【雑学】ガトリング・チェーンガン・バルカン、何が違うの?

【雑学】ガトリング・チェーンガン・バルカン、何が違うの?

航空機や車両に搭載され、手持ちの小火器とは比較にならないほどの威力を誇る機関砲・機銃。

ガトリング、チェーンガンなど色々な呼び方がありますが、どれがどれなのか混同していることも珍しくありません。

今回はこれらを、解説していこうと思います。


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ガトリングは
複数銃身が
丸く並んでいる

ガトリングは航空機搭載の機関砲として広く使用されていますが、複数の銃身を円形に配置しているのが特徴です。

銃を連続で発射するには、弾を込める装填、射撃、射撃後に残る薬莢の排出、そして次の弾を込める再装填、このような流れが必要になります。
(薬莢:銃弾を打ち出すための火薬と、それを発火させる雷管、そして銃弾本体を保持するケース。射撃後は空の容器として銃身内に残る)

20mmや30mmといった大きさの機関砲でも、薬莢というのが必要なのです。

その為、1つの銃身で射撃速度を向上させるというのは自ずと限界が生じます。

ならば、複数の銃身をズラッと並べて代わる代わる発射すれば射撃速度が上がるのではないか?
縦や横に並べるより円形に並べて銃身の束として回転させれば効率的なのでは?
というのがガトリングの発想なのです。

織田信長は長篠の戦いで装填に時間の掛かる火縄銃を3人で交代しながら代わる代わる撃たせて射撃速度を向上させた、鉄砲の3段撃ちという逸話がありますが、発想としてはこれと同じと言えます。
(実際には3段撃ちは存在しなかったとも言われておりますが)

なお銃身の束を回転させるには何らかの外部動力が必要になります。
最も初期のガトリングは人間がハンドルで回していましたが、現在では電動や油圧が主流です。

ガトリングの種類

ガトリングというのは「円形に並べた銃身を、外部動力で回す」方式の総称の為、一口にガトリングといってもかなり種類があります。

もっとも巨大なものはA-10攻撃機に採用されているGAU-8アヴェンジャー。
30mmの弾を1秒間に数十発撃ち込む、世界でも最大のガトリングです。

なお、これより一回り小さいものでGAU-12という25mmのガトリングも存在します。F-35戦闘機に搭載される25mm砲は、このGAU-12の派生型であるGAU-22です。

知名度でいうと、最も有名であろうガトリングが航空自衛隊の戦闘機にも搭載されている20mmを使用するM61バルカン。

バルカン・バルカン砲というのは、実はこれの名前なのです。

バルカンは、航空機搭載用のみならずVADS(対空機関砲)や、護衛艦の近接防御用CIWSなどにも採用されており、ガトリングの中でもベストセラーと言える機関砲です。
故に、バルカンという名前がガトリングそのものと混同されるのかもしれません。

口径で最も小さいのは、小火器用の7.62mm弾を用いるM134ミニガン。
銃単体での重さは18kgながら、M61の約92kgと比較すると圧倒的に小型・軽量であることから「ミニガン」なのです。

銃身の数で最も少ないのはAH-1コブラに搭載されているM197の3本、これはM61バルカンの派生型にあたります。
(7/30 ご指摘により修正)

銃身が多いとそれだけ発射速度を向上出来る反面、重量や反動の増加が避けられない為、コンパクト化しているのです。

このように一口にガトリングといっても、口径は小火器サイズの7.62mm~最大で30mm。銃身の数も3本から7本まで、様々な種類がありますが、これらは全て「ガトリング」に分類されます。

チェーンガン

対するチェーンガンは、ガトリングのように複数の銃身があるわけではなく、外見は通常の機関銃・機関砲と大差ありません。

先ほども書いたとおり銃火器が自動で連続射撃するには装填→射撃→排出→再装填の手順が必要になりますが、射撃の際に何らかの理由で不発となった弾があると次の排出に必要な動力が確保出来ずに、いわゆる「詰まった」状態になってしまいます。

この際、通常の銃火器であればレバーを手動で動かす事で強引に排出→再装填を行うことが出来るのですが、航空機に装着されている機銃の場合にはパイロットが外に出てレバーを操作するというわけにもいきません。
しかし弾詰まりをそのままにしてしまうと、それ以降の射撃を行うことも出来ずに作戦に支障を来たします。

そこで「外部の動力で強引に装填と排出を行う」というのがチェーンガンです。
この方式であれば仮に不発の弾が銃身内に残っても、自動で排出することが出来ます。

日本では陸上自衛隊の戦闘ヘリAH-64DアパッチにM230機関砲が搭載されている他、海上保安庁の一部艦艇でブッシュマスター機関砲を採用しています。