光も届かぬ深海まで潜り、その身を潜める「海の忍者」、潜水艦。

光も届かない海の中では、当然光と同じ「波」である通信用の電波も届きません。

では、潜水艦はどのように外と通信しているのか?

今回はそんな潜水艦の雑学です。

超長波通信

電波がどれだけ「水」という障害物の影響を受けるかは、電波の波長に大きく依存します。

波長の短い電波は水の中を通りにくく、逆に波長の長い電波は水の中でもある程度進むことが出来るのです。

この波長の長い電波は水中でもある程度進む、という特性を活かした通信方法が「超長波通信」、VLFと呼ばれる特殊な電波による通信です。

VLFは波長が約10km~100km、航空無線などで使われるVHF(超短波)と比較すると1万倍も長い波長の電波で、海面にぶつかってもおよそ数十メートルの範囲であればそのまま海中を進むことが出来ます。

これを用いて潜水艦は海面に姿を現すことなく、外から送られてくる情報を受信することが出来るのです。

しかしこのVLF、欠点も多く存在します。

まず1つが「送れる情報量が少ない」

短時間に多くの情報を送るためには波長の短い電波を用いる必要があります。
例えば音声を送信するラジオでは波長が100m~1kmの中波(MF)、映像を送るテレビでは波長が1m~10mの超短波(VHF)といった具合です。

対して波長が10kmを超える超長波では極めて短く単純な文章や数字・暗号などを送信することしか出来ません。

加えて、低い音(波長の長い音)を出すのに長い弦が必要なように、長い波長の電波を送信・受信するには非常に大きなアンテナが必要になります。

その為、送信するには非常に規模の大きな送信所が必要となり、更に潜水艦側が受信する際も船体からワイヤーを数百メートル~数キロメートル伸ばしてアンテナにするという、なんともスケールの大きな送受信となります。

ちなみに潜水艦側では受信は出来ても送信することが出来ないので、陸側からの一方通行となります。

浮上して通信

超長波の巨大なアンテナと情報量の少なさを避ける為には、より高速通信が可能な衛星通信用などのアンテナを水面に出して通信を行います。

もっとも船体を露出してしまうと、どうぞ見つけてくださいと言わんばかりの無防備な状態となるため「シュノーケル」と呼ばれる船体の上部がほんの少し海面に出る深度を保つのが一般的です。

この方法を用いると高速通信が可能な一方、アンテナだけといっても水面に出ているので発見されるリスクが上がるのが欠点です。

また、潜水艦側から電波を発信すると「そこに電波の発信源がある」と周りに知らせてしまうことになるので、此方も基本的には受信だけ行います。

水中通話装置

潜水艦は「音」で相手を探し、また自身もソナーやソノブイなど「音」で相手から捜索される通り、水中でも音はかなりの距離を進む性質があります。

この特性を活かした「水中通話機」という装置が潜水艦には備わっています。
(防衛省用語集によると、会話用のソナーという位置づけだそうです)

会話の内容を8kHzの音に乗せて水中を進ませるのです。

しんかい6500などの有人深海探査艇などにも水中通話機が搭載されていることから分かるとおり、電波とは比較出来ないほどの距離・深度での通信が可能です。

ただし、当然この方法も欠点があります。

1つは「誰でも聞けてしまう」という点。

水中を進む音波はあらゆる方向に拡散・湾曲してしまうため、決まった1点に届けるということが出来ません。
その為、受信機さえ備えていれば、水中通話機の通信内容は誰でも聞くことが出来ます(当然、暗号化などは行うそうですが)

また水中の音速は約1500m/sと電波に比べるととてつもなく遅い為、距離が離れた通信ではタイムラグが生じてしまう事。
更に、先の内容とも重複しますが、水中での音波は水の温度・塩分濃度などの条件により進み方が大きく変わるため、クリアな音声での通信とは言い難いそうです。

ちなみに水中通話機は国際規格で通信規格が定められています。
隠密性が重視される潜水艦で、国際規格とは?と思われるかもしれませんが、潜水艦が仮に事故を起こした際に、必ずしも自国で救助が出来るとは限りません。

その為、救助に際して複数国での作業が行いやすいように、通信規格が統一されているのだそうです。

潜水艦と言えども「海の男・シーマンシップ」の世界は譲れないのかもしれません。