空を自在に飛びまわる飛行機。

しかし道路がある地上と違い、機材の助け無しでは一度空に上がると地上の構造物を参照する以外に現在地を知る方法はありません(地紋航法と呼ばれます)

そのため船に灯台があるように飛行機に対しても位置を特定するための様々な設備が用意されており、特に軍用機用としては「TACAN」というものが使われます。

今回は軍用機の道しるべ、TACANについて解説していきます。

TACANとは

正式名称はTACtical Air Navigation systemの頭文字を取ったもので、日本語では「戦術航法装置」、通称「タカン」と呼ばれます。

遡るとアメリカ海軍が開発したもので、海上自衛隊の護衛艦のうち航空運用能力を有する艦にはTACAN用のORN-6アンテナが搭載されています。

(画像の赤丸、円盤状のがTACANのアンテナ)

艦艇に搭載可能という点からみても分かる通りシステム自体を小型化出来るというメリットがありますが、これは民間用のVORが30~300MHzのVHF・超短波を使用するのに対して、TACANは極超短波を使用しているという点が大きく貢献しています。
周波数が小さければ小さいほど、より大きく長いアンテナでなければ送受信が出来ないのです。

VORと何が違う?

民間航空機には先ほども書いたVORがTACANと同様の役割を果たしていますが、VORとTACANの大きな違いとして「距離情報の有無」があります。

VORはそれ単体では方位角(VOR局に対して自分が今どの方向にいるか)しか示すことが出来ず、もし距離を知りたい場合にはDME:Distance Measuring Equipmentを併用する必要があります。

対してTACANは単独で方位と距離、その両方を知ることが可能です。なのでVOR/DMEを一まとめにした軍用のシステムがTACANと言えます。

距離を調べる方法はDMEもTACANもほぼ同じシステムで、機上システムから質問電波を局に送り、局から返答波が届くまでの時間差で距離を計算します。なお軍用機用のシステムであるTACANですが、民間機も距離情報だけは受け取ることが可能です。
(DMEの機能とTACANの距離情報提供機能が同一原理のため)

VORTAC

軍用機のみが扱う航空路などではTACANのみが存在すれば問題ありませんが、軍用機と民間機の双方が入り混じる場所では、両者が使えるVORTACという形で設置されています。
(読者様よりご指摘頂き、記述内容修正 H30.11.19)

VORTACは民間用のVORと軍事用のTACANを一緒にしたシステムで、特に百里(茨城)、小松、小牧(名古屋)、美保(鳥取)など自衛隊機と民間機が共同利用する官民共用空港においては、ほとんどがVORTACになっています。

灯台とは違い「電波」という目に見えない形を用いているため、なかなか意識することのない設備ですが、軍用機が安全に飛べるのも空の灯台あってこそ。

見えないけれども非常に重要な設備なのです。

※参考文献

  • 戦闘機の航空管制(著:園山耕司)
  • 国土交通省HP 航空保安無線施設等
  • AIS JAPAN