空自のヘリパイロット訓練生が人生で最初に乗るヘリは『UH-60J』
陸海空それぞれに配備されている多種多様なヘリコプター。
そのパイロットを育成する為に、陸上自衛隊ではTH-480B、海上自衛隊ではTH-135をそれぞれ練習回転翼機として導入していますが、航空自衛隊には『TH』を冠するヘリコプターが存在しません。
空自さんのヘリパイロットはどうやって訓練を受けていくのか解説していきます。
海と空のヘリパイロット育成の違い
陸上自衛隊はヘリがメインで、逆に固定翼(LR-2)のパイロットが特殊な事例なので今回は割愛するとして、海上自衛隊と航空自衛隊ではヘリパイロットの育成カリキュラムに違いがあります。
まず海上自衛隊ですが、パイロット訓練生となると練習機T-5による操縦士基礎共通課程へ。
操縦士基礎共通課程を終えた段階で、回転翼・固定翼・戦術航空士の何れかへ振り分けられた後、ヘイパイロットは引き続き固定翼のT-5で操縦士基礎課程(回転翼)の訓練に臨み、それを終えた時点でTH-135による回転翼基礎課程に入ります。
対して航空自衛隊は一番最初の訓練としてT-7による初級操縦課程、その後「戦闘機」と「輸送機・救難」の2種類のコースに分かれます。
ヘリパイロットは「輸送機・救難」に属して、T-7の後は美保基地でビジネスジェット機をベースとしたT-400による基礎操縦課程。
このT-400の訓練を終えた時点で、ヘリパイロットとしてのコースに振り分けられることになります。
海自は初等訓練を終えた時点でヘリパイロットと固定翼が分けられますが、空自はその1つ先の基礎操縦課程を終えたところで、初めてヘリパイロットとしての訓練コースに入るわけです。
航空自衛隊の『練習回転翼機』
T-400による訓練を終えた空自のヘリパイロット訓練生、人生で初めてヘリコプターの操縦桿を握ることになりますが、先ほども書いた通り航空自衛隊に『練習機』のヘリコプターは存在しません。
その為、救難操縦課程に配属された訓練生は、いきなり
この救難ヘリコプターUH-60Jに搭乗して訓練を受けることになります。
UH-60Jのエンジンは約1800馬力を誇るT700の双発、3600馬力。
対して海上自衛隊の練習機TH-135は580馬力の双発で1060馬力、陸上自衛隊のTH-480は単発420馬力。
海上自衛隊の練習機と比較して3倍以上、陸上自衛隊の練習機と比較して8倍以上という、文字通りの「桁違い」なヘリコプターが人生で初めて操縦するヘリコプターになるわけです。
けど意外と難しくはない?
そんな桁違いのヘリコプターで訓練をする未来のパイロット候補生、さぞかし難しいのかと思いきや、決してそうとも限らないという話も聞きます。
救難仕様のUH-60にはキャビンに乗り込む機上整備員がホバリング時の操縦を一時的に担当するクルーホバーという機能が付いていますが、これを可能にしているのがUH-60の優秀なAFCS(Automatic Flight Control System)、即ち自動制御。
UH-60はその機体の大きさや出力の割りに、優秀な自動制御を搭載しているため、イメージに反して扱いやすい機体なのだそうです。
また基礎操縦課程で操縦していたT-400はビジネスジェット機ベースの機体で、エンジンも高出力のJT15Dを搭載している為「高出力のタービン」という点で見れば、訓練課程で既に十分扱った経験があると言えるでしょう。
チヌークのパイロットは?
航空自衛隊のヘリコプターとしてはUH-60Jの他にCH-47Jチヌークがありますが、チヌークのパイロットはどのようにして教育を受けるのか。
此方は、操縦訓練の課程が『機種転換課程』、即ち他の機種のパイロットが別機種の資格を取得する形の訓練課程のみが置かれています。
なのでチヌークのパイロットでも、いきなりチヌークで訓練を受けるということはありません。
航空自衛隊にはUH-60JとCH-47Jの2機種しかありませんので、CH-47Jの訓練を受ける「別機種のヘリパイロット」は必然的にUH-60Jのパイロットということになります。
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