塗装規則変更で見る、護衛艦・自衛艦のロービジ化

塗装規則変更で見る、護衛艦・自衛艦のロービジ化

近年、海上自衛隊では従来の艦艇塗装を改め「ロービジ化」と言われる新しい塗装への塗り替えが進められています。

遠距離からの視認性を下げるロービジ化ですが、海上自衛隊内部の規則上はどのように変わっているのか。

変更前後の艦艇の塗装規則から変更点を探ってみました。


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護衛艦の塗装はどう決まってる?

海上自衛隊の規則において、護衛艦を含む艦艇の塗装は

海上自衛隊の使用する艦船等の塗粧及び着標に関する訓令

そして、その訓令の内容について、より細かい部分を定めた

艦船等の塗粧及び着標に関する達

という規則により決まっています。

艦船等の塗粧及び着標に関する達については、令和元年11月28日付で最新版に更新されているので、いわゆるロービジ化について規定が決まったのはこのタイミングと思われます。

煙突の黒塗り塗装の変更

ロービジ化で一際目立つのが煙突の塗装。

今までは煙突の上部を黒く塗っていましたが、ロービジ化ではこの黒塗り塗装が廃止されました。

この部分について、規則を確認すると改定前では

第3条 煙突頂部及び煙突の後方にあるマストの中央部の塗粧の範囲は、それぞれ次の各号に掲げる範囲とする。
(1) 煙突頂部
ア 煙突の直径(煙突の形状が円形でない場合は、長径と短径の和の2分の1の長さとする。以下同じ。)の3分の1を標準とする。ただし、煙突の長さが直径の2倍に満たない場合は、煙突の長さの6分の1とする。
イ 煙突とマストが一体となつている場合は、別表第2を標準とする。
(2) 煙突の後方にあるマストの中央部
煙突頂部の黒色に塗粧した部分の下端に同一水平線上5メートルを標準とする。
2 前項各号に規定する範囲の煙突頂部及び煙突の後方にあるマストの塗色は、黒色とする。

となっていたものが

第3条 海上自衛隊の使用する艦船等の塗粧及び着標に関する訓令(昭和32年海上自衛隊訓令第35号。以下「訓令」という。)第4条第2項に規定する煙突頂部(自衛艦(砕氷艦、潜水艦救難艦、試験艦及び特務艇に限る。)及び支援船に限る。)の塗粧の範囲は、煙突頂部の先端から煙突の直径(煙突の形状が円形でない場合は、長径と短径の和の2分の1の長さとする。以下同じ。)の3分の1の長さの範囲を標準とする。ただし、煙突の全長が直径の2倍に満たない場合は、煙突頂部の先端から煙突の全長の6分の1の長さの範囲とする。
2 前項に規定する範囲の塗色は、黒色とする。

という内容に変更されています。

黒塗り塗装を行わない、という内容ではなく、一部の艦艇のみ黒塗り塗装を行うという内容になるようです。

艦番号・艦名

煙突と同じくらい目立つのが、艦番号や艦名の表記。

今までは白い文字に黒い陰影をつけてはっきりと目立つように書かれていました。
(写真奥・艦番号111の「おおなみ」が従来塗装)

この白い文字に黒い陰影という塗装は悪天候の中でもはっきりと目立つもので

艦の形がボヤけるくらいの視界の中でも、艦番号を読み取ることが出来ます。
(写真は横須賀沖に停泊中のDD116「てるづき」)

対してロービジ塗装では艦番号の色は薄く、また陰影も無くなりました。

この点について規則上では使用する文字の書き方についての規定が変更されており

別表第7
注1 艦船名は、その均衡上、その一部の文字を多少拡大又は縮少することにより、調整することができる。
2 文字の「かすれ」は、原画を標準として、多少の相違は、差し支えない。
3 陰影は黒色又は灰色とする。

となっていたものが

別表第7
注1 艦船名は、その均衡上、その一部の文字を多少拡大又は縮少することにより、調整することができる。
2 文字の「かすれ」は、原画を標準として、多少の相違は、差し支えない。
3 標記する文字及び数字には、黒色又は灰色で陰影をつける。ただし、自衛艦(潜水艦、エアクッション艇、練習潜水艦、砕氷艦、潜水艦救難艦、試験艦及び特務艇を除く。)に標記する文字及び数字には、陰影をつけない。

と、一部の自衛艦を除いて陰影を付けないという規則になっています。

なお、不思議なことに艦番号や艦名の文字の色は、現在確認されている規則では

(自衛艦の名称)第5条 自衛艦には、その名称を船尾最後面の中央部に左書白色(エアクッション艇にあっては黒色)で標記するものとする。この場合において、種別又は船型に番号を付して名称とする自衛艦の種別又は船型を表す記号は、次に掲げるとおりとする。

(自衛艦の番号)第6条 自衛艦には、その番号を両げん側前方に白色(エアクッション艇にあっては黒色)で標記するものとする

と、艦名や艦番号の文字は「白色」とするという規定から変わっていません。

どうみてもグレー・灰色に見えますが、白を薄く塗っていて船体の灰色の塗装と混じっているということなのか、あるいは防衛大臣の認可を得ることで規則とは異なる塗装をすることが出来るという特例が定められているのでそれを適用しているのか、この点は謎です。
(訓令が改訂されたものが公開されていないだけ、という可能性も無きにしもあらず)

ロービジにならない艦もある?

先ほどまでの規則を読んでいると、○○を除く、という文言が多く見られます。

煙突と文字の規定の双方で挙がっているのは

  • 砕氷艦
  • 潜水艦救難艦
  • 試験艦
  • 特務艇

の4種類。

これらの艦は、ロービジ化とは逆で目立った方が良い艦、または任務の内容からロービジ化する必要が無い艦ということかと思われます。