海上自衛隊の艦艇は大きく分けると

「警備艦」
「補助艦艇」

この2種類があります。

直接、作戦行動に参加する艦が「警備艦」、警備艦の行動を補助する為の艦が「補助艦艇」という区別です。

しかし、現代の軍事作戦は綿密な計算や事前調査に基づいて行われるのが基本であり、警備艦のみでは海上戦力を維持することは出来ません。

その中でも普段、一般人には全くと言っていいほど馴染みがないですが、非常に重要な役割を果たしている艦があります。

「観測艦」と呼ばれる種別の艦です。

海上自衛隊だと「海洋観測艦」「音響観測艦」この2種類が就役しています。

それぞれ、どんな形で海上自衛隊の任務に貢献しているのか、詳しく解説していきます。

海洋観測艦

2017年現在「わかさ」「にちなん」「しょうなん」が就役しています。
艦番号は5100番台です。

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「海洋観測艦」とは、その名の通り、海の観測を行うための艦です。

水温・塩分濃度・海流など海水そのものに関わるものや、海底地形を調査して海底地形図を作成することなどを主任務としています。

では、何故このような情報が必要なのかというと、これらの情報が潜水艦作戦行動及び、対潜哨戒の優劣を決める重要な要素となるためです。

ご存知のとおり、潜水艦は「音」を頼りに作戦行動を取りますが、「音」というのは必ずしも直進するとは限りません。水の条件により音波の進む方向は屈折します。

また対潜哨戒を行う際も同様に、相手が出した音や、此方がアクティブソナーを使った際の音は、水中で大きく曲がります。

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海域・季節・時間帯、作戦行動を取る際に、その海の中はどのような海水になっているか。
これが分からなければ、ソナーを使っての正確な結果は得られません。

この「どのような海水か?」という情報を、各地で収集して提供するのが、海洋観測艦の重要なお仕事です。

護衛艦の対潜哨戒、潜水艦の潜航行動、対潜哨戒機のソノブイによる哨戒活動、全て海洋観測艦の提供してくれるデータが無ければ、本来の力を発揮できません。

潜水艦が主力と言われる現代の海軍において、海洋観測艦のもたらすデータは言わば陸軍の「地形図」と同じくらい大事なものなのです。

また潜水艦は潜航時、当然外は見えません。
窓も無いですし、そもそも深海では光すら届かない世界です。

この中でジャイロコンパスとソナーだけを頼りに動き回るわけですが、当然「何処に何があるか」事前に把握出来なければ、最悪は海底地形に衝突することもあり得ます。

この「海底地形図」を如何にデータとして蓄えておくか、これは潜水艦の作戦行動能力を大きく左右します。
どんなに性能の良い艦でも、何処に何があるか分からない状態では、敵に見つかりやすい浅い深度を通るしかないのです。

この点でも、如何に優秀な海洋観測体制を備えているか否かが、現代海軍の作戦行動能力を大きく左右すると言えます。

音響観測艦

海上自衛隊HPより引用

海上自衛隊HPより引用

海上自衛隊では「ひびき型」の2隻が就役しています。

また平成29年度予算にて、もう1隻追加の予定があります。(就役は平成31年頃)

音響観測艦は「音」に関する情報を集めるのを任務としている艦です。

先ほどの海洋観測艦に関する部分でも書きましたが、潜水艦が大きな戦力となる現代海軍において「音」は非常に貴重な要素です。

基本的に動いているものは、何であっても音を発します。
エンジン音、スクリューの水切音など、どれだけ静粛性を上げても、動く以上は音が出るのが宿命です。
そして、エンジンが違えば、あるいはスクリューの形状や枚数が違えば、発する音もそれぞれ変わってきます。

これを指紋ならぬ「音紋」と呼びます。
事前に音紋を採取しておけば、それを作戦行動中の艦がソナーで探知した音と照合して「どの艦に一致するか」を特定する事が可能になります。

この音紋、同一艦であっても微妙に音が違うとされ、データを蓄積すればするほど、より相手を特定できる精度が上がります。

現代の海軍では海洋観測艦のもたらす情報と同じく、音響観測艦が取ってきた「音紋」を如何に多くデータとして蓄えるかも、重要な要素なのです。

 

海洋観測艦、音響観測艦、どちらも任務の都合上、あまり我々が近くでお目にかかることはなく、またどうしても地味な存在です。

しかし観測艦の任務は一度出港すると2~3ヶ月帰ってこないなんてこともザラにあるそうで、とても大変な任務といえます。

護衛艦や潜水艦の行動を陰で支える立役者の観測艦。
その行動無しに、日本の海の安全は成り立たないのです。