圧倒的な防御力と攻撃力を誇る陸戦兵器の戦車。

キャタピラにより不整地でも突き進む事が可能ですが、その巨大な重量故にトラブルに見舞われることも多く、また最前線に立つ任務から敵の攻撃を受けやすい車両でもあります。

戦車の乗員も自分達でトラブルに対応出来るだけの訓練は受けていますが、自分達で手に負えなくなると助けを呼ぶしかありません。

今回はトラブルに遭った戦車にとっての助け船、戦車回収車の紹介です。

戦車回収車とは

戦車回収車には以下のような条件が要求されます。

・戦車の重量を引っ張ることが可能な強力なウィンチ
・戦車の重量1/2相当を吊り上げることが可能なクレーン
・戦車を牽引して走行可能な牽引能力
・戦車が投入される環境で行動可能な防御能力

50トン近い戦車を運ぶ事が可能な走行能力が求められること、加えて車体自体にも高い防御能力を求められることから、戦車回収車は一般的に戦車の足回りを再利用したファミリー車両として開発されます。

戦車の足回りへ主砲の代わりに、ウィンチやクレーンを乗っけたというイメージです。

なお、クレーンはパワーパック(エンジンユニット)の交換作業などに用いられます。

流石に大型の砲を乗っける事は出来ませんが、自衛戦闘及び敵からの防御の為に12.7mm機関銃と発煙弾の発射装置を備えています。
(現在は引退した70式戦車回収車は発煙弾用で81mm迫撃砲も装備していました)

自衛隊の戦車回収車

自衛隊の戦車回収車は、戦車直接支援隊という戦車の活動を支援する部隊に配属されています。

例えば関東を担当する第1戦車大隊に対しては、第1後方支援連隊の第2整備大隊から、戦車直接支援隊が戦車回収車を用いた支援任務にあたります。

なお戦車直接支援隊は、支援を担当する戦車大隊と同じ駐屯地に所属するのが一般的です。

自衛隊の戦車回収車は、新しい主力戦車が開発されると、その車体を用いて新型の回収車が開発されるという流れになっており、現在は3車種が現役で活躍しています。

78式戦車回収車

74式戦車の車体を用いた戦車回収車。

これ以前の戦車回収車はクレーンが上下方向の角度にしか動かない固定式だったのに対し、旋回式クレーンを初めて装備した車両です。

ウィンチは38トン(速度を落とすことで76トンにも対応化)、クレーンは20トンの吊り上げ能力があります。

74式戦車といえば独特の姿勢制御機構が有名ですが、74式の車体を使っているこの戦車回収車でもその姿勢制御は健在で、作業時に低姿勢になり重心を安定させる効果などが得られるそうです。

90式戦車回収車

78式戦車回収車は74式戦車での運用を想定していたため、120mm砲を搭載して重量が大幅に増加した90式戦車の支援には力不足でした。

90式の50トンという重量に対応する為、その車体を用いてウィンチの能力を50トン、クレーンの能力を25トンまで引き上げたのが90式戦車回収車です。

11式装軌車回収車

10式戦車の車体を用いた回収車でウィンチやクレーンの能力は、90式戦車回収車と大差ありません。

しかし、この車両から「戦車回収車」ではなく「装軌車回収車」と名前が変更されています。

これは従来、戦車回収車が戦車部隊の所属から後方支援隊に管轄が変更。
戦車に限らず、装軌車全般へより柔軟に運用する為と言われます。

 

戦車は確かに花形とも言える車両ですが、その運用には今回紹介した回収車も含めて多種多様な支援車両の活躍が欠かせません。

「後方支援隊」となっていますが、実際には戦車を運用する重要なチームの一員なのです。