虫歯厳禁。飛行機以上に辛い、潜水艦の気圧変動。

虫歯厳禁。飛行機以上に辛い、潜水艦の気圧変動。

戦闘機パイロットや宇宙飛行士は虫歯があると大変なことになる。

こんなお話を聞いたことは無いでしょうか。

よく「天気が悪い時は虫歯が痛む」とも言われますが、これは気圧の変動によるもの。

ハイレートクライムであっという間に高度差数千メートルを移動することもある戦闘機の場合、その気圧変動は相当なものなのです。

さて、この気圧による虫歯が大きくかかわる乗り物がもう1つあります。

それが海の中に潜む「潜水艦」

一見、密閉空間で気圧とは無縁にも思える潜水艦ですが、実は飛行機以上に過酷な気圧変動とも言われます。



基本的には1気圧に保たれる

人間が生身で潜ることが難しい遥か深い海の底まで潜っていく潜水艦、その船体に加わる圧力は鋼鉄すら軋むとてつもない強さですが、潜航中の潜水艦内は基本的に1気圧、すなわち地上とほぼ同じ気圧に保たれています。

なので、どれだけ深く潜っても艦内の気圧が急上昇するということはありません。

仮に深く潜るほど気圧も変化するのであれば、潜水艦はとても人間の乗れる乗り物ではないでしょう。

潜水艦独自の換気・スノーケル

では、潜水艦で気圧が急に変わる理由とは何か?

これは通常動力型潜水艦にとって、欠かすことの出来ない「充電」の時に発生します。

通常動力型潜水艦はバッテリーから電力を供給してモーターでスクリューを回し、バッテリーの残量が少なくなると発電機用のディーゼルエンジンを回して充電するという動きを繰り返します。

当然、エンジンを回すためには空気(酸素)が必要なので、海深く潜れる潜水艦もこの時ばかりは空気を取り込むために、海面近くに戻らなくてはいけません。

しかし姿を隠すのが基本の潜水艦では、なるべく目立たないように空気を取り込む必要があります。

このために行うのが、スノーケルと呼ばれる潜水艦独特の航法で、空気を取り込むための「筒」だけを海の上に出しています。
これにより海面に出す部分を小さくして発見される確率を下げるのですが、このスノーケル航法、当然欠点もあります。

海面がプールのように穏やかであれば、スノーケルも容易に行えますが、実際の海は常に波風の影響で変動しています。
ここに筒を突き出して空気を取り込もうとすると時折、海水が筒に被ってしまうのです。

当然、海水がそのまま流れてくると都合が悪いので、この筒には水が掛かったことを検知するためのセンサーが備えられており、水を検知すると筒の途中で強制的に蓋が閉まる構造になっています。

しかし空気を取り入れる蓋が閉まっても、充電の為に回っているのは3000馬力を超える大型のディーゼルエンジン、そうすぐには止まりません。
(川崎12V25エンジンの水上出力が3100馬力)

では空気を取り入れるための蓋が閉まって、この大型エンジンはどこから空気を取り込むのかと言うと「艦内」の空気を無理矢理吸い込もうとします。

これが潜水艦で気圧の急変動が起きる理由です。

ほぼ密閉状態の潜水艦、空気を取り入れるところも無い中、巨大なエンジンが強引に空気を吸い込もうとするので、とてつもない勢いで気圧が落ちるのです。

その為、潜水艦乗りの必須スキルとして「耳抜き」があると言われます。

当然ながら、虫歯や耳の病気はご法度です。

潜水艦乗りは虫歯になりやすい?

虫歯が禁物の潜水艦乗りですが、一方で「虫歯になりやすい」とも言われています。

所説あるようですが

  • 真水が貴重で、かつ昼夜関係ない生活を送るので、歯磨きの頻度が少ない
  • 気圧変動が歯に大きな負担を掛けている
  • バッテリーから発生するガスが歯を溶かしている

何にせよ、虫歯になりやすい大変な環境のようです。

※参考資料

  • 潜水艦メカニズム完全ガイド(著:佐野正)
  • 潜水艦がまるごとわかる本(メディアミックス)
  • 海上自衛隊全艦艇史(海人社)