意外と小さい、ヘリコプターで運べる荷物の『体積・容積』

意外と小さい、ヘリコプターで運べる荷物の『体積・容積』

空路で地形を超えて積み荷を迅速に運ぶことの出来るヘリコプター。

災害時、交通が遮断された地域などへの輸送手段としても大きく活躍します。

さて、ヘリコプターの輸送能力としてよく「何トンの荷物を運べる」「何人が乗れる」という表現が使われますが、荷物を運ぶ上では「体積・容積」も重要な要素になります。

必ずしも運ぶ荷物が密度が高いものとは限らず、例えば紙製品や衣類など密度が低く軽い荷は「何立方メートル積めるか」の方が重要になるためです。

今回は代表的な機種を参考として、ヘリコプターの輸送能力を「体積」で解説します。

UH-60は2トン車と同程度

西側各国の代表的なヘリコプターの1つであるUH-60ヘリコプター。

自衛隊でも陸上自衛隊がUH-60JAとして採用している他、救難仕様のUH-60Jも活躍しています。

米陸軍型のUH-60Lを参考にすると、貨物の最大積載量は約4000kgとなっていますが、では体積はどうか。

(TECHNICAL MANUAL 1-1520-237-10より引用)

こちらはUH-60Lヘリコプターのフライトマニュアルに記載されているキャビン断面図ですが機体のアーチ状に膨らんだ部分を使わず、フラットな床のみと考えると縦は151インチ(約3.8m)、横幅が72インチ(約1.8m)となります。
天井高さは、天井の突起部を考えると52インチ(約1.3m)。

これを単純に体積として考えると、およそ9立方メートルとなります。
(実際には出っ張っている部分などがあるので、これよりも小さい)

一見、大きな容積に見えますが身近な乗り物であるハイエースなどの貨物用ワンボックス車と比較してみましょう。

ハイエース(200系・標準ボディ)は後部座席を畳むと荷室長が長いところで3m、幅が1.52m、高さが1.32m。

ハイエースとの比較だと長さと幅は少しUH-60の方が大きいですが、ではよく街中で見かける2トントラックではどうか。

 

 UH-60ハイエース
(200系標準)
2トン車
(ショート)
3.8m3m3.0m
1.8m1.5m1.7m
高さ1.3m1.3m1.7m
体積約9㎥5.8㎥約8.6㎥

 

UH-60、ハイエース、2トン(ショート)を比較するとこうなります。

実はUH-60の積載体積は、2トントラックのショートとほぼ変わらないのです。

なお2トントラックには更に荷台が長いロング車などもあるので、此方と比較すると2トントラックに圧倒的な分があります。

また上記のキャビン体積はパイロット2名以外の積載スペースを全て荷物にした場合なので、実際には他の乗員が乗り込むと更に荷室として使える体積は減少します。加えて、積込の際にはドアの横幅68インチ(約1.7m)の制約を受けるため、極端に長尺や幅を取る荷物の積載にも限度があります。

なので実質、UH-60が運べる荷物の実用的な体積はハイエースよりも一回り大きい程度と考えてよいかもしれません。

 

なお、自衛隊の代表的なヘリコプターであるUH-1ですが、此方は自衛隊機なので直接の資料を見つけることが出来ませんでしたが、現在自衛隊が採用を進めているUH-2のベース機であるベル412EPXの資料で

Cabin volume 6.2㎥

(https://aerospace.subaru.co.jp/412epx/en/spec.html)

