今日の朝には「ミサイルが50発飛んでくる」など、根も葉もない噂話が一人歩きしたりと、緊張が高まるにつれ噂話やデマとも言えるようなものが広がる今日この頃。

昨晩、私が見たtwitterの情報では
・移動式発射台の事前察知は困難
・高高度軌道の迎撃は困難
・日本全域が射程内
これらが報道されたのを見て、日本国政府が遂に認めたというような内容でした。
しかし、これらの情報、実際は以前から防衛省の正式な見解として公表されているものです。
まるで、政府が今まで隠していた情報をいよいよ出さざるを得なくなったと言わんばかりの言葉で、危機感を無駄に煽るようなものがあるのは、如何なものかと思います。
(この手の輩は反応されると余計に喜ぶので、あえてツイート引用はしませぬ)

確かに国防に関する情報は、なかなか公開されないものも多く、どうしても一般人に分かりにくいものが多いのは、やむを得ません。

しかし一方で、公開しても問題の無い情報は、わざわざ情報開示請求などをしなくても、極々普通に手に入れることが出来るのです。

その中でも、非常に情報量の多いものが「防衛白書」です。
これは官公庁の発行する白書の防衛省版で、防衛省がどのような仕事を行っているかなど、かなりの情報量が記載されています。

平成28年度版防衛白書

願わくは、全てのページに一度は目を通してみて欲しいところではありますが、なにぶんデータ量が膨大です。今回は、その防衛白書の中から北朝鮮のミサイル情勢に関して、特に関心の高いであろう部分を抜粋してご紹介します。

防衛白書からみる北朝鮮の
弾道ミサイルに関する情勢

核弾頭の開発は完了しているのか?

北朝鮮のミサイル情勢で最も注視すべき部分は「核兵器の小型化によるミサイル弾頭への搭載」だと思われます。
同じミサイルでも、核兵器を搭載可能か否かで、その威嚇効果は桁違いに変化するためです。一方、小型の核弾頭開発には、非常に高度な核開発技術を必要とすることは言うまでもありません。

現状、防衛白書における公式な見解は「核兵器の小型化・弾頭化には高い技術力が必要とされるが、既に開発に成功している可能性もある」という段階です。

また、現在は開発段階としても、北朝鮮がミサイル・核開発に力を注いでいけば、いずれ完成する可能性があるとも。

日本はミサイルの射程内に入っているのか?

これは断言します。日本のほぼ全域が射程内に入っています。

1990年代より開発されているノドン弾道ミサイルの有効射程は、日本列島のほぼ全てに至ると思われるという記述と、ムスダン弾道ミサイルでは日本列島全てが射程内に入るという記述が、防衛白書に明記されています。

またムスダンについては、ロフテッド軌道=高高度軌道に関する実験が行われているとの報告もあります。

ミサイルの迎撃に関して

ノドン・ムスダンなどのトレーラー式発射台を用いたミサイルについては、北朝鮮の軍事情報が極めて閉鎖的であるということにも関連して、その発射の事前兆候を掴む事は難しいという旨が明記されています。

14(同26)年以降の弾道ミサイル発射事案では、過去に例の無い地点から、早朝・深夜に、TELを用いて複数の弾道ミサイルを発射するなど、北朝鮮が任意の地点・タイミングで弾道ミサイルを発射できることが示された。このような奇襲攻撃能力を含む弾道ミサイル部隊の運用能力の向上は、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威がさらに高まっていることを示している。
(防衛白書 北朝鮮の項より抜粋)

弾道ミサイルは砲撃などと同様に、自らの射出座標を正確に計算できなければ、目標の着弾誤差を縮めることが出来ません。
つまり、任意の場所から狙った場所に撃てるというのは、それだけの運用ノウハウを蓄積しているということであり、これは大きな脅威であると言えます。

またロフテッド軌道についても「一般的に迎撃は困難になる」という記述が存在します。
但しこれは自衛隊云々の話ではなく、高いところを飛んで高速で突入してくる飛翔体は、当然迎撃の難易度が上がるという、一般論です。

 

ミサイルが、いつ飛んできてもおかしくない、隣で戦争が始まるかもしれない。
確かに、これは恐怖です。しかし、正しい判断には正しい情報が必要だと筆者は考えます。

政府の公表は「当たり障りの無い情報」という性格もありますので、それだけが全てとは言いませんが、少なくとも公的な情報との照らし合わせなどを行えば、悪質なデマに惑わされる可能性も減るのではないでしょうか。