縁の下の力持ち 海上自衛隊の支援船

縁の下の力持ち 海上自衛隊の支援船

海上自衛隊に所属する船舶というと、護衛艦・潜水艦・掃海艇などが真っ先にイメージされますが、これらは法律上「自衛艦」としての位置づけを与えられます。
即ち、国際的に「軍艦」としての地位で扱われ、自衛艦旗を掲げる艦です。

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しかし、海上自衛隊に所属しながら、自衛艦旗を掲げない船もそんざいします。

それが「支援船」と呼ばれる船たちです。

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支援船は主に港内・湾内での作業にのみ従事する船舶で、見ての通り、海上自衛隊の象徴たる自衛艦旗は掲げていません。
しかし所属は「海上自衛隊」となっていますし、支援船の働き無しに自衛艦はその任務を果たす事は出来ません。

今回は、そんな縁の下の力持ち、支援船の紹介です。

何故、支援船には自衛艦旗が無いか

これは海上自衛隊の事情というよりかは、国際海洋法に絡む話になります。

軍艦というのは、古来より非常に特殊な地位が与えられる船舶で、時と場合によっては「所属国政府の代表」としての役目を果たすことがあります。
軍艦であることを示すのが「軍艦旗」(自衛艦旗)であり、これを掲揚することで外部から軍属であることを初めて認識されます。

軍事組織に置いて、国家元首の代行者たる立場を有するのは、必ず「士官」(自衛隊では幹部自衛艦)でなくてはなりませんので、軍艦としての地位を持つ船舶は必ず、所属国から任命された士官が代表者として指揮を取る必要があります。

逆を言えば、士官の指揮下に入らない船が軍艦旗を掲げることは出来ないのです。
支援船全てに最低でも三等海尉を乗せようとなると、凄まじい人数が必要になります。

なので海上自衛隊には所属しているけど、自衛艦=軍艦としての籍には入れない船という扱いになるのです。

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ちなみに、こういった小さいボート(内火艇など)でも、護衛艦艦長の指揮下に入っていれば、その一部と見なされますので自衛艦旗を掲げますが、下の写真のように、必ずしも自衛艦旗を掲げるとは限りません。(国旗は掲げています。恐らく部隊所属により対応が違うものと思われ)

なお米海軍を見ても

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軍艦旗ではなく、国旗のみを掲揚して航行していますので、海上自衛隊に限らず「船に関する国際的な決まりごと」というのが、お分かり頂けるかと思います。

ちなみに自衛隊の支援船は国旗を掲げずに航行していますが、この理由は今のところ謎です(恐らく内規によるとは思うのですが)
ただ海上自衛隊の使用する船舶に付いては、船舶法に関する適用除外を受けます。

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支援船の種類

前置きが長くなりましたが、実際の支援船を紹介していきます。

曳船58号型

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いわゆる「タグボート」です。

接岸及び離岸時に大型艦の周囲で船体を押したり、逆に引っ張ったりすることで、その動きをサポートする役目を担います。

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写真はいずも型の「かが」を接岸させるため、横から押している様子。
重なってて見えづらいですが、2隻で押しています。

小さな船体で大きなパワーを出すため、スクリューは低速トルク重視となっているのが特徴です。

 

交通船2121号型

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港内で荷物や人員を載せて移動するための船です。先端部が揚陸艇などと同様に、スロープとして使用出来るようになっており、ここから車両を直接船内に乗せることも可能となっています。

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潜水士の訓練用として使用することも

実際に車両を載せる様子です。

 

運貨船9号型

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交通船とよく似ていますが、こちらは荷物を運ぶのを重視して、クレーンも備えているタイプです。
何やら運んできて、護衛艦の側へと陸揚げしている姿を、よく見かけます。

水中処分母船1号型

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従来、旧式の掃海艇などを流用してきた水中処分隊の母船として、新造された船です。

潜水士の作業母船となるため、潜水に関する各種設備が搭載されています。

 

この他にも燃料補給用の油船やら色々とあるのですが・・・
筆者の乏しい写真と知識では、現状解説できるのはここまでになります。

どうしても目立たない存在ではありますが、どんな大きな艦も支援部隊の働き無しには活躍できません。
支援船は、まさに縁の下の力持ちなのです。