ラペリング、ファストロープ。ヘリコプターからの降下方法あれこれ
固定翼機と異なり、一定の場所に留まることの出来るヘリコプター。
軍隊においても、その特性を活かして隊員を空中機動により迅速かつ地形の制約を受けずに投入するという役割を担うことが出来ます。
ヘリコプターから隊員が降下する方法は幾つかあり、それぞれに長所・短所が存在します。
今回は、そんなヘリからの降下方法の紹介です。
飛び降りる
シンプルイズザベスト、もっとも単純で何の準備もいらない降下方法、それは「飛び降り」
ヘリコプターの高度を人が飛び降り可能なところまで下げて、隊員は機体からジャンプして地面に降り立ちます。
(必ずしもヘリが着陸する必要はありません)
先ほども書いた通り、ロープもフックも何も準備がいらない、究極のシンプルな方法ですが、当然ながら人が飛び降りても怪我しない高さまでヘリの高度を落とさないといけません。
故に、周りに建物や樹木があるような状態ではローター接触の恐れがあるため、地形の制限を受けやすいのがデメリットと言えます。
また着陸する場合には離脱に時間を要するため、被弾のリスクが大きくなります。
ホイスト降下
こちらは戦闘というよりはレスキュー・救助で見かける機会が多いですが、ホイストで隊員を吊って上げ下げする方法です。
なおホイストは自衛隊で装備しているUH(多用途ヘリ)のほとんどに標準装備されているか、必要時に機体へ装着する事が出来ます。
(画像のUH-1Jは必要時に装着するタイプ)
ホイストを使った降下は速度を調整することが出来るので、ゆっくりと慎重な降下が可能な反面、迅速な降下が不可能です。
戦闘行動においては空中をゆっくり降りる隊員はただの的になってしまうので、もっぱら救助用というわけです。
なおホイストの操作は、主に機上整備員(FE)が担当します。
航空救難団の装備するUH-60Jの場合にはホイスト操作と同時に、キャビンにある操縦装置でホバリングの位置を微調整することも可能です。
ラペリング降下
ヘリからの降下方法といえば、これ、というくらいに有名なラペリング降下。
なお自衛隊では「リペリング」が書類上の正式名称となっていますが、ここでは一般的なラペリングと記述します。
ラペリングはロープやカラビナを巧みに操ることで、その摩擦により降下速度を調整する降下方法です。
ホイストと比較すると各段に早いスピードで降下することが出来て、更に降下速度を調整できるので飛び降りたら負傷するような高さからでも降下が可能なラペリングですが、当然欠点もあります。
まず1つは準備と離脱に時間が掛かるということ。
ロープの摩擦を利用する方法のため、決められた手順や結び方でロープやカラビナを用意する必要があり、かつ降下後にはそれを解除する必要があります。
これを短時間で迅速に行うには当然、十分な教育・訓練が不可欠です。
また、これは隊員の方から聞いた話ですが、降下速度の調整を誤ったり空中で正しい姿勢を保てないと降下途中で停止して身動きが取れなくなることがあるそうです。
(ヘリの高度を足が付くまで降ろしてもらうか、引き上げてもらうしかないとのこと)
ラペリングは必ずしも万能な方法ではないのです。
ファストロープ
ラペリングのようにロープの摩擦を利用するのではなく、人間の手と足の力だけで降下するのがファストロープ降下と呼ばれる方法です。
ラペリングに使うものよりも一回り太い特殊なロープを地面に降ろして、それを伝って隊員が降下していきます。
この際、命綱の類は一切取り付けません。
何も準備が必要無い為、特に複数の隊員を短時間で素早く展開させるのに適したファストロープ降下ですが、自らの手と足だけが頼りという非常にハイリスクな方法でもあります。
様々な方法を紹介してきましたが、どれが「正解」というのはありません。
今回の件に限らずですが、一長一短、向き不向きがあるのです。
とても理解しやすかったです。