警察による熊駆除。「特殊銃」という規定の問題の話。
昨今、各地で問題になっている熊の被害。
警察庁でもライフル銃による熊駆除に動き出しましたが、以前から
「警察は銃があるのに何故、熊などを撃たないのか」
という声がありましたが、実際には警察の武器使用規定に基づく問題点がありました。
すでに一部報道などでも触れている話ですが、今回は警察の「特殊銃」とその制限について解説したいと思います。
警察官の武器は基本は拳銃、それ以外は「特殊銃」
警察官はその職務の為に「武器」を携行することが警察法の小型武器の所持という規定に基づき認められていますが、ここで認められている小型武器とは各警察官が個人で携行する拳銃のみが該当します。
いわゆる「お巡りさん」が持つリボルバーではないオート拳銃の配備も警護担当などに多数あり「特殊けん銃」と呼ばれることもあるが、これはあくまで「警察官個人が持つ銃」の範疇
警察官が持つ武器は基本は拳銃であるという大前提が存在する都合、警察組織においては「拳銃」に属さないそれ以外の銃を別に管理する必要があり、これらを総称して「特殊銃」と定義しています。
特殊銃の例として
- サブマシンガン(機関けん銃)
- ライフル銃、狙撃銃
- 自動小銃(アサルトライフル)
などが挙げられます。
ちなみに今回熊駆除のために用いる銃だと豊和工業製・M1500というボルトアクション式ライフルで、これは警察内部においては狙撃銃として使われる「特殊銃1型」と呼ばれるものです。
(蛇足ながら、元々が猟銃としても広く使われるライフル銃なので熊に対しても十分な効果があると思われる)
特殊銃の扱いは拳銃と異なる
警察官は警察法及び警察官職務執行法に基づき、必要と判断した場合は個人の権限でも武器を使用することが出来るとされており、今までにも猪などの大型獣に対して発砲した事例が多数存在します。
(自己若しくは他人に対する防護のための発砲が認められている)
ただしここで定められている「武器の使用」は基本的には拳銃のことであり、拳銃以外の銃=特殊銃については警察官等特殊銃使用及び取扱い規範という国家公安委員会規則に基づいて
- 配備が認められる対象
- 使用することが出来る警察官
- 特殊銃の携行許可の条件
など細かに定められています。
特殊銃を配備できる任務
このうち配備が認められる対象として
一 社会に不安又は恐怖を与える目的で重要な施設を破壊する行為を防止するため、当該施設について、特殊銃を用いて警戒し、警備する任務
二 航空機の強取又は人質による強要に係る犯罪その他高度の対処能力を必要とする犯罪につき、特殊銃を用いて、これを鎮圧し、又はその被疑者を逮捕する任務
三 前二号に掲げるもののほか、凶悪な犯罪を予防し、鎮圧し、又はその被疑者を逮捕する任務であって、その遂行上特殊銃を用いる必要があると警察本部長が認める任務(先述の規範4条より)
第1項はテロ、第2項はハイジャックのことで、また第3項についても凶悪犯罪、例えば銃を持った立てこもり・乱射事件などが該当すると思われます。
つまり特殊銃を配備出来るのは、テロ・ハイジャック・凶悪犯罪などの任務に備えるためであり、またそれらの任務以外に使ってはいけない、というのが規則として定められていたということになります。
まとめ
以上を簡単に要約すると
- 警察が持つライフルは警察官個人が使える拳銃とは異なる規則で運用される「特殊銃」
- これまで「鳥獣駆除」に特殊銃を使えるという規則が存在しなかった
- 今回、この規則を改定することで警察官による熊へのライフル使用が可能になった
自衛隊の活動にも言えることですが「武器」を法の下で使用するというのは、厳格な管理が必要なのです。


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