戦車・護衛艦・戦闘機、動かしている燃料は何?
戦闘機・戦車・護衛艦など、自衛隊の特殊な乗り物の数々。
これらの乗り物、一体何を燃料に使って動いているのか。
今回は自衛隊の乗り物の「燃料」について解説していきます。
戦車はディーゼル・軽油
陸上自衛隊で使用されている戦車や装甲車のエンジンは、民間のトラックなどと同じディーゼルエンジン。その為、燃料にはトラックなどと同じく「軽油」が使用されています。
また1/2トントラック、高機動車、軽装甲機動車などの小型の車両も基本的にエンジンはディーゼルなので、陸上自衛隊の車両で使用する燃料の大半は「軽油」です。
(ガソリンを使用するのは主に市販車をそのまま調達した業務車など)
防衛省規格における軽油の仕様はDSP-K2209Eという仕様書で定められていますが、この中身はほぼJIS規格のK2204の中身と同一である為、一般に使われている軽油と自衛隊で使用している軽油は基本的に同じものです。
護衛艦の燃料も軽油、だが特別仕様
最後の蒸気タービン艦(ボイラーで高圧蒸気を発生させてタービンを回す)しらね型護衛艦の退役により、現在配備されている護衛艦は全て主機としてガスタービンエンジンを採用しています。
(支援艦・観測艦などは、民間船舶と同様のディーゼルエンジン)
ガスタービンは幅広い燃料に対応可能で、非常用発電機などでは安価なA重油を使用しているものもありますが、護衛艦のガスタービンでは「軽油」が使用されています。
しかし、この軽油、先ほどの陸上自衛隊で使用されている軽油とは別物で
軽油2号(艦船用)
という名称となっています。
軽油にはJIS規格により特1号、1号、2号、3号、特3号(一般に特1号・1号が夏季用、2号が冬季用、3号・特3号が寒冷地仕様)という種類がありますが、海上自衛隊で使用するこの軽油2号(艦船用)という燃料はJIS規格には載っていません。防衛省仕様書にのみ記載されている、いわば「特注品」です。
2号(艦船用)(免税)は,JIS K 2204の2号による。ただし,引火点は61°Cを超えるものとし,流動点及び目詰まり点は特に調達要領指定書で指定する場合を除き,流動点は-5°C以下,目詰まり点は-2°C以下とする。また,蒸留性状90%留出温度は360°C以下とする。
(DSP-K2209Eより)
と書いてある通り、JIS規格における軽油2号をベースとしつつも、様々な特注規格が求められています。
このような特注品の燃料を使用する理由として、海上自衛隊の艦艇は北は北海道から南は小笠原諸島まで幅広い気象条件で航行することから、同一の燃料であらゆる条件下で航行可能にするためと言われています。
またこの軽油2号(艦船用)はアメリカ海軍をはじめとしたNATO加盟国で使用されているF-76という規格の艦艇用燃料とほぼ同じであり、海外での派遣時などにおいても寄港先で燃料の調達を受けやすいというメリットもあります。
いわば西側諸国の海軍の「共通燃料」なのです。
飛行機の燃料は民間機と同じものに切替中
防衛省の航空タービン燃料の仕様書には
- JP-4
- JP-4A
- JP-5
- Jet A-1
- Jet A-1+
の5種類の燃料が定義されています。
細かな違いを書いていくと長くなりますが
JP-4(軍用規格)
→主に空軍機・陸軍機向けとして使用される
JP-5(軍用規格)
→引火点が他の燃料に比べて高く、火災防止の為、海軍の艦載機燃料として用いられる。
Jet A-1(民間規格)
→民間で最もポピュラーなジェット燃料。
長年に亘り航空自衛隊・海上自衛隊では主にJP-4、海上自衛隊機では主にJP-5が使用されていましたが、近年では合理化及び民間空港での燃料調達の容易さなどから自衛隊でも燃料をJet A-1に切り替える方向に動いており、2020年現在では戦闘機の大半も民間旅客機と同じJet A-1が使用されることが多くなっています。
なお航空機用の燃料としてはレシプロエンジン用で航空ガソリンAVGASという燃料も存在しますが、2020年現在、単発プロペラ機のT-5やT-7も含めて自衛隊機は全てタービン機となっている為、自衛隊ではAVGASを使用することはありません。
護衛艦にもディーゼル主機のタイプあるよ。あぶくま型。