入間航空祭、全飛行航空機ガイド・ブルーだけじゃ勿体ない!

入間航空祭、全飛行航空機ガイド・ブルーだけじゃ勿体ない!

秋の航空祭シーズンがやってきて各地が賑わっておりますが、筆者の住んでいる関東・首都圏だと、やはり最も注目を浴びるのは「入間基地航空祭」。

航空基地というと、どうしてもアクセスが不便なところにありますが、入間基地は基地そのものが住宅街にあり地元住民も多く訪れる事、また都心から西武鉄道でダイレクトアクセス可能な点などから、非常に高い人気を誇っています。

あまりに人が多いので「入間」じゃなくて「人間航空祭」と揶揄されるほど。

入間基地の航空祭は「都心から一番近くでブルーインパルスが見れる航空祭!」と紹介されることが多く実際その通りなのですが、入間の魅力はブルーインパルスだけではありません。

今回は入間基地航空祭の魅力を解説していきます。


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入間基地って?

入間基地は埼玉県狭山市及び入間市にまたがって存在する航空自衛隊の飛行場で、陸軍航空士官学校・豊岡飛行場をそのルーツとしています。
そのため基地内には航空士官学校「修武台」の名を残す資料展示施設なども残っており、こちらは航空祭の時以外でも見学が可能な時があります。

航空自衛隊発足当時、昭和30年代までは戦闘機部隊も常駐していましたが、現在は輸送機・支援機などを中心とした部隊が配置されています。
また中部空域を担当する中部航空方面隊司令部や航空総隊直轄の航空救難団司令部が設置されており前線基地というよりも後方の司令所としての性格が強い基地です。

入間航空祭で見れる部隊

先ほども書いたとおり戦闘機は常駐していないので、その飛行展示はありません。
(2015年に他基地のF-15Jが機動飛行をする計画がありましたが、地元への配慮等で中止となりました)

しかし戦闘機は見れなくても、各部隊が見ごたえのある飛行展示を披露してくれます。

中部航空方面隊
司令部支援飛行隊
(シルバーインパルス)
T-4

例年、オープニングフライトを飾るのが司令部支援飛行隊のT-4です。
(2016年はT-4単機がオープニングフライト、その後は救難団の飛行)

司令部支援飛行隊はパイロット資格を持ちながら人事異動等で飛行隊に所属していないパイロットに、定期技量維持飛行の機会を提供する飛行隊です。

そのため時折とてつもなく偉い人が搭乗していたりします。
(ブルーインパルスや戦闘機部隊の飛行隊長は二等空佐だが、ここの部隊は一等空佐以上が飛行することも珍しくない)

機体カラーがグレーだからか、それとも中の人がお年を召しているからなのか、「シルバーインパルス」の愛称が付けられています(一説に平均年齢50歳とも・・・)

ブルーインパルス?あんなのは若造だと言えてしまうくらいの飛行経験を誇るパイロットさん達による熟練の演技はお見事の一言です。

飛行点検隊
YS-11FC/U-125

全国の飛行場を飛びまわって航法施設などが正常に稼動しているかを点検していく飛行点検隊、紅白のチェッカー模様がトレードマークの機体で「フライトチェッカー」の愛称で呼ばれます。

機体はYS-11FCとU-125を使用。

この飛行隊を航空祭で見れる最大の魅力は「今やオリジナルのダートサウンドを聞けるYS-11はここにしか残っていない」というところです。

航空自衛隊には多くのYS-11が配備されましたが、その大半は引退、または既にエンジンを換装してオリジナルの状態を失っています。

飛行点検隊に残るYS-11FCは、ダートエンジンのオリジナルを積んだ日本で最後のYS-11なのです。これが飛んでるところを見れるだけでも凄く価値があります。

航空救難団 空輸隊
CH-47J(LR)

入間基地に所属する大型輸送ヘリコプター・チヌークを使用する航空救難団・空輸隊の展示飛行です。

航空救難団=ヘリコプターで救助活動をやっている救助部隊のイメージが強いですが、この「空輸隊」も航空救難団の重要な戦力として日々活動しています。

飛行展示では例年、最後に後部ハッチを開いてご挨拶が定番の演目です。

チヌークは陸上自衛隊にも多数配備されていますが、陸自チヌークとは塗装が異なるので通称「空チヌ」という愛称が。

画像上が陸自チヌーク、画像下が空自チヌークです。
空チヌの方が全体的に明るい塗装になっています(旧空自迷彩服に近い)

航空救難団 救難隊
UH-60J/U-125A

(入間は逆光が強く、良い画像が無いので他基地の展示飛行の画像です)

先行して捜索・上空警戒にあたる救難機U-125Aと、実際に要救助者の元へ向かうUH-60Jヘリコプターのコンビで活動する救難隊です。
入間基地には救難隊が配備されていないのですが、航空救難団司令部があるため毎年他基地より救難隊が外来参加しています。

