陸上自衛隊の所有している航空機というと、真っ先に思いつくのは「ヘリコプター」だと思います。
実際、陸自はおよそ390機の航空機(平成28年度防衛白書より)を所有していますが、そのうちの約98%は「回転翼機」です。

しかし、残りの2%、非常に僅かな部分で固定翼機も所有しています。

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今回は陸自の中でも異色の存在である、固定翼機LR-2を紹介していきます。

 

連絡偵察機第2号 LR-2

LR-2の機体番号は連絡(L:Liaison)及び偵察(R:Recon)任務に用いる機体という意味です。コールサインは「ROMEO(ロメオ)」が与えられています。
陸自の初代LRは三菱MU-2をベースとしたLR-1で、その後継機として導入された機体がLR-2です。
H28年3月末日時点での保有数は7機。
先代のLR-1は木更津に残っていた最後の1機が既に退役したため、全機用途廃止となっています。

最後のLR-1となった22020号機。木更津で大切に保管されている。

ビジネス機として有名なビーチクラフト社キングエア350ベースとなっており、最大10人を乗せて1800kmを移動可能な機体です。
一見、航続距離が短いようにも思えますが、これには考えられる理由が幾つかあり

①陸自の飛行場は滑走路が短いところが多いため、あまり重い機体は運用できない
②陸自は方面隊単位での運用が基本なので、全国を移動する必要性は低い

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大きな機体を購入しても、離着陸に支障のある飛行場が存在するなら、固定翼機を自前で持つ意味が薄れてしまいますからね。

LR-2の任務

先ほど書いたとおり、LR-2にはL=連絡機とR=偵察機という、2つの任務が与えられています。
まず連絡機としては各地の飛行場を有する駐屯地間を迅速に移動するための交通手段として用いられます。
それならヘリでいいじゃんと思われるかもしれませんが、飛行場があるなら固定翼の方が圧倒的に航続距離でも速度でも有利なのです。
北海道を管轄する北部方面隊だと移動距離も数百km単位になりますので、固定翼の移動手段があることは、非常に有意義だと思います。

もう1つは偵察機としての任務。

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胴体下部に大きな出っ張りがありますが、この部分は偵察用機器を積んだ偵察ポッドとなっており、上空からの偵察任務を行う事が可能です。

これも回転翼機じゃダメなのかという声がありそうですが、戦地偵察任務は敵のSAMなどに補足される恐れもあるため、出来る限り「高く」または「速く」飛ぶほうが危険度は下がります。
ヘリの上昇限度は総じて固定翼のそれに比べて低く、また速度も圧倒的に劣ります。
故に上空からの偵察であれば、固定翼に圧倒的な分があるのです。

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偵察ポッドは着脱式らしく、付いていない状態で飛行していることも多々あります。
(そもそも1機に1台の割合で存在するのか不明)

離島の貴重な命綱・急患搬送にも使われる

連絡偵察を任務とするLR-2ですが、もう1つ重要な役目として、急患輸送用としても多用されています。

特に沖縄の第15ヘリコプター隊に所属するLR-2は出動頻度が非常に多く、平成29年3月には第15ヘリコプター隊に計10回の出動要請が掛かりましたが、そのうち2回はLR-2による急患輸送が行われています。

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固定翼機は有視界飛行を基本とする回転翼機に比べ、夜間・悪天候時におけるフライトに対応しやすく、ヘリが飛べない状況でも固定翼なら飛べるというケースは多々あります。

LR-2は1000mの滑走路があれば十分な燃料を積んで運用する事が可能であり、小さな飛行場のある離島へも急行することが可能です。

離島にとっては悪条件でも飛行可能なLR-2は、貴重な命綱でもあるのです。

しかし平成29年には急患輸送へ向かうLR-2が函館山中に墜落するという痛ましい事故も発生しています。

LR-2の乗員は何処で訓練してるの?

陸上自衛隊には自前での固定翼機パイロット養成課程は存在しません。
LR-2の操縦士候補生は、海上自衛隊小月航空基地にお邪魔して、T-5に乗って固定翼操縦訓練を受けているそうです。
(ちなみに小月においては海上保安庁のパイロット候補生も一緒に教育を受けているとか)

LR-2を見れる駐屯地

LR-2の配備状況は若干特殊となっており、東北方面・東部方面・中部方面の3方面隊の機体は木更津の連絡飛行隊に全て集約されています。
加えて北海道では丘珠飛行場、九州では高遊原(熊本空港)、そして沖縄那覇。
所属しているのは4箇所の飛行場ですが、連絡機なので飛行場のある駐屯地には度々姿を見せており、この記事の写真も立川で撮影したものです。

痛飛行機弐