自衛隊機は免許がいらないは本当?自衛隊機で適用除外される航空法の解説
道を走る自動車には道路交通法や道路運送車両法が適用されます。
国の発行する免許証を持って車検に適合した車両、または許可を受けた車両でないと公共の道路を走ることは違法行為となるのは皆様ご存知の通りです。
同様に空にも「航空法」があります。
飛行機を操縦するにはライセンスが必要ですし、耐空証明を受けた機体か許可を受けた機体(試作機・国外登録機など)でないと車でいうところの車検切れの扱いを受けます。
しかし自衛隊(陸海空共通)の機体は、自衛隊法によりこれら航空法の適用が大幅に免除されています。
実際、どんな内容が免除になるのか、幾つかピックアップしていきます。
①免許・ライセンスが不要
本来、自衛隊のパイロットは飛行機を操縦してお金を貰うわけなので、事業用操縦士に該当します。
しかし法律上は国の発行する事業用操縦士ライセンスや、極端な話、自家用操縦士の資格すら無くても自衛隊機の操縦は航空法には抵触しません。
ただし操縦訓練の課程において事業用操縦士の資格は取得します。
また、防衛大臣発行の航空従事者技能証明や計器飛行の技能証明があり、これらを取得したものが正式に「操縦者」として指定されます。
同様に操縦訓練を行う教官についても、防衛省独自の資格があります。
なので免許やライセンスが要らないというよりも
承認者が国土交通大臣ではなくて、防衛大臣に変わった
というのが正しい解釈かと思います。
②耐空証明がいらない
車でいうところの車検にあたる「耐空証明」が飛行機には義務付けられていて、これをパスしないと空を飛ぶことは出来ません。
しかし自衛隊機は原則として、耐空証明を受けずに空を飛ぶことが出来ます。
ただし、これも防衛省独自の基準が定められており、その基準に適合するように運用されているので、全く検査が行われないというわけではありません。
何故、自衛隊機は耐空証明が免除されているかというと、自衛隊機を民間機の基準で審査するのは無理があるというのが大きいと思われます。
特に戦闘機は極限まで性能を追求した機体で、民間機とは全く別の設計思想に基づいています。
軍用機で耐空証明を得るというのは、例えるなら「公道走行不可のレース専用マシンを車検に通す」ようなものなのです。
その他、言われてみれば納得という航空法の適用除外をまとめていきます。
適用除外される法律 86条
第八十六条
爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれのある物件で国土交通省令で定めるものは、航空機で輸送してはならない。
飛行機に乗るときには「危険物の持ち込み」は非常に厳しくチェックされますが、これは航空法で「航空機に危険物を載せるのはNG」という法律があるためです。
しかし自衛隊機は火薬・炸薬その他諸々爆発物を運ぶのがお仕事なので、航空法を守っていると何も出来ません(苦笑
適用除外される法律 89条・90条
第八十九条 何人も、航空機から物件を投下してはならない。但し、地上又は水上の人又は物件に危害を与え、又は損傷を及ぼすおそれのない場合であつて国土交通大臣に届け出たときは、この限りでない。
第九十条 国土交通大臣の許可を受けた者でなければ、航空機から落下さんで降下してはならない
航空機から物を落としたり、無許可でスカイダイビングを行うと違法となりますが、ご存知の通り、空挺部隊は頻繁に降下訓練を行います。
また「物を落とす」なので、対地爆撃訓練や哨戒機のソナー投下なども該当しますね。
これもやはり法律を律儀に守ってしまうと、自衛隊の任務・訓練が何一つ行えなくなってしまいます。
自衛隊で輸送機のパイロットをし、飛行時間が15,000時間以上だった方、また、元ブルーインパルスの編隊長で飛行時間が6,000時間以上の方を知ってますが、退職しても、民間航空会社にすら行けないといっていました。今その方は、トラックの運転手やってます。
また、護衛艦の舵をとっておられた方も、護衛艦は操船できるけど、免許がないから民間の小型船舶すら操縦できないっていっていました。
まったく、この免許制度は、馬鹿げているというしか言葉がありません。同程度の資格保有者として扱っても全然問題ないだろうし、むしろこの方達の方が訓練で鍛えられているので腕は良いでしょう。こういったことは、あまりというか、全然論じられない問題の一つですね。
小國様
コメントありがとうございます。
仰るとおり、海外では軍出身のパイロットというのは珍しくない存在ですし、言わば税金で培ったスキルが退官したら活かせないというのは、国にとっての損失だと思います。
縦割り行政を超えて積極的に議論してほしいものです。
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