6/9に美保基地で新型のC-2輸送機が、滑走路(誘導路)を逸脱して、草地で停止した問題で、本日航空自衛隊から、パイロットの操作手順の誤りにより、機体が正常に動作しなかったものとの報告が出されました。

空自輸送機の滑走路逸脱は誤操縦が原因 米子空港
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170620/k10011023481000.html

報道の記事などだけでは、分かりにくい部分もあるので、可能な限り解説していきます。

原因はIRS

今回、事故の原因となった装置は「IRS・慣性基準装置」と呼ばれるもので、機体がどちら向きに、どれだけの速度で動いているかを検知するものです。

ちなみに似たような装置は、実は結構身近にあります。カーナビです。

トンネルやGPSの電波が届かない場所でもナビゲーションの現在地をある程度保つために、カーナビには車の進む向きや速度を読み取る装置が入っています。
(スマホなどのナビ機能や安物のナビだと、電波が途切れると明後日の方向に進んだり、位置表示が止まることがありますが、それはこの機能が無いからです)
今回、原因となったIRSは、その更に高精度版みたいなものだと考えて下さい。

IRSの原理云々に関しては・・・筆者の知識と語彙力では、説明すればするほど泥沼になりそうな気がしますので、ご勘弁を・・・従来、ジャイロセンサーに頼ってたものを、光センサーに置き換え、機械的な故障リスクを排除したもの、とでもお考えいただければ・・・

(参考HP http://www.jal.com/ja/jiten/dict/p201.html)

IRSにはキャリブレーションが必要

このIRSですが、非常に繊細な装置のため、装置を起動した直後に使用することが出来ません。キャリブレーション=整合の時間が必要なのです。

皆さん、理科の授業で上皿天秤を使った際、必ず最初に
「左右に同じだけ針が振れるように、ネジで調節する」
という手順をやった覚えはないでしょうか?

あれは天秤が確実に左右吊り合っている=分銅で正しい測定が出来るための手順ですが、IRSの場合は速度や距離を検知するものなので、まず「止まっている」状態をしっかり合わせる状態があるのです。

なお、IRSはC-2に限らず、他の機体でも使われていますが、F-2戦闘機を例に取るとIRSの標準整合(1時間飛行で約1マイルの誤差)には概ね3分掛かるそうです。
(引用元:サイエンス新著F-2の科学 P.54)

今回の事故では、緊急発進訓練を行っていた際に、IRSの整合が終わる前にパイロットが機体を動かしたため、整合に誤差が生じ、機体の動きとIRSで検知される速度情報に誤差が生じたようです。

報道記事によると、C-2には地上滑走中、一定の速度を超えている場合に、ステアリング操作を制限するインタロックがあったそうで、本来ならタキシング中には作動しないはずの機能が、速度の誤検知で働いてしまい、結果操作不能に陥ったとのこと。

本来、事故を防ぐための機能が、逆に事故を起こしてしまったという形です。

ヒューマンエラー?設計ミス?

今回、航空自衛隊は「操作ミス」と発表していますが、これは考え方によると思います。

IRSのキャリブレーションが終了する前に機体を動かしたらコクピットに警告を発するなど、ハードレベルでの対策も取れないことはないわけですから。
今回の報道記事より、キャリブレーション中はコクピットに表示がされる仕様にはなっているそうですが、見落としてしまえばそれまでです。

ただ「軍用機」というカテゴリーにおいて、どこまで安全対策をハードレベルで追求するか、というのもまた難しい問題だと思います。
安全を追い求めれば追い求めるほど、部品数も増え、整備の手間も増え、お金も時間もロスすることになりますから。

しかし個人的には「人間はミスをする」という前提で、ハード面での対策を考えるべきだと思います。

痛飛行機弐