以前、AH-1コブラの記事でも書きましたが攻撃ヘリコプターという考え方は、ヘリコプターによる歩兵輸送・ヘリボーン作戦を運用する上において十分な速度と対地攻撃能力を備えたヘリコプターが必要という考え方から生まれたものです。

故にAH-1の主目的はソフトターゲットまたは軽装甲車両などに対する攻撃であり、後にTOW対戦車ミサイルなども追加されましたが、あくまでも敵主力戦車に対する攻撃は副次的であると言えます。

しかし時は1970年代、東西冷戦の中で旧東側諸国における装甲戦闘車両の増大に対し、AH-1コブラでは対戦車戦闘は荷が重いとして敵機甲部隊に対して十分な攻撃能力を有するヘリコプターとして開発されたのがAH-64、通称アパッチ。

これに、更に高性能レーダーなどを加えたのが現在各国で運用されているAH-64D、通称アパッチ・ロングボウです。

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AH-1コブラとの相違

先に書いたとおり、機甲部隊との戦闘を想定しているため、全体的に重火力・重装甲となったことが特徴的です。

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固定武装である機銃は、30mmのチェーンガンM230を装備。
30×113mmの多目的榴弾または焼夷榴弾を約600rpm、1秒に10発程度撃ちこむ事が出来ます。

ちなみに30mmというと、A-10に搭載されているGAU-8が有名ですが、GAU-8の30mmは30×173mm弾なのでM230のものより更に一回り大きい弾になります。

またハイドラロケット弾に加えて、ヘルファイアミサイルを装備。

ヘルファイアはTOWとは異なり有線誘導の必要が無くなった為、射撃後はレーダーさえ照射できる位置をキープ出来れば、敵を撃破可能になりました。

これは敵装甲車両との戦闘において生存性向上の観点から非常に大きな意味を持ちます。

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機首先端には複数のレーダー・センサー類などが取り付けられ、夜間作戦が可能なナイトビジョンモードなども備えています。

更にロングボウ・アパッチではメインローター上に、ドーム上のロングボウレーダーが追加されました。

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これにより機体を地形や遮蔽物の陰に隠しながら頭のレーダーで周囲を索敵するなど、より生存性が高く効率的な攻撃が可能となりました。

AH-1ではどちらかといえば索敵・攻撃は「目視」に頼る部分が大きかったのに対し、AH-64は戦闘機にも劣らない優れた火器管制システムが備えられているのが、新旧の大きな特徴の違いと言えます。

 

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装甲の面でも大きな進化が見られ機体の左右離れた位置にエンジンを置く事で被弾しても片方のエンジンが生き残る可能性を向上させています。

外装自体もアルミ合金などの多用により相当強固となっており20mm弾の直撃でもしばらく飛行が可能だそうです。

またエンジンの出力も非常に高く、空虚重量で5tを超える機体ですが

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そのまま宙返りでもするんじゃないかというくらい非常に高い機動性能を誇ります。

アパッチは火力・装甲・機動性、あらゆる面において、従来の攻撃ヘリコプターを凌駕する機体なのです。

ただし米軍でも1機あたりが約20億円と、非常に高価な機体になっています。

自衛隊のアパッチ事情

自衛隊ではAH-1Sコブラの後継機として、平成14年度予算で2機の調達が認められ、平成18年度に最初の1機が導入されました。

ちなみに自衛隊での装備名称は「戦闘ヘリコプター」となっています。
(攻撃という言葉を嫌う、いわゆる自衛隊用語)

しかし、時は平成。冷戦終結もあり高価なヘリコプターの大量調達はなかなか認められず調達ペースは年間2機、ついには年間1機となり、平成19年度予算で調達された1機を最後にAH-64Dの調達は打ち切りとなりました。

更にタイミングが悪い事に米国でのAH-64Dの同系統(block2)生産が終了したというのも1つの要因と言えます。

結局、教育部隊を除くと、西部方面の第3対戦車ヘリコプター隊の第2飛行隊のみがAH-64Dを装備して、他の対戦車ヘリコプター隊はコブラをそのまま使用するという、非常に歪な状態となってしまっています。

恐らく自衛隊の装備品調達でも1.2を争う「失敗」でしょう。

後に3機が追加で予算計上されていますが、この3機で調達は終了となっており今後老朽化の進むAH-1Sコブラをどうするのか、あまり時間が残されていない中で難しい問題を抱えています。

ただハイパワーのエンジンで、豪快な飛行を見せるアパッチは、基地祭などでも華があり、難しいこと抜きに見て楽しむ分には素敵な機体です。

なおアパッチのコールサインは、そのまま「アパッチ」が使われています。
(コブラは「アタッカー」)

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