壱岐空港で無人機「ガーディアン」の実証実験が行われ、大きな注目を集めています。

今後も無人機の技術はますます発展していくと思われ、特に偵察・監視などの分野では期待される分野ではありますが、ではSFなどに出てくる「無人戦闘機」は将来的に生まれるのか?

技術的なハードルについては知識が乏しいですが、筆者は将来に亘っても『有人戦闘機』が無くなることはないと考えます。

その理由について解説していきます。

領空侵犯措置は
警察権行使

日本に限らず各国空軍の戦闘機には「領空侵犯措置」の任務が与えられますが、戦闘機は飛ばすものの、その任務は「警察権」に属します。

不審者がいるのでパトカーで警察官が確認に向かう、不審船が日本の公海上に現れた際に海の警察・海上保安庁が動くのと同じ理屈です。
空の場合、特殊性が高すぎて独自の組織を持つのは難しいことから、空軍がその任務を担っています。

即ち、領空侵犯措置に向かう機体を無人機にするというのは
「銃を持ったロボットの警察官が110番通報で駆けつける」
と同じ状態です。

さて、自衛隊が「警察権」として活動するケースは、領空侵犯措置の他に海上警備行動や治安出動が発令された場合があります。

そして、その際に武器使用の根拠となるのは「警察官職務執行法」です。

警察官の武器使用基準

警察官は拳銃の携帯、また必要な際にそれを使用することが認められていますが、どのような時に拳銃を使うことが出来るかは法律により定められています。

警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。
(警察官職務執行法第7条)

「人に危害を加える」、即ち相手が負傷・死亡するのを承知の上で発砲が許されるのは

  • 緊急避難か正当防衛に値する場合
  • 凶悪犯罪者等を逮捕、逃亡を防ぐため、他に手段が無い場合
  • 逮捕状により逮捕する際に被疑者が抵抗して、他に抑える手段が無い場合

などが該当します。

また、これらにおいては『警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合』という一文が法律に書かれています。

つまり『拳銃を使うのはやむを得ないと、現場の警察官が判断した場合』ということです。

武器を使って良いかどうかは『最後は人が判断する』というのが大原則なのです。

領空侵犯措置の場合

領空侵犯措置に向かう自衛隊機においては、どのタイミングで武器を使用して良いかは明文化されていません。

あくまでも「必要な措置を講じることが出来る」という内容で、国会答弁においてもこれ以上の内容には踏み込まれていないのが現状です。

一方で、仮に日本国への明確な攻撃意思を持った航空機が領空内に入った場合、悠長に判断する時間はありません。

領空12海里を超えた亜音速の機体が海岸線に到達するまで、時速1000kmとしたら僅かに80秒です。

相手には明確な攻撃の意図が見える、警告は行ったが反応が無いetc…

僅かな時間で何を根拠に「武器」を使うか否か考えなくてはいけません。

そして戦闘機パイロットは基本的に幹部・士官であり、国家元首の代行者とされます。
「正当な教育を受けて国家の指揮下にある人間が、現場で自らの眼で見て判断した」というのは国として正当性を主張する上で欠かせない要素なのです。

また緊急避難や正当防衛を適用して相手を攻撃する場合、これらにおいては「釣り合い」が求められます。
こちら側が無人戦闘機を遠隔制御していて、相手が有人機で入ってきた場合。
「無人機を破壊されると判断したので、相手を撃ち落して殺した」
となると「物」を壊されるのに対して「人命」を奪う行為となるわけですが、これは釣り合いが取れているとは言えず、攻撃の正当性を主張しても国際世論を味方に付けられない可能性があります。

以上をまとめると

  • 領空侵犯措置は警察権に基づく行為であり、対応する戦闘機は警察としての任務を帯びる。
  • 警察権に基づく武器の使用は「現場での人間の判断」が大原則。
  • 戦闘機パイロットは士官として国家元首の代行者たる地位にある。
  • 緊急避難や正当防衛に基づく武器の使用は「過剰」にならないことが求められるので、無人機が有人機を撃墜すると問題になりかねない

空軍の任務として「領空侵犯措置」がある限り、技術的に可能でも戦闘機が無人化されるということはないと筆者は考えます。

戦争を起こすのも防ぐのも「人」であり、国の槍の切先として最前線に立つ戦闘機には「人」が不可欠なのです。

※参考資料

  • 各年度防衛白書
  • 自衛隊法、警察官職務執行法など関係法令