという命令になっています。
中隊であれば「効力射法・中隊」です。

観測者・FO1

迫撃砲は地平線の向こうへ打ち込むことになりますので、前進観測班=FOが必ず着弾点付近にいます。
観測者・FO1ということは、この命令の射撃は「FO1」という前進観測班が、弾着の観測をするということです。

装薬・3 瞬発・3発

まず装薬ですが、迫撃砲弾にセットする発射量の火薬量を指定するものです。
(砲弾の尾部に火薬をまきつけるような形でセットします)

装薬3ということは、砲弾に発射量火薬を3つセットしろということ。

また瞬発は弾頭信管種別です。

瞬発信管は砲弾が地面に接触するとすぐに衝撃で起爆するタイプ。
他に遅延信管(衝撃が加わってから一定時間経って起爆)、時限信管(砲弾が打ち出されてから一定時間経過後に時限式で起爆)などがあります。

今回は装薬の情報も合わせて

発射薬を3つ、瞬発信管を取り付けた砲弾を3発用意せよ

という意味になります。

続けて120mm迫撃砲の射撃命令です。

120mm迫撃砲 射撃命令
点目標射撃 目標・機関銃陣地
効力射法・小隊
観測者・FO2
装薬・3 集中 VT・3発
命令終り

観測者FO2までは符号が変わっただけで81mm迫撃砲と同じなので割愛して、最後のところだけ解説します。

装薬・3 集中 VT・3発

装薬については81mmと同様、発射火薬の量

集中、は恐らく集中射撃(全部の砲が同じ目標へ集中的に射撃を行う)ということの事前通達。
ただ、この「集中」は後の射撃号令では省略されているので、射撃指揮所から参考情報として伝達されたものだと思われます。

で、最後のVTはVT信管、すなわち近接信管のことです。
弾頭から電波を出して、地面が一定距離内に入ると自動で起爆するタイプの信管になります。

なので

発射薬を3つ取り付けた弾薬で集中射撃を行う。
VT信管を取り付けた砲弾を3発用意せよ

という意味です。

2、迫撃砲の射撃(映像23:15くらいから)

先の射撃命令に続いて、実際の射撃を行う詳細な情報が送られてきます。

81mm迫撃砲 小隊 特別修正
榴弾瞬発 装薬3
方位角 第1・5443 第2・5454 第3・5465
3発 射角1070
指命 15秒 全弾斉射 装填待て

まず81mm迫撃砲から解説していきます。

 

81mm迫撃砲 小隊 特別修正

81mm迫撃砲(呼び出し)、小隊(小隊で射撃を行う)

特別修正の部分は本来、「効力射」や「修正射」など、これから行う射撃が何であるかを指定する部分です。
特別修正射撃というのは聞かないので、恐らく総火演用のプログラム用に用意されたものだと思われます。

榴弾瞬発 装薬3

弾種は榴弾で、信管は瞬発信管、発射薬は3個セットで発射せよという号令です。
(榴弾=炸裂時に破片を撒き散らすタイプの砲弾)

方位角第1・5443 第2・5454 第3・5465

各迫撃砲に対して左右の方向をミルで指示しています。

点目標に対して、全ての迫撃砲で集中射撃を行うため、各砲に対し微妙に異なる値が指定されています。

3発 射角1070

3発は発射弾数で、全部で3発の射撃を行うということ

射角1070は迫撃砲の上下角度の指定です(これもミル単位)

1070ミルだと、およそ60度になります。

迫撃砲は発射の衝撃を「地面」に分散する構造なので、かなり大きい角度を付けないと発射することが出来ません。

指命 15秒 全弾斉射 装填待て

指命は迫撃砲に限らず、射撃用意を完了させよという時に使います。この号令が下ったら、いつでも射撃を開始する用意を済ませておかなければいけません。

「15秒」は15秒間隔で発射せよ、全弾斉射は、全ての弾を斉射=全ての砲で同時に撃つ方法を指定しています。

なので「指名15秒全弾斉射」の流れで、号令が下ったらいつでも15秒間隔で一斉射撃出来る準備を完了させよという意味になります。

最後の装填待ては、発射のタイミングはこちらで指示するので、砲弾を迫撃砲へ装填せずに待機せよという指示です。
(迫撃砲は尾部着発式も選択出来るので、砲弾を入れるとそのまま発射される恐れがあります)

続いて120mm迫撃砲です。

120mm迫撃砲 小隊 特別修正
榴弾VT 中モード30.32
方位角第1 5409 第2 5417 第3 5425
3発 射角1030
指命15秒 全弾斉射 装填待て

先ほどと違うのは2行目だけですね。

榴弾VT 中モード30.32

榴弾は弾種、VTは近接信管のこと。

で、この後の中モード30.32は確証は無いですが、VT信管の設定に関することだと思われます。
恐らく「中モード」という設定で、30.32(映像の炸裂高度から推定して恐らくフィート)の高さで起爆するように信管を準備せよという内容かと。

ちなみに120mmでは装薬に関する指示が抜けていますが、先の射撃命令で伝達したから省いたのか、この辺はいまいちよく分かりません。

そもそも81mm迫撃砲と120mm迫撃砲は普通科連隊の中でも所属が異なってまして、81mm迫撃砲が普通科中隊の迫撃砲小隊という編成なのに対して、120mm迫撃砲は連隊隷下の重迫撃砲中隊です。

なので、号令もお互いに少し違うのかもしれません。

3、射撃開始(映像24:20くらいから)

半装填!の号令で、各迫撃砲は砲弾を砲口の先端に構えます。
(この時点では、まだ射撃しません)

TOT40秒前!は着弾予想時刻の40秒前に達したという事。

ここから既にカウントダウンが開始されていて、各砲は着弾時刻に合わせて正確な射撃タイミングを要求されます。

ここから約10秒後に初弾を発射、その後

初弾発射 経過表示30秒!

という号令が掛かっていますが、これは経過表示=カウントダウンの中で初弾を30秒のタイミングで発射したという伝達です。

映像を見てると、ここから約30秒後に初弾が弾着するのが分かるかと思います。

全弾が弾着すると、陣地変換!の号令で一斉に移動を開始します。
迫撃砲を撃ったという事は、敵に位置を知らせたのと同じことなので、ただちに移動しないと敵の砲撃に晒される恐れがあるのです。

榴弾砲に比べて指示が細かいように思いますが、実際は榴弾砲もこれと全く同じようなことをやっているはずです。
あくまでも「展示」なので大幅に省略しているだけです。

痛飛行機弐