10月12日あさひ型護衛艦2番艦DD-120が「しらぬい(不知火)」と命名され、進水式を迎えました。

事前の予想では初代あさひ型護衛艦の2番艦である「はつひ」ではと言われていましたが、色んな意味で予想外の名前だったようです。

 

さて、この護衛艦の名前、一定の命名規則に従って防衛大臣が命名するものとされています。
(あくまでも形式上、防衛大臣が命名者という形で、実際には部内会議などで案が絞り込まれていくようですが)

今回は護衛艦を含め海上自衛隊の艦艇が、どのような基準で名前を付けられるか解説していきます。

命名の大原則

艦名が付与されるにあたっては、いくつかの決まりごと、というよりは慣習があります。

その1・同型艦には同様の命名を

護衛艦には同型艦が多数ありますが、基本的に同型艦には同じような由来の命名を行うというのが大原則になります。

一番分かりやすいのはDDの「○○ゆき」(雪型)「○○なみ」(波型)「○○ぎり」(霧型)などですね。

その2・旧海軍の艦種別命名規則が根強く生き残ってる

旧大日本帝国海軍においては

戦艦:旧国名(大和・長門など) ※金剛型は例外
重巡洋艦:山の名(妙高型など)
軽巡洋艦:河川の名(球磨型など)
駆逐艦:自然現象の名(吹雪型など)

艦の規模によって、その名前に一種の「格式」がありました。
この習慣は現在も色濃く残っており、排水量の小さな汎用護衛艦に戦艦で使われていたような名前が付くことは暗黙の了解でタブーとなっています。

 

あと、当然ですが現在使われている名前を他の艦に重複して付けることは出来ません。
ただし、同型艦が全て引退・除籍して一定の期間が経過すると、同じ名前を再度使用する事もあります。
2017年現在だと「むらさめ型」「あきづき型」は、それぞれ2代目です。

これらのルールを踏まえて艦名の命名規則を解説していきましょう。

護衛艦

DD・DEに分類される護衛艦については

天象・気象、山岳、河川、地方の名

となっており旧海軍の戦艦~駆逐艦まで全てが該当します。
(命名規則上はDDとDEは区別されていません)

ただし実際には艦のサイズなどにより使い分けがなされています。

DDH:ヘリコプター搭載型護衛艦

ヘリコプター搭載型護衛艦の現役艦(DDH181~184)については、全て地方名・旧国名が付けられています。
これは旧海軍で戦艦に相当する命名ですが、それ以前のDDHは「はるな型(榛名山)」や「しらね型(白根山)」など重巡洋艦相当の名前でした。
旧国名が使用されたのは全通甲板となったDDH-181「ひゅうが」(日向国、現在の宮崎県周辺)からです。

DDG:ミサイル搭載護衛艦

DDGについてはイージスシステム非搭載の「はたかぜ型」と、イージス艦の「こんごう型」「あたご型」が存在しており、前者は「風」という自然現象、後者は旧重巡洋艦に相当する山岳名が使われています。

これもやはりイージスシステムの搭載という大きな節目を迎えたことからでしょうか。

今後もDDGはイージスシステム搭載型が計画されているので、同様に山岳名が使われていくと思われます。

 

ちなみにDDHやDDGは護衛艦の中でも艦長が二等海佐(中佐)ではなくて、一等海佐(大佐)となりますので、やはり「格上」の存在なのかもしれません。

DD:汎用護衛艦

汎用護衛艦は「雪」「霧」「波」「雨」などの自然現象に由来する名前が使われており、同型艦は基本的に同様の名前を使用します。

むらさめ型だけが

むらさめ、はるさめ、ゆうだち、きりさめ、いなづま、さみだれ、いかづち、あけぼの、ありあけ

と「本当にこいつら同型艦か!?」とつっこみたくなるような名前ですが、一応「気象現象」ということで「同様の名前」という括りに入っています(多分・・・)

DE級(あぶくま型)

