戦闘機の脚は細い?

沖縄県・那覇空港でのF-15DJによる前輪脱落事故。

毎日のようにスクランブルで飛び立つ那覇の飛行隊故に、ヒューマンエラーや使用頻度の増加による偶発的トラブルの確立増大など、考えられる要因は色々とありますが、まずは原因究明と再発防止を望みたいところです。

さて、この事故で当該機の写真が出回った際に「戦闘機の脚って、意外と細い」という声が結構ありました。

今回は様々な機体の「脚」、特にノーズギアを見比べて、何故機体によって異なるのかなど、解説していきたいと思います。

空軍機の脚

F-15Jイーグル

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F-2A

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F-16CJ

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空軍機のノーズギアは、機体のサイズと比較しても、かなり細身なものが多いです。

今回、トラブルの起きたイーグルのドライ重量は、およそ13トンで最大離陸重量は、およそ30トン。

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最大離陸重量は、実は機動戦闘車よりも重いのです。

しかし、戦闘機と車両では圧倒的に違う部分があります。
「前後荷重配分」です。

車をお持ちの方は「前軸荷重・後軸荷重」という言葉は一度は聞いたことがあるかと思います。
つまり、どちらの軸に、どれだけ重量が掛かっているかということです。

重心位置からの距離によって、それぞれの軸に掛かってくる重量は大きく変化します。
(当然、重心に近いほうがより大きな荷重を受ける)

戦闘機の重心が、どの辺にあるかというと、機体にもよりますがイーグルの場合

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大体この辺です。何で、そんなことが分かるのかというと、機体にぶら下げている増槽から読み解く事が出来ます。
イーグルを例に取れば、満タンの増槽は3本で7000L近い量になります。
燃料の密度にも左右されますが、おおよそ5.5トンの重量。
イーグルの乾燥重量約13トンと比較すると、どれだけ重荷になるか想像出来るかと思います。そんな重量物が機体そのものの重心から離れて装着されたら?
増槽の有無で機体の重心が前後に著しく変わってしまい、飛行そのものが不安定になります。つまり増槽の中央付近=機体の重心に近いというわけです。

話を本題に戻しまして、戦闘機の場合、重心位置がメインギアに非常に近い=重量負荷の大半はメインギアに加わるということになります。

逆を言えば、ノーズギアには、機体の重量はほとんど掛からないのです。
上のイーグルの写真で、おおよその比率を算出すると80%~MAX90%近い荷重がメインギア側に寄っていると推定されます。

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実際、ノーズギアと比較すると、メインギアはかなりしっかりとした作りです。

これが、戦闘機のノーズギアが機体重量の割りに細くても大丈夫な理由です。

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着陸ではメインギアから必ず接地するので、ノーズギアにはタッチダウンの衝撃はほとんど掛かりませんしね。

なお先の写真を見ると、F-2やF-16の方が、イーグルよりも太いノーズギアを使っているように見えます。
これは推定ですが、機体の全長がイーグルより5m近く短いので、ノーズギアを重心位置から遠くに置きにくい→より大きな荷重が加わるということではないかと。

海軍機の脚

F-4EJ改

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F/A-18 E/F スーパーホーネット

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海軍機や海軍機ベースの機体は、空軍機と比べ極太のノーズギアが付いています。

何故、ここまで太くする必要があるのかというと、カタパルトによる凄まじい加速に耐える必要があるためです。

ニミッツ級空母でスーパーホーネット(25tと仮定)を射出する場合、僅か2秒で250kmを超えるスピードまで加速します。
この際の加速度は約35m/s^2で重力加速度の3.5倍。
エンジンの推力で前に進もうとする力で多少は相殺されますが、それでも機体は27m/s^2の勢いでカタパルトに引っ張られる形になります。

この際に、生じる力は単純計算で675kN。

どれだけ凄いかというと、イーグルのF100エンジンを4発(つまり2機分)同時にアフターバーナー焚いた時の推力にほぼ匹敵します。

僅か2秒ですが、艦載機のノーズギアは、この凄まじい力で前に引っ張られる事に耐えなければなりません。

また着艦は俗に「高度に計算された墜落」などと言われるほど、凄まじい衝撃が機体に加わります。
当然それを受け止める役割が足回りには求められますので、空母での運用を前提とした艦載機では、空軍機とは比較にならないほど強靭かつ衝撃吸収能力を備えた「脚」が要求されます。

空軍機と海軍機では、同じ戦闘機、同じギアでも、求められる役割や仕様が、まるで違うのです。