航空自衛隊・電子作戦群 航空祭に現れない、基地HPにも載ってない飛行隊

航空自衛隊・電子作戦群 航空祭に現れない、基地HPにも載ってない飛行隊

航空自衛隊はかなり情報が開示されている組織で、各基地のHPには所属する飛行隊や航空機が紹介されています。

しかし都心に最も近い航空基地の一つ、埼玉県の入間基地に「基地のHPに載っていない」飛行機が存在するのをご存知でしょうか。

航空総隊隷下・航空戦術教導団に属する「電子作戦群」の機体です。

今回は、入間をベースに全国で任務に当たる電子作戦群の部隊を紹介していきます。


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電子作戦群は秘密の存在?

結論からいうと「NO」です。

電子作戦群の存在は、官公庁のHPや公文書などにも記載されており、電子作戦群指揮官の人事もオープンになっています。

防衛省発令 平成29年12月23日付(外部リンクpdf)

そのため存在そのものが秘匿されているわけではありません。

電子作戦群の構成

電子作戦群には平成30年現在、3つの部隊が存在することが書類などより確認出来ます。

  • 電子戦隊
  • 電子飛行測定隊
  • レーダー評価隊
電子作戦群
群本部にあっては群司令
レーダー評価隊、電子飛行測定隊及び電子戦隊にあっては隊長
(特定防衛機密の保護に関する訓令より引用)

またこれらを束ねる「群本部」も存在します。

このうち航空機を運用するのは「電子戦隊」と「電子飛行測定隊」です。

なお「電子戦支援隊」という名称がマニアの間では以前より広く使われていて、筆者自身も電子戦支援隊と呼んでいたのですが、現在この部隊名はどうも存在していないようです。

筆者も今回この記事を書くにあたり、防衛省・各自衛隊などから公表されている資料を読み直して分かったのですが、内部部局(人事教育局長)より各幕僚長宛に出された通知「乗員の指定について」の中で

航空戦術教導団の電子作戦群の電子飛行測定隊の隊長、飛行班の班長及び班員並びに電子戦隊の隊長、飛行班の班長及び班員

という表記があります。

この通知は自衛隊の人事給与管理の中で、いわゆる飛行要員の区分を定めるためのもの。

つまり電子作戦群隷下においてパイロットが在籍する「電子戦支援隊」という部隊は無く書類上「電子戦隊」なのです。

意外な再発見でした。

電子戦隊
(電子戦支援隊)

C-1輸送機021号機を改造した通称「カモノハシ」と呼ばれる機体、EC-1。

この機体が所属するのが「電子戦隊」。

電子戦隊は先のEC-1及びYS-11EA型を使用して各地において電子戦訓練の支援任務を行っています。

レーダーサイトや航空自衛隊の航空機に対して電子戦(いわゆるジャミング)の環境を擬似的に再現して、その訓練にあたるというものです。

航空警戒管制部隊等において、敵からのECMに的確に対処するため、電子支援訓練機EC-1に搭載した訓練用ECM装置を用い、地上及び機上の航空警戒管制レーダ、地対空誘導弾レーダ等に対するECMへの対処訓練を定期的に実施している
(平成24年度政策評価書より)

ジャミング用の装置としてEC-1はJ/ALQ5改(当初J/ALQ-5だったものが平成23年度より能力向上型になっている模様)、YS-11EAはJ/ALQ-7を搭載しています。

全国各地の部隊・レーダーサイトなどを訓練対象としているためか、定期的にホームである入間以外の飛行場・基地などでも目撃されています。

またEC-1については10年ほど前に岐阜基地の航空祭などで「地上展示」されていたことがあるそうです。

電子飛行測定隊

電子飛行測定隊はYS-11EBを運用しています。なお防衛省の資料には「電波情報収集機YS-11」と書かれています。

正直なところ何故「航空戦術教導団」の隷下に入っているのかが謎な部隊です。

と、いうのも航空戦術教導団は電子作戦群の他に、高射教導や飛行教導(いわゆるアグレッサー)など、自衛隊全体の能力向上を目的とした研究や、訓練指導を行う教導部隊などが集まる組織です。

対してYS-11Bが担う任務は諜報活動の一環である『ELINT』
ELectric INTelligence すなわち電波に関する情報収集。

想定される脅威に対して、相手がどのようなレーダーや通信の電波を使用しているか情報を集めてくるのが任務です。

なので「教導」とは明らかに違う、むしろ偵察に属する任務を帯びているのですが

  • 電子戦隊と一緒の組織にした方が電子戦情報の管理が容易になる
  • 老朽化の進むYS-11を一元管理できる
  • 『諜報』という言葉が政治的に嫌われるので、隠れ蓑にしている

あたりの理由を筆者は考えています。電子戦に関する情報は非常に機密性の高いものなので、下手に分散させるのは愚策かなと。

レーダー評価隊

この部隊に関してはほとんど情報が出ていません。

ただし次期電波情報収集機の配備に関して狭山市宛に防衛省が出した資料の中に「電測隊局舎:取得データの解析評価に使用」という文言がありますので、恐らくはYS-11EBが集めてきた情報を解析するための部隊ではないかと思われます。

 

なお電子作戦群においては、次期電波情報収集機としてC-2輸送機の改造型を用いるとされており、先日岐阜基地で初飛行しているのが確認されています。

予定通りであれば2018年3月までには入間基地に実用試験のためにやってくるはずです。