の記載が確認できました。

UH-1も機体サイズはほぼ同じと考えると、キャビンの体積は大体同じ6立方メートルほどと思われます。

その他、確認できたヘリコプターでは官公庁が大型ヘリとして採用しているEC225(AS332)シュペルピューマで547立法フィート=約15.5立法メートルでした。

これでやっと2トンロングトラックの容量を一回り超えるくらいとなります。

最大10トン運べるチヌークの容積は

「運搬」といえば、とても頼りになるのがCH-47チヌーク。

タンデムローターで荷室を非常に長く取ることが可能で、その長さは9.3mにもなり、カタログスペック上の最大積載量は10トン。

高機動車など、車両も機内に入れて運ぶことの出来るチヌークは「キャリアー」のコールサイン通り、まさに頼れる運び屋です。

では、そんなチヌークの体積はどうなのか。

チヌークは西側軍隊の標準規格である463Lパレットを3枚積むことが出来るので、これに荷室の高さを掛けたものを実用的な搭載量と考えます。

463Lパレットのサイズは長さ108インチ(2.74m)、横幅が88インチ(2.23m)。
キャビン天井高は約2mありますがパレット自体の厚みと、天井付近は丸みのある形状になるため有効高さを約1.8mと仮定すると、キャビンの体積はパレット1枚で約11立方メートル、3枚で33立方メートルとなります。

4トントラックの箱車が、長さ6~6.5m前後で幅2.2m、高さ2.3mと言われるので約30立方メートル前後。

なのでCH-47チヌークを以てしても、一度に運べる体積は4トントラック1台分と同程度となります。

なおスリング輸送、すなわち機体の外にぶら下げる形での輸送方法もありますが、この場合は機体の挙動を荷物が揺れないように抑える必要があります。
長距離をスリングで輸送するのは、あまり現実的ではありません。

重量も必ずしも目一杯は積めない

体積ではトラックに全く敵わない一方、運べる重量では分があるヘリコプターですが、この「重量」も実際には大きな制約があります。

ヘリコプターに限らず航空機は機体の重量+搭載する人・荷物の重量に加えて「燃料」が大きなウエイトを占めます。

そして飛行の際には最大離陸重量が決められており、この値を超えて飛び立つことが出来ません。

チヌークの場合、自重が約11トンに対して最大離陸重量が22.5トンほど。
10トン荷物が積める、とは言っても実は10トンの荷を積んでしまうと燃料がほとんど入れられないのです。

燃料タンクが拡張されたCH-47JAの場合、最大燃料搭載量は8000L。満タンに入れると比重0.8として燃料の重さが6.4トンになります。

仮に10トン目一杯に荷物を積んだ場合、最大離陸重量まで残り約1トンとすると燃料は満タンの2割も入れることが出来ないことになります。

逆に燃料を満タンにしたいのであれば、残りの重量はおよそ5トン。
この範囲内の荷物に抑えないと、離陸すら出来ないと言うことです。

 

荷物の大量輸送に空路は不向き

この通りヘリコプターによる荷物の輸送は、速さと地形の制約を受けないというメリットがある反面、体積・重量共に大きな制限があります。

また航空機は飛行時間”1時間”に対して整備が何時間という単位になるくらい、とにかく運用にも手間が掛かる乗り物です。

道が塞がっている、そもそも車両が立ち入れないという状況ではヘリコプターの輸送能力が頼りになりますが、反面道が通れる状況であればトラックなど陸路による輸送が圧倒的に有利であると言えるのです。

参考:オスプレイは・・・?

大きな災害が起きると度々話題になるオスプレイ。

オスプレイの搭載可能な体積は先ほどのCH-47チヌークが3枚積むことの出来るパレットを「1枚分」が規定搭載量となります。
(正確には1枚を更に半分にしたハーフパレットという形式で2枚)

更に有効な天井高さも1.5m程度と若干低いようなので、CH-47と比較すると1/3未満。
おおよそUH-60のそれに近いくらいの値になります。

オスプレイは高速飛行性能と進出距離=足の長さが強みの機体ですが、一方で性能を割り切っている部分があり純粋な輸送用途としてはヘリコプターよりも劣ると言えます。

参考資料

  • 世界の名機シリーズ CH-47チヌーク/UH-60ブラックホーク
  • Bell Boing V-22オスプレイポケットガイド
  • アクセスジャパン株式会社 トラック積載量について
    https://www.acj2002.co.jp/blog/2020/12/21/truckcapacity/