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THAADとイージスアショアの違いをおさらい

5月13日各紙で、自衛隊に新たな弾道ミサイル防衛システムとして陸上設置型イージスシステム、通称「イージスアショア」を導入する方向性で固まりつつあるとの報道がありました。

高まる弾道ミサイルの脅威を受けて、現在の2段構えの防衛を3段体制にすることで、更に迎撃精度を上げるためと見られます。

以前より、新たなミサイル防衛として、イージスアショア、またはTHAADの導入が議論されて来ましたが、イージスアショアはTHAADと何が違うのか、どのようなメリット・デメリットがあるのか、おさらいを兼ねて解説していきます。

弾道ミサイル防衛は3段階

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まず、弾道ミサイル防衛には3段階の迎撃形態があります。

ロケットエンジンを燃焼させて上昇中のブーストフェイズを狙うタイプ、燃焼を終えて慣性飛行に入った後のミッドコースフェイズを狙うタイプ、そして落下時のターミナルフェイズを狙うタイプです。
ブーストフェイズの迎撃システムは事実上、存在しないに等しいので、今回は説明を省きます。

現在の日本が所有している装備では、イージス護衛艦がミッドコースの迎撃を、ペトリオットPAC-3がターミナルを狙います。

パトリオットじゃないの?とツッコまれそうですが、実は自衛隊の装備品としての正式名称は「ペトリオット」です。
なので、こちらの表記を優先します。

ミッドコースを狙うには高い高度まで迎撃弾を持っていかなければならないので、迎撃弾本体にも高性能が求められるのに加えて高い誘導性能と正確な弾道計算が必要です。SM-3も小型の3段固体燃料ロケットに相当する規模になります。

反面、加速を終えて「慣性飛行」している状態であり、また迎撃弾も目標に対してヘッドオンヘッドの正対するコースではなく、ある程度の交差角を持った軌道を取るため相対速度も低くなり、ミサイルの誘導性能が同じであれば命中する確立は上がります。
ミサイルの軌道に迎撃弾を撃ち込めればいいので、1個のシステムが対応出来る範囲が広いのも特徴です。
イージスアショアシステムは陸上にイージス護衛艦と同様の設備を設置して、この迎撃を陸上から行うタイプになります。

日本海にイージス艦2隻で日本をカバー出来るというのは以前から言われているので、イージスアショアも2箇所でほぼ全土をカバー出来ると推測されます。

護衛艦きりしまのVLS。この中にミサイルが収められる。

対してPAC-3が担当するターミナルフェイズを狙う方法は、交戦高度が低くなりミサイル自体は小型化出来る反面、重力加速度で音速の何倍にも達した弾道ミサイルを、ほぼ真正面から迎撃する事になります。
その為、命中確立は必然的に低くなり、また1個のシステムでは局地防衛を担うのが精一杯です。

THAADシステムは正式名称「終末高高度ミサイル防衛システム」と言われ、ターミナルフェイズでも従来のPAC-3より高高度での迎撃を可能にしたシステムです。
高高度で迎撃出来ると言うことは、落下速度がまだ低い(ミッドコースに比べれば断然速いですが)段階での迎撃が可能なので命中精度が向上して、1個のシステムでの対応範囲もPAC-3に比べて広くなるのが利点です。
(高高度まで上昇される為にミサイル本体は大型化しますし、より高性能のレーダーが必要になるのでシステム全体が大型化しますが)
また仮に迎撃弾を直撃させても破片などがそのまま落下する可能性がありますが、高高度で撃ち落せれば被害も軽減することが期待できます。

イージスアショアとTHAADの利点・欠点

まずイージスアショアですが、大きなメリットは護衛艦のイージスシステムとノウハウや弾薬を共通化出来るという点になります。
新しいシステムを一から構築するというのは、運用のみならず整備・補給etc…など凄まじい手間です。
ただでさえ自衛隊の兵站能力は心配な部分も多いので、新たな装備を増やさずに済むなら、それに越したことはないでしょう。
この点、ノウハウを一部でも共有できるというのは大きなメリットと言えます。

また日本に配備されるイージスアショアではRIM-174スタンダードERAM・SM-6の運用も期待されています。
SM-6は艦対空ミサイルとして対航空機・対巡航ミサイルに限らず、限定的ながらPAC-3同様の対弾道ミサイル・ターミナルフェイズ迎撃の機能を担うことが出来ます。
但し当初用途が「艦隊防空」であるため、弾道ミサイル迎撃に関してはあまり広範囲の迎撃を担うことは出来ないというのは考慮すべきところかと思います。
(SM-6に関して2017年11月に加筆)

反面、欠点はレーダーサイトなどと同様、地上施設として構築される「据置型」になってしまうので、敵の攻撃を受けやすいというところかと思います。
(ある程度、解体・組立が可能という話も噂レベルで聞いたことはありますが)
また、仮にSM-3ミサイルで対応不可能な弾道で撃ちこまれた場合には、3重防御のうち2つが同時に破られて、いきなりPAC-3任せになることになってしまうのも厄介です。

対してTHAADシステムはトレーラーなどによりシステム自体を移動しての運用が可能で必要に応じて射点をカモフラージュ出来ます。
加えてイージス+THAAD+PAC-3と違うシステムを3種類用意することで、より柔軟な対応が出来ることも大きいでしょう。
しかし自衛隊では前例の無い装備です。
米軍の協力を仰いだとしても、作戦能力獲得までに時間を要するかと思います。

陸海空、何処が担当する?

イージスアショア導入の一報を聞いて、自分がまず考えたのは「管轄、どこになるんだろう?」という点です。

イージスシステムの運用に関するノウハウは当然、海上自衛隊が持っていますが、海上自衛隊は既にMD任務対応の為に相当な予算と人員を負担していると言われており、今後「あたご型」のMD能力付与が完了すれば、更に負担は増えるでしょう。
そうなると「陸に設置した分までこっちでやってられない」という声が出ても何ら不思議ではありません。

レーダーサイトや高射の運用ノウハウは航空自衛隊にもあるので、そちらが受け持つ可能性もありそうですし、また今のところミサイル防衛に直接関わっていない陸上自衛隊に話が回るのでは・・・?というのも無くは無い話です。

何にせよ、続報の気になるところではあります。

 

此方の記事も併せてオススメ

ミサイル防衛の法的位置付け、迎撃手順などの解説



痛飛行機弐


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3 コメント

  1. HARUKAZE

    此方に頂きましたコメントの1つにつきまして、メールアドレスが明らかに存在しないものであったため、コメントの公開許可を差し控えさせていただきました。
    サイトの安全な運営の為に、ご理解願います。

  2. 松山天声

    ターミナルフェーズを勘違いしてませんか。

  3. ヘッドオンの状態が一番命中率が高い。特にpac3の低高度では如実に。そもそも角度、速度差が大きくなる射程距離ギリギリの距離では命中率が期待出来る条件でシーカーの視界に捉えるのは不可能。sm3でも同様、届く距離でも命中が期待出来るかは別で、日本には2基で間に合うとは言っても発射基は500㎞に1基はないと現実的ではない。pac3なんかはほんとに市町村ごとに一基必要なレベル。

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