救難ヘリの凄まじい操縦技量(ホバリング中に風が吹いてもほとんど動きません)を生で見れる貴重な機会です。

第2輸送航空隊
C-1/U-4

輸送任務を担う輸送機部隊。
C-1輸送機に加えて、VIP輸送にも用いるU-4多目的機を飛ばします。

また天候(特に風の強さ)が条件内に収まれば、習志野の空挺部隊による落下傘降下展示も合わせて披露されます。

ここの部隊の何が凄いかというと輸送機なのにアクロバット飛行するところです。

・・・?大丈夫です、皆様がお使いのPCモニター・スマホなどは正常に稼動しています。
また撮影者が寝転がったり変な姿勢を取っているわけでもありません。

これが入間のC-1による世にも奇妙な「輸送機によるアクロバット飛行」です。
(一部、予行の画像が混じっていますが展示課目自体は本番と同じです)

C-1輸送機5機によるデルタフォーメーション

6機でデルタ隊形をやる年もあります()

2機の華麗な密着フォーメーション

そして展示の締めは低空進入からの急上昇!一気に速度を落として着陸コースへ入る華麗なコンバットブレイク!

もう本当「輸送機とは何なのか」というレベルで、凄い飛び方を見せてくれます。変な笑いが出てきます。

個人的に入間航空祭のメインディッシュは彼等だと思っています。

ブルーインパルスは他の基地でも見れますがC-1の飛行展示は今やここだけですからね。

ブルーインパルス

しかし、やはり何だかんだ言ってもブルーインパルスの人気は非常に高いですし、何度見てもその演技には魅了されます。

入間でのブルーインパルスのメリットとして

  • 天気に恵まれる可能性が高い(通称:晴れの特異日)
  • 展示飛行の時間帯は完全な順光

なので、非常に写真を撮る上では理想的な条件が揃いやすいのです。

ブルーインパルスについては、ここで詳細を申し上げるまでもないので、割愛致します。

ブルーインパルスの詳細はこちらへ

埼玉県警航空隊

入間基地には、実は航空自衛隊だけではなく埼玉県警の航空隊も在籍しています。
(基地の南東の一角を専用スペースとして使っています)

なので県警航空隊のヘリコプターも飛行展示はしませんが、地上展示で例年参加しています。

戦闘機は飛ばない?

最初に書いたとおり戦闘機の飛行展示は例年行われていません。
実際、戦闘機の機動飛行展示は凄まじい騒音を発するので、どうしても住宅街にある基地だと難しいのだと思います。

一方、地上展示用に飛来した戦闘機が航空祭終了のタイミングで帰っていくことがあります(通称:帰投タイム)

飛行展示かと言わんばかりに、豪快にアフターバーナーを焚いて離陸していくこともありますが、騒音配慮なのか控えめの離陸も珍しくありません。

どんな飛び去り方をするかは、その日になってのお楽しみです。

天候による制限

入間基地より日本航空機操縦士協会宛に発行されている要望書によれば、入間基地航空祭には天候のカテゴリーがⅠ~Ⅳまで、更にⅡ・Ⅲ・Ⅳは区分AとBの2種類があり、合計7段階の実施区分が存在するようです。

全ての課目を予定通り実施できるのはカテゴリーⅠ・視程8km以上で雲高2500フィート。
視程は満たすが雲高が足りない場合はカテゴリーⅡ・Aで機数を削減。
雲高も足りないとカテゴリーⅡ・Bで課目の一部変更と、段階的に制限が掛かっていきます。

ちなみに計器進入の最低気象条件を下回ると飛行不能になるそうです。

またブルーインパルスは独自の気象条件で区分を変更しますので、必ずしもこの限りではありません。

入間航空祭のアクセス

一番近いのは西武池袋線稲荷山公園駅(近いと言うより駅が基地の一部になっている)ですが、毎年凄まじい混雑となります。
なので筆者は毎年、少し遠くなるのを承知で西武新宿線の狭山市駅を利用しています。

狭山市駅を利用するメリットとしては

  • 朝一ならそれほど待たずに駅前から基地入口の少し手前までバスで行ける
  • 特急レッドアローが停車する
  • 稲荷山公園ほどの混雑にはならない(駅自体や駅周辺も広い)

座席指定の特急券を購入しておけば、もれなく混雑を回避して座って西武新宿駅までゆったりと帰れます。

個人的には行きも帰りも狭山市駅の利用がオススメです。

おまけ・入間基地に所属しているのに航空祭に全く出てこない飛行隊がある

入間航空祭には所属しているほぼ全ての航空隊が参加しますが、実は絶対に地上展示すらされない飛行隊が存在します。

電子作戦群・電子戦支援隊と電子飛行測定隊です。

電子戦支援隊は通称:電子戦訓練機と呼ばれ航空自衛隊の各部隊に対して電子戦、即ち電波等を用いた妨害の訓練を行うための機体です(いわゆるジャミング)。

レーダーなどの電波に関する情報は非常に機密度が高いため、電子戦支援隊の機体が展示されることはまずありません。

更に機密度が高いのが電子飛行測定隊。

こちらは周辺国の無線・レーダーなどに関する情報を収集する機体と言われています。
いってしまえば「偵察機・諜報機」の一種です。

先ほどの電子戦支援隊以上に、その中身が謎とされています。

 

この2つの飛行隊は航空祭でも姿を現すことは、まずありません。

国防の「影」の部分を担当する、非常に特殊な飛行隊なのです。