名前も見た目も似てるけど、まるで別物な軍用機

名前も見た目も似てるけど、まるで別物な軍用機

軍用機の型式は、基本的に同じシリーズの機種には同じ型式名が与えられます。

しかし中には名前も見た目もそっくりだけど、実は全くの別物という機体も。

今回は、そんな「中身だけまるで別物」な軍用機をいくつか紹介していきます。


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UH-1シリーズ

軍用ヘリの定番ともいえるほど各国でよく使われるUH-1ヘリコプター。

日本国内ではUH-1J(陸上自衛隊)、UH-1N(アメリカ空軍)、UH-1Y(アメリカ海兵隊)の3機種が飛んでいますが、それぞれ全くといっていいほど違う機体になっています。

特にアメリカ海兵隊のUH-1Yヴェノムは、陸自のUH-1Jと比較すると全くの別機体といってもいい代物です。

ローターが2枚→4枚という違いに留まらず、エンジンはUH-1JがT53エンジン単発に対してT-700エンジンの双発仕様に。

T-700エンジンはUH-60系列に使用されているエンジンでもあるので、UH-1Yヴェノムは最早「外見と名前がUH-1のブラックホーク」と言ってもいいくらいです。

AH-1SとAH-1Z

陸上自衛隊で使用するAH-1Sコブラと、アメリカ海兵隊が使用するAH-1Zヴァイパー。

共にAH-1という型式名を冠していますが、これも中身はまるで別物です。

エンジンについては先のUH-1Yヴェノムと同様、GE社のT700エンジンを双発で搭載。対して陸自のAH-1SはT53エンジンの単発です。

また陸自のAH-1Sの主武装が照準線一致誘導方式のTOW対戦車ミサイルであるのに対して、AH-1Zは目標標準システムや各種電子兵装によりAGM-114ヘルファイアミサイルが主武装となっています。

最早、コブラというよりはAH-64アパッチに近い機体と言えます。

なおAH-1ZはAH-1Wの後継機・改修型とされていますが
「AH-1Wの部品はコクピット周りにしか残ってない」
とまで言われます(機体の全部品のうち95%が新設計)

しかし、これでも「AH-1」という名前を受け継ぐのですから面白いものです。

F/A-18

アメリカ海軍及び海兵隊で艦載戦闘機として運用されるF/A-18。

レガシーホーネット=レガホと呼ばれるF/A-18A/B/C/Dとスーパーホーネットまたはライノと呼ばれるF/A-18E/Fがありますが、これも似ているようで別物と言える代物です。

スーパーホーネットはレガシーの「発展型」とされていますが、では実際にどのような「発展」がなされたのかというと

  • 機体全体の約20%の大型化
  • 胴体は2ft10in(約85cm)延長
  • 全幅は4ft3.5in(約3.1m)拡大
  • 主翼面積25%拡大
  • 垂直尾翼、水平尾翼の面積拡大
  • エアインテーク形状変更

更に大型化した機体を支えるために、エンジンはF404からF414エンジンへ換装。操縦システムもデジタルFBWへ変更されています。

参考までに航空自衛隊のF-2戦闘機はベースとなったF-16と比較して胴体は50cm延長、幅が1mほど大型になっています。
レガシーホーネットとスーパーホーネットは、F-2とF-16の違いよりも更に大きな変更が加えられていますが、あくまでも「発展型」なのです。

何故「改良」や
「発展」にこだわる?

ここまで別物の機体なのだから、いっそ別物として「新型機」にすれば良いのではないかとも思います。

しかしF/A-18の例を見ると、F-14トムキャットの後継機として開発が始まったのが1990年代前半のこと。
時は冷戦が終結し軍事予算に厳しい目線が向けられていた時代。
「新型機」の開発は政府・議会を説得させることが難しいとされたため「あくまでも既存の機体をアップデートする」ということで計画を進めたようです。

恐らく多かれ少なかれ、他の機体についても似たような事情があるのではないだろうかと思います。

※参考資料

  • 世界の名機シリーズ F/A-18(イカロス出版)
  • 世界の名機シリーズAH-1(イカロス出版)
  • F-2の科学(著:青木謙知)