見敵必撮・レコンファントム501飛行隊
航空自衛隊の3桁飛行隊は幾つもありますが、百の桁に対して飛行隊が1つしか無いというパターンが2つだけあります。
1つは政府専用機を運航する千歳・701飛行隊(シグナス)。
もう1つが500番台に、ただ1つだけ存在する偵察航空隊隷下・501飛行隊。
航空自衛隊で唯一「偵察」を主任務とする特殊な飛行隊は、松島基地・入間基地と本拠地を移動して、現在は百里基地を本拠地としています。
またこの際に、初代RF-86Fが引退となり、機体はRF-4Eと変わりました。
今回は、航空自衛隊の中でも異色の存在、501飛行隊を解説します。
501飛行隊の任務
「偵察機」と聞くとU-2偵察機のように「高高度を飛行する」イメージがあるかもしれませんが、これら高高度を飛行する偵察機は「戦略偵察」と呼ばれる任務を担っています。
即ち、敵国の動向などを大まかに把握することが目的であり、被撃墜リスクを避けるため、高高度飛行を行うか最近ではグローバルホークなどの無人機がこの任務を担うようになっています。
軍事衛星の性能向上により固定翼機による戦略偵察は、かつてほど重要な意味は持たなくなっていますが、反面で「衛星よりも、より低い高度から撮影可能」という強みは健在です。
偵察衛星は高度2000kmを飛んでるのに対し、U-2などは高度数十km。
圧倒的に「近く」から撮影出来るのです。
さて、それに対して501飛行隊が担う任務は「戦術偵察」です。
戦略偵察がいわゆる「隠密」に当たるのであれば、戦術偵察機の仕事は「強行偵察」。
必要であれば、敵航空機や対空兵器の迎撃リスクがある場所へも向かい、戦術情報を入手してくるという、非常に危険な任務なのです。
ベトナム戦争では同様の任務にRF-101が用いられましたが「予備機を使い果たした」と言われるほど、その損耗率は高かったと言われます。
その為、機体も戦闘機をベースとした、非常に速度・機動力に優れた機体となっており、航空祭の戦術偵察展示でも、戦闘機部隊の機動飛行顔負けの凄まじい動きを見せてくれます。また迷彩塗装も、上空の敵監視から欺くための塗装です。
なお日本では航空偵察を主任務とする部隊が501飛行隊しか無いため、頻繁に全国各地へ展開してます。
筆者が4月に沖縄へ行った際も、901号機が那覇基地へ展開していました。
最近では沖縄近海での中国海軍の動向などに対応してか、沖縄方面にも度々現れているようです。(高齢の機体なのに、お疲れ様です・・・)
また、災害発生時にも要請があれば現地へ向かい、上空からの撮影任務を行う事があります。
高高度から震災の全容を「画像」として司令部に提供できるメリットは、部隊を動かす上で計り知れないものがあるのです。
ちなみに501飛行隊の部隊マークはキツツキのキャラクター、ウッドペッカー
可愛いマークですが、飛びっぷりはヤンチャを通り越して「凶暴」です(笑
RF-4E/RF-4EJ
501飛行隊が運用している機体は2種類存在します。
1つは最初から偵察専用機として導入されているRF-4E。
自衛隊のファントムは、一部を除いてライセンス生産されていますが、RF-4Eについては完成品の輸入という形で導入されています。
機首の先端部に機銃が付いておらず、代わりにいくつも撮影機器用の窓が備えられているのが、偵察専用型RF-4Eの大きな特徴です。
機体番号は900番台が与えられています。
RF-4Eには3機だけ洋上迷彩塗装機も存在します。
2017年春現在、901・905・913の3機が洋上迷彩機です。
もう1つの機体はイーグルの導入により余剰になったF-4EJを近代化改修せずに、偵察機仕様へと変更した機体でRF-4EJ。
機体番号3桁はF-4EJ時代のものが引き継がれたため、300番台の番号となっています。
RF-4Eがグリーンとカーキ系の塗装なのに対し、RF-4EJはグリーンとグレー塗装が施されているので、全体的に暗色系の雰囲気です。
こちらは機首部分にF-4EJ同様、機銃が設置されているので、偵察用の機器は機体下部のセンターポッドとして搭載します。
またF-4EJ時代の火器管制システムは、そのまま残されているそうで、有事の際にはそのまま、または簡易な改修で再び戦闘機としての運用に戻すことも可能とのこと。
(ただし制空戦闘機としての能力は・・・)
ちなみに偵察機器搭載のポッドは3種類存在して、それぞれ搭載している機器や使用目的が異なるそうです。
501飛行隊の今後
一時期、将来的に余剰となるF-15Jに偵察ポッドを搭載して、501飛行隊の後継機種とする計画がありましたが・・・性能不十分としてポシャって以降、音沙汰無しとなり、恐らく計画は頓挫したものと思われます。
防衛大綱では航空偵察部隊そのものが将来的に無くなるとされています。
恐らくはF-35Aの優れたセンサ類を活かして、戦術偵察任務を付与するのではないでしょうか。
F-4EJ改部隊の更新に合わせてF-35A部隊に偵察任務を付与するか、またはF-15JのPre-MSIP更新に合わせて同様の転換を行うか。
どちらにせよ、偵察専門機という飛行隊が無くなることは確実と思われます。
RF-4Eが14機、RF-4EJ改が15機、全29機が存在したレコンファントムですが、平成28年度の資料によれば現存する機体は合わせて13機しかないとのこと。
残る機体も寿命には限りがある為、最早レコンファントムの引退は目前に迫っている状態です。
今となっては貴重な有人機による戦術偵察部隊501飛行隊とレコンファントム。
その姿は今のうちに目に焼き付けたほうが良いかもしれません。
[…] 500番台は501飛行隊のみが存在します。 […]