潜水艦の母港である神奈川県の横須賀や、広島県の呉。

これらの町では「独特な匂いの人達が戻ってきたら、潜水艦が帰ってきたと分かる」という噂話をしばしば耳にします。

海に潜む潜水艦、実は「匂い」との戦いが切っても切り離せない辛い事情があるのです。

換気が常に出来ない構造

どれだけ清潔にしていても人間が生活すれば匂いは発生しますし、ましてや潜水艦は60~70名程の男所帯。
さらに潜水艦は艦内に発電用のエンジンも積んでいるため、その油脂や燃料の匂いも艦内に漂います。
さらに艦内は蒸し暑く匂いが発生しやすい悪条件となっています。

皆さんは室内で「少し臭いがするな」「空気が汚れてるな」と感じたらどうするでしょうか。
一番手っ取り早いのは「窓を開ける」「換気扇を動かす」、即ち外の空気を取り入れる「換気」でしょう。

しかし、潜水艦では換気をしようと思っても、そうはいきません。
潜航中の潜水艦は四方八方を海水に囲まれているので、空気を取り入れることは出来ないのです。

潜水艦が唯一換気できるタイミングが、浮上または「スノーケル(シュノーケル)」と言われる換気用の筒だけを水面に突き出した状態です。
(この際に発電用のエンジンを回すことで、潜航時の動力源であるバッテリーへの充電も行います)

ただし海に潜むことで隠密性を確保する潜水艦も浮上していれば非常に脆弱な存在。スノーケルであっても潜航時と比較して危険な状態であることに変わりはありません。

その為、ゆっくりと換気するというわけにもいかず、どうしても空気は汚れがちになるのです。

排水タンクの匂いが逆流

潜水艦の匂い事情を一層過酷にしているのが「サニタリータンク」という存在です。

潜水艦に乗り込むのは海上自衛隊の場合およそ60~70人、それだけの人間が艦内で暮らす訳なので、食事・シャワー(海自の潜水艦にお風呂はありません)・トイレなど、どうしても生活で生じる「排水」が溜まります。

この排水を溜めておく為のタンクのことをサニタリータンクと呼ぶのですが、当然毎日のように水が流れてくるので一定期間経つと満タンに。
満タンになったタンクから水を排水するにも周りは海水、その水圧に負けないように高圧空気で押し出してやる必要があるのです。

しかし高圧空気で押し出したサニタリータンク内は、排水が終わった後にも圧力が残ってしまいます。
この残った圧力を抜かない限り、トイレの水を流すことすら出来ません。

では、その圧力を何処に抜くか・・・

潜水艦の構造上

艦内

に抜くしかないのです。

つまり下水道のような匂いが艦内に入ってくる。

当然、なるべく早く換気を行うそうですが、その匂いはなかなか強烈で染み付いて離れないようです。
そして航海期間中、排水でサニタリータンクが溜まるたびにこれが繰り返されることになります。

高圧空気ではなくポンプで加圧して排水する方法もありますが、排水に時間が掛かる=駆動音を出すポンプを長時間回すのは音を出す事を嫌う潜水艦には好ましくない、ということで常に使えるというわけでもないそうです。

ただし最近では消臭などの技術で昔と比べると改善されつつあるという話も聞きます。
今後は女性の乗艦も検討されているという潜水艦、艦内の快適さ向上も今後は課題なのかもしれません。