元祖・攻撃ヘリコプター AH-1コブラ

元祖・攻撃ヘリコプター AH-1コブラ

ヘリコプターが軍用として広く使われるようになって、最初の任務は、やはり「輸送」でした。

地形障害に関わらず移動できて、かつ速度も車両に比べて速いヘリコプターによる歩兵展開は、それまでの戦場を大きく変化させることになります。

しかし、ヘリコプターにはどうしても「装甲が弱い」という欠点があります。
装甲が弱い汎用ヘリコプターでは、着陸地点周辺に小火器で待ち伏せされただけでも任務に支障が出る可能性があり大きな脅威となりました。

そこで「装甲と制圧射撃が可能な武装を備えた、エスコート用のヘリコプター」という考え方が生まれます。

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当初は、いわゆる「ドアガン」や、汎用ヘリコプターを武装仕様にしたものが使われ、これも十分な成果がありました。
しかし今度は「武装のせいで重くなり、運動性が落ちる」「武装ヘリが鈍足なせいで、全体の作戦速度が落ちる」という問題が浮上します。
汎用ヘリベースで武装するには、やはり限界があったのです。

そこで「重火力を備えた、専用のヘリコプター」という考えに至ります。

この結果、生まれたのがAH-1 コブラです。

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AH-1コブラ その特徴

それまでのヘリコプターは「輸送用」でしたので、コクピット配置は並列複座でした。

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これに対し搭乗員2名を「縦」に並べるという概念を、初めて導入したのがコブラです。

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AH-1S 前部ガンナー席

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この結果、コブラは非常にスリムな横幅の機体に仕上がることになります。
その幅は、およそ1mしかありません。
幅が狭いということは、正面から見てそれだけ発見されるリスクが低くなるということで、輸送ヘリに先行して「殴りこみ」をかけるコブラにとって、このデザインは大成功ともいえるものでした。

ちなみに戦闘機の複座は前が操縦士で後ろがオペレーターですが、コブラの場合は操縦士が後ろ、前は火器管制を担当するガンナーと、戦闘機とは逆になります。

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機首の武装は、当初M134、いわゆるミニガン、またはグレネードランチャでしたが、後に20mm3砲身のM197機関砲に切り替わりました。

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M197は戦闘機に搭載されるM61バルカンの砲身数を減らしたバージョンです。

射撃可能な速度は730発/分で、バルカンの1/5以下に落ちていますが、ヘリという運用重量に限りのある母機では、これで十分だと言えます。

運用される弾種にもよりますが、焼夷榴弾を用いた場合、鋼鉄で10mm以上の貫通力を持つと同時に、着弾時に炸裂して破片をバラまき半径2m以内のソフトターゲットに対して非常に大きなダメージを与えます。

陸上自衛隊HPより
陸上自衛隊HPより

 

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更にハイドラ70ロケットポッド(19発入)を2個、TOW対戦車ミサイルを8発まで携行可能で、20mm機関砲の効かない重装甲車両に対しても有効な攻撃を行えます。

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TOW誘導用のセンサー部

但し、TOW対戦車ミサイルは現代のミサイルで標準的な仕様となっている「撃ちっ放し」、すなわち射撃後に発射母機からの誘導を受けなくて良い能力は有していません。

ミサイル弾体とコブラは発射後も通信用のケーブルで接続されており、半自動指令照準線一致方式という、母機の指示するポイントへ飛んでいくという方法です。

機体やミサイルに高い性能を必要としない反面、着弾の瞬間まで回避機動を取れないというのは、特に歩兵携行対空火器が発達した現代では大きなデメリットであり、航空機搭載用としては陳腐化は否めません。

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AH-1S ガンナー席 TOW制御パネル
右上のWIRE CUT で誘導制御線を切断出来ると思われる。

自衛隊のコブラ

陸上自衛隊にはAH-1Sコブラが1980年代より調達開始され、合計90機が導入されました。

各方面隊の飛行隊に対戦車ヘリコプター隊が置かれ、全国に配備されています。

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紆余曲折ありほとんど購入されなかったアパッチと比較しても、圧倒的にコブラの方が数も多く、陸自の攻撃ヘリでは主力機と言えます。
(ちなみに陸自での正式名称は「対戦車ヘリコプター」です。攻撃という単語を嫌うため)

しかし初期導入から30年以上が経過、先ほども書いたとおり撃ちっ放し能力を持たない火器管制システムなど、一線級装備としては正直なところ「古い」部類に入りつつあります。

米軍ではAH-1Zヴァイパーなど、既に最新の火器管制能力や飛行能力の向上などを行ったモデルも導入されています。

AH-1ZはAH-1の名を受け継いでいますが、従来機の設計は1割も残っていないという新型機。

 

この先、自衛隊のコブラ後継機がどうなるのか、退役時期が近いだろうと言われる中で、難しい問題の1つと言えます。

なお航空祭や駐屯地祭では、なかなかに激しい機動を披露してくれています。

見れる機会の多い機種なので、是非足を運んでみては。

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