新年早々、想像もつかないようなニュースが入ってきました。

自衛隊が電子戦機・EA-18Gグラウラーの導入を検討するというもの。

今までの自衛隊のあり方を考えた場合、想像も付かないような装備であり、日本の安全保障のあり方が大きく変わろうとしているのではないかと筆者は考えています。

昨年末に出てきた「いずも」の改修やF-35B導入なども、グラウラー導入の話や昨今の日英の緊密な関係を考えると納得出来るかもしれません。

素人考えで恐縮ですが、これらの話から見据える自衛隊の将来像について前・中・後編の3回に分けて少し整理していきたいと思います。

現在の自衛隊

まず我が国の安全保障を考える上で重要なのは

資源に乏しく、多くを輸入に依存する

という点です。
そして、その輸入の多くは海上交通路=シーレーンが支えています。

軍隊は作戦行動を支える「後方補給線」というのが重要ですが、言わば日本という国が活動を行うための後方補給線がシーレーンであると言えます。

故に洋上交通が国際秩序に則り安全に使用出来ることは非常に重要であり、これが脅かされることは我が国の生命線を左右する死活問題となります。

さて現在の自衛隊は、いわゆる南西シフトで形が変わりつつあるとはいっても、基本的には従来の日米安保を基本とした東西冷戦構造が基本形と言えると思います。

即ち「米国の軍事力を後ろ盾とした、東西冷戦における西側陣営の太平洋最前線」。デタントを経た51大綱で東西の全面衝突は起こりにくいとされたものの、冷戦構造が自衛隊の基本的なあり方というのは変わらないところです。

あくまでも日本の役目は自国とその周辺での防衛・監視であり、生命線であるシーレーンの警備は米国との安保に依存して来ました。

いわゆる「1000海里防衛構想」、場所で言えば台湾の南・バシー海峡までが日本が睨みを利かせて守る範囲であって、それより先は「世界の警察」である米国の圧倒的なシーパワーに期待しつつ外交や国際協力などを通じて安定を確保するというのが基本です。

この冷戦形の構造で見た場合、日本は世界的に見れば近接する脅威への単正面作戦を取っていると考えられます。
即ち自国に近接する脅威の侵攻に備えることと、シーレーン及び太平洋への「境界線」にある監視塔としての役目。

冷戦終結後にも数度の大綱の改訂を経て現在に至りますが、今尚自衛隊の形は「本土の防衛+1000海里」を基本とする冷戦構造からの「変形型」であります。

冷戦終結後、大規模な着上陸作戦は起こりにくいとされた後も、なぜこの形が維持されてきたかというと

減らすのは簡単でも増やすのは難しい

というのが大きな理由です。

将来的に再度本土上陸の危機が現実となっても、一度失ってしまったノウハウは一朝一夕で簡単には取り戻せない。
ならば多少形は変えても維持しておこう、というのが冷戦終結後の自衛隊の基本的な考え方だったと言えます。
(幹部ポストの維持諸々、大人の御事情も多々あったことは言うまでもないとは思いますが)

但し、ここ数年の防衛大綱における動きは特に陸上自衛隊において、機動旅団化などにより重火力よりも機動性を重視する傾向に変わりつつはあります。

国際情勢の変化

冷戦終結後、世界は超大国の正面切っての衝突から、より複雑な姿へと変化しています。

小規模紛争・テロなどの新しい形の脅威が無視できないレベルとなり、軍備もそれに対応したものが求められているのが現状です。

またソ連崩壊後のロシアが再度、強国に返り咲こうとクリミア併合・シリア内戦への積極的軍事関与など攻勢策に出ていることも無視できません。

しかし何より大きいのは中国の台頭でしょう。

従来ランドパワー型国家だった中国が、米軍の空母打撃群にも匹敵するような強大なシーパワーを備えてシーレーンを脅かすような形になってきたのは世界の安全保障を揺るがす転換であったと言えます。

中国からしてみれば爆発的な人口増加と経済成長を支える為には、資源の受け入れルートであり、また輸出入という経済を支える「海」が必要だったのです。

従来、シーレーンの安全保障は米国が全面的に引き受けてきましたが、空母機動艦隊の運用まで本格的に見据えた中国海軍を相手に、米国だけでシーレーンの安全保障を担保するのは非常に厳しくなると思われます。

即ち従来の米国に依存する1000海里防衛構想だけでは、日本の生命線を守りきれない可能性が出てくるということ。

「石油の一滴は血の一滴」という言葉もありますが、海上交通は言わば血液の流れでありシーレーンは血管です。

何処か1箇所でも血管が詰まったり穴が開いてしまえば血が流れないように、シーレーンも全体の安全が確保されなくては意味がありません。

中国の強大化するシーパワーに対し如何にしてシーレーンの安全を確保するかというのが、今後の自衛隊の、そして我が国の安全保障のあり方を大きく左右するのです。

中編に続く