【雑学】アフターバーナーって、どうやって燃えてるの?
戦闘機のエンジンの特徴的な機能の1つとも言えるアフターバーナー。
(一部民間機でも採用例はありますが)
豪快に機体から炎を吹き出して、轟音と共に飛び去る姿は見るものを魅了します。
さて、あの炎一体どのように燃えているのか。
今回はアフターバーナーの雑学について解説していきます。
※アフターバーナーは本来GE社の商標で他にオーグメンタなどの呼び方がありますが、今回はアフターバーナーで統一します。
エンジンに取り込んだ酸素
実は全部を使えない
ジェットエンジンはインテークから空気を取り込み圧縮、圧縮した空気に燃料を加えてそれを燃焼させることで推力へと変換するエンジンです。
ジェットエンジンの燃料は、おおよそ燃料1に対して空気(酸素)の量を15の割合で燃焼させると理論上もっとも大きなエネルギーを得ることが可能ですが、実際のジェットエンジンでは燃料1に対しておおよそ60の空気を取り込んでいます。
つまり、理論上最適な混合比率より4倍薄い状態で燃やしているのです。
何故わざわざ取り込んだ酸素を燃焼に使わないのか?
これはジェットエンジンで避けて通れない
「軸を回転させるために燃焼ガスのエネルギーをタービンで回収しなければならない」
という構造が関わってきます。
簡単に書くと、高音・高圧・高速の燃焼ガスを馬鹿でかい風車にぶつけて軸の「回転力」として取り出すことでエンジンを回し続けることが出来るのですが、問題はこの風車の「羽」にあたる部分、タービンブレードと呼ばれる部品です。
ジェットエンジンは上画像のF-2用の物を例に取れば、低圧軸で毎分8000回転、高圧軸で毎分14000回転という凄まじい速度で回転します。
当然、タービンブレードはこの強烈な回転に耐えられる強度が求められるのですが、鉄を熱すると柔らかくなることから分かるように高温に晒されている状態では材料の強度も低下することが避けられません。
超高温に晒されながら、毎分1万回転の強烈な遠心力に耐える素材。
実のところ材料が発達した現代でも燃料と空気(酸素)を理論上最大の出力で燃やした温度に耐えられるタービンブレードは存在しません。
よってタービンブレードが耐えられる燃焼温度まで下げる為に、わざと「薄く」して燃やして、残りの酸素はそのまま排出しているのです。
余った酸素を
燃焼に活用
では余った酸素をどうにかしてエネルギーに活用できないか。
先ほど書いた通り、酸素を全部燃焼に使うことが出来ないのはエンジン内部が熱に耐えられないため。
つまり「エンジンを通り過ぎた後」なら、どれだけ高温になっても影響を受けずに済みます。
この考えから「余った酸素を使って、エンジンの後ろでもう一度燃焼を起こす」ための装置がアフターバーナーです。
ジェット燃料の主成分であるケロシンの発火点(種火が無くても自然に燃える温度)はおよそ220℃。
ジェットエンジンの排気はこの温度を遥かに超えていますので、十分な酸素を含む排気中に燃料を吹きかけてやれば燃焼が始まります。
但しエンジン内部での燃焼が極めて高い圧力での燃焼=高出力であるのに対して、アフターバーナーの燃焼はタービンを通過した後のエネルギーを失った状態であることからエンジン内で燃やしたほどのエネルギーを得る事は出来ず、その効率は極めて悪くなります。
アフターバーナー使用時の燃料消費量は、非使用時の最大出力と比較しても3倍以上です。
以上、要点をまとめますと
- ジェットエンジンはエンジン内部が熱に耐えられないので、取り込んだ酸素を全て燃焼に使えない
- その為、排気には酸素が多量に含まれる
- エンジンを通り過ぎた後なら高温の燃焼も起こせる
- 酸素を多量に含んで発火点を超える温度の排気に燃料を吹きかけることで燃焼を起こすのがアフターバーナー
- ただし燃費は非常に悪い
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