何故F-35を105機買うのか。F-35購入に関する情報の整理。

何故F-35を105機買うのか。F-35購入に関する情報の整理。

トランプ大統領の来日に伴い、F-35戦闘機を日本が105機買うという話が再び注目を集めています。

この問題、以前から賛成派・反対派共に一部情報が錯綜しているため、これを機にF-35を何故105機買うのか、それは誰が決めたことなのかという情報を整理してみたいと思います。


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第4次F-X

日本で最初にF-35の調達が決定されたのは、民主党政権時代の2011年12月、老朽化して寿命を迎えるF-4EJ改戦闘機の後継機を選定するための『第4次F-X計画』での調達でした。

第4次F-Xでは現存するF-4EJ改の2個飛行隊(301・302飛行隊)をF-35Aで更新する為に42機を調達するというもので、その他の調達分については一切触れられていません。

F-35Aの調達を決めたのは民主党政権だ、という論調も目立ちますが、この時点で決められたのは

『F-4EJ改の更新分でF-35Aを42機』

であって、今回話題となっている105機の調達には何ら関係の無い話というのは抑えておく必要があります。

もっとも日本の次期主力戦闘機としてF-35を選んだという事実は変わりませんが。

F-15Jの更新

そして話題となっている105機のF-35調達は第4次F-X計画とは別の『F-15J戦闘機の更新計画』です。

航空自衛隊の主力要撃機として活躍しているF-15Jですが、全調達数のうちのおよそ半分にあたる機体が『Pre-MSIP』と呼ばれる旧型の機体です。
(以下、Pre-MSIPのF-15をF-15SJと記述)

 

近年ではレーダーなどの電子機器類が目覚しい進歩を遂げており、航空戦では電子機器の優劣が勝敗を決するといっても過言ではありません。
しかし旧型のF-15SJは約50年前の設計思想に基づいた能力しか有しておらず、更に構造上の問題から搭載機器をアップデートさせることが非常に困難で、改修できたとしても膨大な予算を必要とします。

F-15SJの問題点については一部内容重複しますが、上記の記事も参考に

今回、購入すると言っている105機のF-35は

『改修するのが難しい旧型のF-15Jを、改修せずに新しい機体へ買い換える』

ということなのです。

そして、ここでも情報が錯綜しているのですが、今回のF-15J更新は

『寿命を迎える老朽化した機体の買い替え』

ではなく

『性能が陳腐化して改修にも高額な費用を要する機体の買い替え』

だということを抑えておく必要があります。

例えるなら

手持ちのパソコンがサポートの切れるOSを搭載している。
OSを更新することも出来るが、それにはパソコンを大幅に改造する必要がある。
ならばいっそのこと新しいOS積んだパソコンに買い換える。

といった感じです。

F-15という戦闘機は凄まじく頑丈な機体構造を有しています。
米軍のF-15C/Dを見れば当初8000時間の寿命を想定していましたが、非破壊検査や延命措置を組み合わせれば2倍以上の18000時間まで飛べるのではないかとも言われているほどです。
当然、F-15C/Dを元に作られているF-15SJについても、同等の寿命が機体出来るでしょう。

現在までに寿命に達した機体は無い、そして寿命が今までの2倍に増やせるということは旧式機といってもF-15SJは戦闘機としてはまだまだ使えるのです。

そんなまだまだ使える機体を買い替えるのは性能の陳腐化と、それを改善する為の費用が莫大になるという点からの決定なのです。

F-35調達の問題点

筆者はF-35という機体の調達には概ね賛成です。

日本は広大な領海・領空を有する島国である一方、配備できる戦闘機の数には限りがあり、1機当たりに求められる役割が大きい以上、高額でも最新鋭の高い戦力を有する戦闘機を購入するべきです。

そして日本が現実的に購入可能な最新鋭の第5世代の戦闘機はF-35以外の選択肢がありませんし、今後の日本の安全保障を考える上で同盟国や利害を共有する国家との装備の統一は非常に有意義であると考える為です。

また欠陥機という論調もありますが、F-35は間もなく総飛行時間が20万時間に達しようとしており、世界中で着実に実績を積み重ねています。
これを『欠陥機』と称するのは難しいのではないでしょうか。

では、筆者の考えるF-35調達の問題点は何かと言うと

『政府の説明不足』
『十分な選考プロセスを経ていない』

というところです。

最初に書いた通り、第4次F-X計画はF-4EJ改を更新する為の計画であり、F-15SJの更新は対象となっていません。
よって第4次F-XでF-35を次期主力戦闘機と決めたからといって、それをそのままF-15SJの更新分に適用するというのは、いささか強引というものでしょう。

仮にF-35しか選択肢があり得ないという結論ありきであっても、国家予算で高額の支出を行う以上

『このような選考を行ったので、この機体を購入する』

という説明は当然政府に求められ、現状では政府はその説明責任を果たしておらず、これこそが指摘すべき問題点であると筆者は考えています。

そして政府にしっかりと説明責任を果たさせる為にも、『欠陥機』や『爆買い』といった客観的事実に欠ける感情的な批判は避けるべきだと思うのです。

※参考資料

  • 各年度防衛白書
  • 各年度防衛省予算
  • ツウになるF-35完全教本(著:青木謙知)
  • 日本のステルス機F-35ライトニングⅡ(イカロス出版)