半世紀愛される名機
CH-47 チヌーク

ステルスや衛星・自動制御など最先端技術が惜しげもなく投入される一方で、何年立っても変わらないものも多いのがミリタリーの世界。
それは何よりも「信頼性」「安定性」を要求されるからです。
どれだけ高性能な機械でも、いざという時に「動かない」「使えない」ことは、隊員にとって命に直結する問題となります。

そんな「変わらない」部分の代表格とも言えるのが大型輸送ヘリコプター
CH-47 通称「チヌーク(chinook)」

今回は、そんな長きに亘って各国の隊員を支えるチヌークのお話です。

チヌークとは

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正式名称「CH-47」。バートル社の開発した大型輸送ヘリです。
初期モデルのA型から、何度もアビオニクスやエンジンなどの改良を加えられて、現在の最新モデルはF型となっています。

初飛行は1961年。アメリカでケネディ大統領が就役した年になります。

その後ベトナム戦争、フォークランド紛争、湾岸戦争etc…世界史に名を残す戦場には常にツインローターのチヌークが飛び続けていました。

数々の戦場で多くの人員・物資を運び続けたチヌークは、大型輸送ヘリとして確固たる地位を築き上げ現在に至ります。

チヌークのここが凄い

特筆すべきは、何といっても圧倒的な積載量です。

D型やF型の機内搭載可能量は10t超。
10tトラックと変わらないだけの荷物を積んで、空を飛べると考えれば如何に凄まじい積載量か想像出来ますでしょうか。
(実際にはフル積載すると、天候の急変などがあった際に揚力の余裕が無いので8t前後のペイロードで運用する機会が多いようです)
キャビンの容積は長さ9m、幅が約2.3m、高さも2mあるので、車などが2台楽々詰め込めるだけのサイズになっています。

それでも機内に入らない貨物については、機外に吊り下げる形で運搬する事も可能です。
(機内に積むと荷降ろしで着陸しなければならないので、着陸できない場所への輸送や、速やかに離脱する場合などに、あえて吊り下げることもあります)

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写真は120mm迫撃砲(約600kg)と高機動車ベースの重迫牽引車(約2600kg)、合計で3t以上の機材を吊り下げて運んでいるところです。
UH-1やUH-60ならとても運べない量ですが、チヌークの10t超のペイロードを持ってすれば朝飯前の仕事です。

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自衛隊の車両だと軽装甲機動車(4500kg)も余裕で運べます

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空中消火では約7tの水をバケットに入れて運べます。

輸送ヘリコプターとしてのチヌークがあまりに圧倒的な地位を手に入れているため、ヘリ輸送を前提とする兵器は

「チヌークのキャビンに積めるor吊り下げ可能」

これが設計の基本条件となると言われるほどです。

筆者は本業が機械屋なので、仕事の資機材が「ハイエースに入るか入らないか」が重要だったりするのですが、それと似ているなぁと。

しかし、ただ沢山積めるだけがチヌークの凄さではありません。

前後タンデムローターは前のローターが反時計回り、後のローターは時計回りでお互いのトルクを打ち消しあうため、一般的なシングルローター機と違いテイルローターを用いたトルク相殺と必要としません。
シングルローター機はテイルローターの駆動に全推力の1割程度を使うといわれているので、タンデムにすることでエンジン出力を効率よく使うことが出来ます。

ただ操縦が安定しやすいかというと、そうでもないらしく、タンデムローター故の特性やらで自動制御による操縦アシストを受けないと、パイロットの技量だけで安定した飛行を行うのは至難の業だとか(特に低速時)

しかし、ローターが前後に2つ存在することで重心位置の移動なども自由度が増しますので、見掛けによらず高い機動能力を持つというメリットもあります。

どれくらい凄いのか、実際に見て頂いた方が分かりやすいと思います。

地面の水平ラインが写っているものでチョイスしてみましたが、特に前後の傾きが非常に大きく取れているのが分かるかと思います。

この高い機動能力により、作戦運用においても、様々なシチュエーションに対応可能です。

またヘリコプターとしては、航続距離もかなり長い部類に入ります。

航続距離延長改修が施されたJA型などでは、燃料満載で1000km。
作戦行動半径(往復+作戦行動時間+予備燃料)を航続距離の1/3として、300~350kmと計算しても、東京駅から北は仙台、西は名古屋まですっぽり入る距離です。

自衛隊のチヌーク

自衛隊では長らくKV-107「バートル」を大型輸送ヘリとして運用してきましたが、その後継機として1980年代後半よりチヌークの運用が開始されました。
バートルは海上自衛隊でも使われていましたが、海上自衛隊ではバートルの担ってた任務をシードラゴンに継いだので、チヌークは陸・空だけの導入です。

最初に導入されたのは米国のD型に相当する「J型」。
その後、改良型(航続距離延長やレーダー・航法支援装置などが強化)である「JA型」に切り替えられています。
航空自衛隊ではJA型に相当する機体をJ(LR)型として導入していますが、細部の違いはあるにせよ、機体そのものは同じと考えて差し支えないです。

陸上自衛隊向け(左)と航空自衛隊向け(右)では、見ての通り航空自衛隊向けの方が若干明るい迷彩塗装になっています。
空自機の迷彩模様については、最近では見られなくなりましたが、空自・地上戦闘職種の使用する野戦迷彩服(陸自Ⅰ型迷彩の空自アレンジ)に近い雰囲気ですね。

また空自ではチヌークを航空救難団に所属させているため、救助用ホイストなどの装備も取り付けてあるそうです。
(実際チヌークが真上に来たら、ダウンウオッシュがとんでも無さそうですが…)

各方面隊にも配備されているため、駐屯地祭などで見る機会は非常に多いです。
また立川駐屯地などでは、先着順ではありますが体験搭乗も行っています。

また災害時の物資・人員輸送にはチヌークの輸送能力は欠かせないと言っても過言ではなく、ニュースなどでその姿を見る機会も多いでしょう。

チヌークの今後

チヌークを置き換えられる輸送ヘリは、当面登場しないだろうと言われています。
(当然、機体自体の寿命には限界があるので引退した機体は新造で入れ替えているわけですが)
エンジンや電子装備の技術進化で、エンジン換装・電子装備増強(最新のF型はグラスコクピットの導入も行われているみたいです)などは順次行われています。
しかし、マイナーチェンジが何度も重ねられるということは、それだけベースの設計が非常に優秀であるということ。
また「大型輸送ヘリ=チヌーク」として確固たる地位を築き、特に陸軍は大型ヘリによる部隊運用ノウハウがチヌーク基準で構成されている以上、これを新型へ更新するというのは余程のメリットが無いと考えにくいです。

筆者の想像では「チヌーク初期型飛行から祝100年!」なんてニュースが2061年あたりに冗談抜きであり得るんじゃないかなぁと…
その頃には米国側のモデル番号が「I」を通り越して「J型で日本のと被るじゃん!!」という話になっているかも。

何にせよ、消えていく機種も多い中で確固たる地位を築き、半世紀に亘り愛されるというのは、やはりそれだけ優秀である証拠。

今後もチヌークは世界中の空で活躍することでしょう。

最後に1枚

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ドアガンとしてブローニングM2重機関銃を付けたチヌーク。
チヌークも半世紀使われていますが、M2も初採用から80年ほとんど当時の形で使われ続けています。

軍隊というのが最先端技術の塊である反面、「枯れた技術」を好む世界であるというのを象徴する写真ですね。