【雑学】航空自衛隊の「保存指定機」とは

【雑学】航空自衛隊の「保存指定機」とは

先日引退したF-4EJ/EJ改ファントムを含め、航空自衛隊には数々の退役した機体が存在します。

退役後の機体は残念ながら多くがスクラップとして解体されていきますが、一部はゲートガードとして基地に飾られたり、博物館に貸与されたりと余生を過ごすことになります。

その中でも航空自衛隊には「保存指定」という制度があります。

今回は航空自衛隊の「保存指定機」の制度について解説してきます。


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保存指定装備品

この制度は「航空自衛隊における装備品等の保存業務に関する達」として指定されているのもので、ざっくり解説すると航空自衛隊において保存する価値のある装備品等を「保存指定装備品」として管理するためのもの。
(以下、引用は断り無い限り同達から)

対象となるのは

(1)航空機
(2)誘導武器
(3)航空警戒管制用器材
(4)弾薬(航空機搭載用ミサイル等を含む。)
(5)武器
(6)個人被服(制服、帽子、階級章、航空服、航空ヘルメット等)
(7)その他

また保存指定に該当するか否かは

(1)実物を見て容易に空自を印象付けることができ、かつ、象徴するもの
(2)航空防衛力の中枢として、空自の任務遂行に貢献してきたもの
(3)空自の変遷を示す上で特に重要なもの
(4)空自の防衛装備史上、特に技術的価値の高いもの

という基準に従い、決定されるものとしています。

なお、この保存指定の制度ですが1998年に制定されており、その翌年の1999年に浜松基地にある浜松広報館がオープンしています。

なので浜松広報館で保存・展示される装備品を「航空自衛隊の業務」として管理するための制度という側面もあったのかもしれません。

必ずしも実機が保管されるわけではない

保存指定装備としての指定を受けた場合

保存指定装備品等は、その本来の用途について再使用しないものとし、原則としてその構成品は運用時の形態で保存する。

として、原則として運用時の形態を保ったまま保存されるものとされていますが、同時に

保存指定装備品等の中で、大型装備品等(大型航空機、警戒管制用器材、大型車両搭載装備品等)は、第15条の規定に基づく通知により、その構成品の一部又は写真等をもって保存に代えることができるものとする。

という規定も存在します。

即ち丸ごと保管するには大きすぎるものは、その中から一部だけを取り出して保管したり、また写真などを資料として残すことでこれに変えることが出来るということです。

恐らくですが、B747型の政府専用機が退役するのに伴い、機体そのものは海外へ売却されたものの貴賓室のみが小松・浜松に展示されているのが、これに該当する事例かと思われます。

なお保存指定装備品は原則として2組が基準とされています。
但し、先述した通りこの制度が出来たのが1998年の事であり、それ以前に退役した装備品で既に2組残ってない場合など、必ずしも2組が保存されているというわけではないようです。

実際に存在する保存指定機

保存指定機はあくまでも「保存」を目的とした制度のため、必ずしも一般に公開されているとは限りません。

例えば岐阜・各務原の航空宇宙博物館に展示されてるT-2CCVは、長年岐阜基地内の格納庫で保管されており、時折航空祭で展示されることがあるという状態だったものが、博物館側に「貸与」という形で常に見れるようになったものです。

ただし先述した通り、浜松広報館のオープンに合わせて制定された制度のためか、保存指定を受けている機体の多くは同広報館内に展示されているようです。

推定ですが今年から浜松で展示されることになったF-4EJ改・440号機なども保存指定機になったのではないかと思われます。

機会があればどの機体が保存指定となっているのか、調べてみたいと思います。