冷蔵庫すら使えない。極限まで音を削る潜水艦の「無音潜航」

冷蔵庫すら使えない。極限まで音を削る潜水艦の「無音潜航」

海の忍者とも言われる潜水艦。

海中にじっと潜む潜水艦を見つけるにはソナーを用いた「音」による探知が一般的です。

その為、潜水艦は自らの姿を隠すために極力音を発しないことが求められますが、その中には「そこまで徹底するの?」というくらいの騒音軽減策も存在します。

今回は潜水艦の極限のサイレント状態、「無音潜航」のお話です。



静かにしても音は出る

潜水艦の発する音、というとスクリューが水を掻く音、モーターの回転音、充電用エンジンの運転音など動力に関する音が真っ先に浮かびますが、高性能になっているソナーやソノブイにとっては、これら動力に関する音以外も潜水艦を探す手がかりとなり得ます。
(ここでいうソナー・ソノブイは音を拾うことに専念するパッシブ式です)

例えば『冷蔵庫の音』

長期間の作戦行動をする潜水艦、乗員の健康状態と士気の維持のために食事は欠かせません。
当然、食材を保存する上で冷蔵庫が設置されていますが、冷蔵庫もコンプレッサー(圧縮機)を積んでいるため冷蔵庫が動いている限り、必ず音は発生します。

他にもトイレを流せば水の音が避けられませんし、極端な話、艦内を歩くだけでも音が発生します。
(艦内ではゴム底の靴を使う他、ゴム製のマットも床に敷いてあるそうです)

その為、極限まで探知を避けるには、ありとあらゆる『音』を排除しなくてはなりません。

特別無音潜航

潜水艦の音の軽減には、いくつか段階があるそうですが、その中でも最も厳しいものは「特別無音潜航」と呼ばれます。

この特別無音潜航に入ると具体的に艦内はどのような運用になるか。

冷蔵庫は電源OFF

先ほど書いた通り、冷蔵庫も電源を入れている限り必ず音を発する為、特別無音潜航の号令が掛かると冷蔵庫も電源を切ってしまいます。

冷蔵庫そのものがある程度の断熱性を有しているため電源を落としてもしばらくは庫内の温度を保つことが出来ますが、当然扉の開閉は出来ません。

その為、特別無音潜航の号令が掛かると、事前に食材を外に出しておき、冷蔵庫の扉はロックしてしまうそうです。
(艦が揺れた際に冷蔵庫の扉が不意に開いてしまうこと、またそれに伴う音の発生を防ぐ目的もあり)

シャワー・トイレも使用禁止

海上自衛隊の潜水艦内には風呂こそ無いもののシャワーはあり乗員にとっては貴重な一時となるそうですが、当然ながら「水が流れる」という都合上、無音が求められる状況ではその使用にも制限が掛かります。
当然トイレも同様です(トイレそのものが使えないのか、洗浄水が使えないのか、これらが無音潜航の段階によって使い分けられるのかは不明)

非番の乗員は基本的にベッドに

潜水艦内は基本的に3交代勤務となっており、3チームのうち1チームが当番についていて、残り2チームは非番となります。
極端な話、とにかく「人が動けば音が出る」ため、特別無音潜航中は非番の乗員は基本的にベッドでジッとしていることになるそうです。

 

潜水艦の音の軽減は技術の発達によるところも大きいですが、それと同じくらい厳しい環境に晒される乗員によって維持されていると言えます。