【雑学】新人パイロットが最初から乗れる機種と乗れない機種

【雑学】新人パイロットが最初から乗れる機種と乗れない機種

航空自衛隊のパイロットは、単発プロペラ機のT-7で初等教育を行い、その後戦闘機パイロットはT-4、輸送機パイロットはT-400、更にそこから実際の機体での操縦課程を学び…と経験を積み重ねることで、実際の部隊配属まで厳しい教育を受けていきます。

本人の希望や適性に合わせて様々な機種のパイロットとなりますが、実はどの機体でも最初から配属されるというわけではありません。

今回は航空自衛隊のパイロットが最初から乗れる機種とそうでない機種を解説していきます。


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新人パイロットが受けるのは「操縦課程」

航空自衛隊で特定の機種のパイロットになる場合、その教育には「操縦課程」と「機種転換操縦課程」の二種類が存在します。

前者は基礎教育課程を終了した訓練生を対象としたもので、後者は既に何らかの機種で任務に就いているパイロットが別の機種の操縦資格を取得するためのもの。

新人パイロットが受けるのは当然前者の「操縦課程」です。

この操縦課程、全ての機種に用意されているわけではなく

  • 戦闘機操縦(F-15)課程
  • 戦闘機操縦(F-2)課程
  • 輸送機操縦(C-1)課程
  • 輸送機操縦(C-2)課程
  • 輸送機操縦(C-130)課程
  • 救難操縦(U-125A)課程
  • 救難操縦(UH-60J)課程

以上7つが存在しています。
(正確には輸送機操縦(YS-11)課程も存在するが、これは飛行時間1000時間超が要件となっている)

逆を言うと、T-4練習機またはT-400練習機での訓練を終えた後に受けることが出来る課程はこの7つだけなので、必然的に新人パイロットが最初に乗ることが出来るのはこの7機種のいずれかということになります。

なお間もなく退役を迎える戦闘機ファントム(F-4EJ改)も操縦課程が用意されていませんが、戦闘機操縦課程のうちF-2課程を終えたパイロットの一部がF-4EJ機種転換課程にそのまま進みファントムライダーとなる教育形態が取られているようです。

機種転換課程は条件付き

では、これら操縦課程が無い機体のパイロットになる為には、どうすれば良いのか。

先ほども書いた通り「機種転換操縦課程」を受けることになりますが、この機種転換操縦課程、誰でも受けれるというわけではなく、一定の条件が課されています。

例えば空中給油機KC-767を例に取ると、機種転換操縦課程を受けるための条件として

操縦士等のうち、総飛行時間が1000時間以上の者

という条件が課されています。

戦闘機・輸送機など、機種は問わないものの、航空自衛隊のパイロットとして1000時間以上のフライト経験が無いと、機種転換の訓練そのものを受けられないということです。

また一部の機種は機種転換課程ではなく『機種転換課程講習』という形で、機種転換課程に準ずる形で行われています。

何故、操縦課程が無い?

パイロットの訓練には膨大なフライト時間を訓練費やす必要があります。
例えばF-15やF-2の戦闘機操縦課程を例に取ると訓練時間は100時間、輸送機操縦課程の場合にはC-1及びC-130で70時間となります(輸送機の方が少ないのは恐らく最初は副操縦士となるのに対し、戦闘機は単独で任務にあたるため)

一方で機種転換課程の場合にはKC-767課程で24時間、F-4EJ課程で20時間または30時間と操縦課程のそれに対して訓練時間は圧倒的に少なくなります。

配備されている機体数が少ない場合には操縦課程の訓練時間を確保するだけの余裕が無いので、他機種で十分な経験を積んだパイロットへ機種転換に限った教育を施すしかない、ということなのでしょう。

 

なお「じゃあ最新鋭のF-35は?」というのは気になるところではありますが、今回調べた資料の中にF-35の操縦資格に関する課程についての記載は残念ながらありませんでした。

今後、何かしら見つけられましたら、新たに記事にするか、こちらに追記致します。