陸上自衛隊の施設科(工兵)というと、一般に災害派遣などでユンボなどの重機を用いて、道路の啓開作業に従事したりするイメージが大きいかと思います。

災害派遣での活躍は、施設科の重要な任務である陣地構築能力を活かしたものですが、実際の施設科は時に普通科(歩兵)よりも危険な任務を請け負うこともある職種なのです。

今回は、災害派遣ではなく、国防という本来の任務における、施設科の任務を解説していきます。

部隊の進む道を切り開く

日本の領土内に敵国の上陸を許した場合、当然、敵部隊は自衛隊による反撃を避けるため、まずは揚陸地点周辺の橋頭堡など陣地構築を図ります。

当然、陣地構築を許さないような沿岸防衛戦闘も展開されますが、一度、陣地を構築されてしまうと、その突破には普通科部隊のみでは力足らずです。

そこで施設科の戦闘支援部隊が「道を切り開く」必要が出てきます。

例えば、進行ルート上に地雷原の設置が予想される場合、地雷の除去を行わなくてはいけませんが、これを担当するのは普通科ではなくて施設科です。

地雷原処理車による広域の爆破処理や大きなローラーを付けた戦車によって「丸ごと踏み潰す」という方法が一般に用いられますが、地雷の処理方法としては「人の手」を使うこともあります。

地雷原の中にパイプに爆薬を詰めた爆破筒を並べて、人が通れるだけの範囲を確保、そこから更に進んで爆薬で広範囲を爆破、あるいは地雷を掘り返して除去などの任務を担うのです(現代では重機などが使えない場合の最終手段としての意味合いが強いようですが)

当然、敵も地雷原を破壊されれば敵主力の進行を許すことになるので、射撃や砲撃で妨害してくるので、被弾するリスクを背負いながらの決死の作業です。

また、敵の破壊工作により橋が使えず川や地形障害を突破できないといった場合に、それらの機能を修復させるのも施設科の重要な任務です。

自走架柱橋などの装備を用いて、自衛隊の主力部隊が進行するための橋を用意します。

この橋は種類によっては主力戦車でも渡ることが可能なほど頑丈なもので、味方部隊の作戦行動を支える上で必要不可欠です。

また坑道隊として、トンネルの掘削作業に従事する部隊もあります。

旧日本陸軍では
「雨と散りくる弾丸を身に浴びながら橋かけて我が軍渡す工兵の功労何にか譬うべき」
と歌われた通り、敵に最も狙われやすい場所で、味方部隊の進行を支える施設科部隊は、自衛隊にとって不可欠なのです。

敵の進行を食い止める障害の構築

施設科は攻勢の時だけでなく、防御戦闘でも非常に危険な役目を担います。

部隊が後方へ移動するにあたり、当然少しでも敵部隊に追いつかれるまでの時間が短いほうが体勢の立て直しを図る上で重要です。

その上で「障害の構築」は非常に大切な要素となります。

例えば地雷原の設置(自衛隊では対人地雷は廃棄していますが、対車両地雷は健在です)、鉄条網の設置、塹壕の構築(幅数メートルの溝を掘られると、キャタピラ車でも突破は出来ません)などです。

また必要であれば敵進行ルートの橋を爆破する、トンネルを大量の瓦礫で埋めてしまうなどの措置を取ることもあります。

これらの任務も施設科部隊の担当となりますが、当然、部隊の最も後ろで作業を行うことになります。

無論、特科や普通科・機甲科などの援護射撃を受けながらの作業となりますが、味方の通過が完了するまで障害で完全に道を塞ぐ事は出来ないので、誰よりも最後に残るのは施設科部隊です。

 

陸軍の主力は歩兵・砲兵・騎兵(機甲)、そして工兵と言われます。

災害派遣で何かと見かける機会の多い、施設科部隊ですが、国防という観点から見ても、国には欠かせない役割を担う部隊なのです。