2桁護衛隊に配備されるDE級については、現在全て旧軽巡洋艦に相当する河川名が艦名として採用されています。

しかし海上自衛隊で初めて採用されたDE級はDE-262「あさひ」で、平成28年に進水式を迎えたDD-119「あさひ」と同じ名前が使用されていますし、現在むらさめ型護衛艦として使用されている「いかづち」「いなづま」もそれぞれDE-202、DE-203として存在した過去があります。

DE級だから河川名というのは結構最近の話で、海自の護衛艦のクラス分けが進んだ結果そういう傾向になったものだと思われます。

潜水艦

潜水艦については海象・水中動物の名、ずい祥動物の名となっています。
(ずい祥動物=伝説や神話などに登場する動物など)

海上自衛隊の潜水艦の艦名は代々「潮」「潮流」に関する「○○しお」で長年統一されてきましたが、SS-501で初めて「そうりゅう」(蒼龍)という別系統の名前が付与されました。

なお旧海軍では、ずい祥動物の名は主に航空母艦を中心に付けられていましたので、今後、空母と同じ名を持つ潜水艦が現れる可能性は大いにあります。

掃海母艦・掃海艦・掃海艇

掃海に関わる艦種は、島の名または海峡(水道・瀬戸を含む)の名となっています。

実際には大型艦の掃海母艦が「うらが」(東京湾の入口・浦賀水道)など海峡に関わる名前を貰い、掃海艦が比較的大きめの島の名前を、掃海艇が掃海艦よりも小さめの島の名前を命名されているようです。

例えば最新型掃海艦のネームシップ「あわじ」は淡路島は面積が約600平方キロメートル。
対して最新型掃海艇のネームシップ「えのしま」は湘南の江ノ島。江ノ島の面積は1平方キロメートルもありません(^_^;)MSC-602「やくしま」(屋久島)のような例外もありますが。

ミサイル艇

ミサイル艇は現在のところ「はやぶさ型」のみが配備されていますが、全て「隼」「鷹」などの鳥類から名前を貰っています。

ちなみに命名規則上は「鳥の名、木の名、草の名」となっているので、植物の名前も付けることが出来ますが、ネームシップが「はやぶさ」で鳥類の名なので、新型艦が出ない限り植物の名が付くことはないでしょう。

ちなみに、この鳥類の名前については、元々は駆潜艇に用いられていたものです。
海上自衛隊の歴史には「きじ」「わし」「たか」などの非常にシンプルな鳥類の名前を冠した艇も存在しています。

輸送艦

輸送艦は原則として半島の名前を冠します。

「おおすみ」(大隅半島)などです。

また、おおすみ型の前には「ゆら型」(由良半島)もありました。

 

これら以外の艦は「名所・旧跡」とだけ指定されていますが、一部は命名の規則が事実上決まっている状態です。

補給艦

現存する補給艦は全て国内にある湖から、その名前を貰っています。

とわだ(十和田湖)、ときわ(常盤湖)、はなま(浜名湖)、ましゅう(摩周湖)、おうみ(琵琶湖のこと)

ちなみに過去には「さがみ」(相模湖)も存在しています

練習艦

幹部候補生の練習航海に用いる練習艦は「かとり」(香取神宮に由来)、「かしま」(鹿島神宮に由来)、また旧軍では「香椎」(香椎宮に由来)など、歴史の深い神社の名を艦に付けています。

海上自衛隊の練習艦としては現在、初代「かとり」、二代目「かしま」と続いてるので3代目は「かしい」になる・・・?

 

他には音響観測艦「ひびき型」を例に取ると「ひびき」が響灘から、2番艦「はりま」が播磨灘からというように、やはり同型艦は同じ由来の名前を付けるというのが基本となっているようです(同型艦が全く無いというパターンも多いですが)

 

新しい艦の進水式直前には命名予想で毎度盛り上がりますが、艦名についての基礎知識があると、より一層楽しめるかもしれません。

※参考資料
海上自衛隊の使用する船舶の区分等及び名称等を付与する標準を定める訓令
海上自衛隊HP

痛飛行機弐