4月29日の朝、北朝鮮より弾道ミサイル1発が発射。
発射は失敗に終わったと見られ、Jアラートによる警報は発信されませんでしたが、ニュース速報などの情報を基に東京メトロなどが一時運転を見合わせる対応を取りました。

一方で停止措置は行わなかった鉄道事業者もあり、その対応について賛否両論あるようですが、筆者は鉄道事業者の取った対応は正解であったと思います。

普段とは少し違う内容になりますが「安全とは何か」という部分にも触れながら、私なりに解説させていただければと思います。

地下鉄ストップが正解だったと思う訳

まず筆者は安全を守る上で「だろう」ではなくて「かもしれない」を重視します。
また安全とは「許容できないリスクが排除された状態」と認識しております。

また鉄道は過去に「列車を止めなかった」ことで、数多の犠牲を出しています。
三河島事故がその最悪の事例であるかと思いますが、他にも新大久保駅の旅客転落事故など「非常停止さえしていれば」という事故は多いのです。

今回の弾道ミサイル発射は、4月21日に内閣府が弾道ミサイル落下時の行動について広報してから、初のミサイル発射事例でした。

先の資料にはJ-アラート作動時の推奨行動として「頑丈な建物、または地下」への避難が示されています。と、なると当然地下鉄の駅も対象になるでしょう。
仮に避難行動が開始されれば、地下鉄の駅には大勢の人が押しかける可能性が考えられます。

政府はJ-アラートのサイレンを行動開始のキッカケとしてほしいと広報していますが、昨今はスマートフォンなどの普及により、誰でもニュース速報などを受信可能です。

さて「北朝鮮よりミサイル発射」の速報を見て、避難行動を起こさない人がいるという保証はあるでしょうか?
今回ニュース速報が流れて確かにパニックを起こす人はいなかったですが、これは今回の一件を受けて初めて明らかになったデータです。4月29日朝の時点では誰もわからなかったことでしょう。
報道されるまでには相応の時間差があるので、ニュース速報流れた時には既に事態は終息していると考えるのが普通ですが、皆が皆冷静だとは限らないし、恐怖や集団心理というのは時に冷静な思考を奪うものです。

つまり
「ミサイル発射の速報でパニックになる人がいるかもしれない」
→「地下鉄の駅が、騒ぎになっているかもしれない」
→「駅構内の安全が確保出来ないかもしれない」
「一旦運行を止めて、駅の安全状況を確認しよう」

至って合理的かつ冷静な思考であると私は思います。

鉄道に限らず、公共交通機関にとって「許容出来ないリスク」の最たるものは人命です。
それを確実に保護出来ないのであれば運行を止めるというのは「安全」という観点から見ても、正しい選択肢です。

故に筆者は東京メトロの取った今回の対応は「政府が地下への避難を推奨する広報を出してから、初のミサイル発射事例」として、今後更なる検討が必要ということはあっても、非難される筋合いは何処にもないと考えます。

今回の事例を踏まえて「速報の出た瞬間、駅はどんな状態だったか?」などの情報を集めた上で「停止しなくても駅手前で徐行すれば良いのでは?」などと、段階的に安全を守れる範囲で、より良い運用を目指せば良いのですから。

止めなかった事業者はどうか

まず先に書いたとおり、今回の件は「地下街への避難」という点が大きく関係していると思いますので、地上路線については駅でのパニックなどを理由に制限を掛ける必要は無かったと思います。
政府からの正式な情報伝達がJ-アラートである以上、その受信を以って運行停止に踏み切ると言うのは、これも合理的な判断です。

新幹線で唯一停止した北陸新幹線については路線が着弾リスクの高い日本海側であることや、金沢方面への延伸が2015年頃と日が浅く、緊急時の対応についてノウハウが蓄積されていなかったので、安全を考えて停止したのではと筆者は考えます。

 

先日も踏切で老人を助けようとした男性が亡くなり「危険な時は非常停止釦を!」というのが強く広報されています。
とりあえず止める事が出来れば、人命を失うという最悪の事態は防げるのです。
事実、先に書いたとおり、鉄道は「止めなかった」ために多くの人命を犠牲にして、その上に今が成り立っているのですから。

公共交通の最も排除すべきリスクが「人命を失う」ことである以上、人命を危険に晒す事故を防ぐため停止の判断をすることに、利用者である我々は協力する義務があると思います。