オリンピックに自衛隊出動。実は自衛隊の任務の1つ

オリンピックに自衛隊出動。実は自衛隊の任務の1つ

先日、東京オリンピックの組織委員会が防衛省に対して、東京オリンピック開催に際して警備などの協力を求めるという旨の報道が流れました。

東京五輪・パラ 会場警備などで自衛隊に協力要請
(外部リンク)

オリンピックに自衛隊というと「?」となるかもしれませんが、実はこのオリンピックへの協力という任務、自衛隊に与えられている仕事の1つなのです。

今回は、何故自衛隊がオリンピックに協力できるか、その理由を解説していきます。


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自衛隊法に明記

自衛隊が行動する根拠には、自衛隊法や防衛省設置法、または省庁間協力などがあります。

「省庁間協力」はピンと来ないかもしれませんが、例えば大災害発生時に首都圏のレスキュー隊や警察の救助部隊、またその車両・資機材などを自衛隊の所有する大型輸送機で空輸する場合などが、これに該当するケースとなります。
(総務省・消防庁が防衛省に「うちの物を運んでほしい」と依頼している)

ではオリンピックにおける自衛隊が動く根拠は何処に書いてあるのか?

実は防衛出動や災害派遣、領空侵犯措置などと同様に『自衛隊法』に書いてあります。

(運動競技会に対する協力)
第百条の三  防衛大臣は、関係機関から依頼があつた場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、国際的若しくは全国的規模又はこれらに準ずる規模で開催される政令で定める運動競技会の運営につき、政令で定めるところにより、役務の提供その他必要な協力を行なうことができる。

では『国際的若しくは全国的規模又はこれらに準ずる規模で開催される政令で定める運動競技会』とは、何処までのことを指すのか、これは自衛隊法施行令という法律で定められており

(運動競技会の範囲)
第百二十六条の十二
法第百条の三に規定する政令で定める運動競技会は、次の各号に掲げるものとする。
一 オリンピック競技大会
二 パラリンピック競技大会
三 アジア競技大会
四 国民体育大会
五 ワールドカップサッカー大会
六 ラグビーワールドカップ大会
(2021年7月 修正) 

となっています。

なのでオリンピックに自衛隊が協力するというのは自衛隊法で定義されている立派な『自衛隊の任務』であり、過去には東京オリンピック支援集団や札幌オリンピック支援集団という名前の大規模部隊が編成されていたこともあります。

なお自衛隊法施行令に基づけば国民体育大会(いわゆる国体)が協力できる最も小規模な大会となりますが、実際には各地の学生スポーツ大会や駅伝大会などでも自衛隊が協力することが多々あります。

実は過去にはお正月の恒例行事、箱根駅伝でも陸上自衛隊が協力していました。

画像引用元:1991年防衛白書 第3章・国民の自衛隊
http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/1991/w1991_03.html

これらは自衛隊法施行令の範疇からは外れますが、防衛白書によれば『地域協力』などといった名目で実施されています。

この根拠となるのは防衛省設置法の第4条で防衛省が行う業務として

“防衛に関する知識の普及及び宣伝を行うこと”

と記されている一文。

つまり”自衛隊をよく知ってもらうための活動”は立派な防衛省の業務だということです。

またこれについて細かい規則を定めている防衛省の広報活動に関する訓令には

第12条
実施担当官は、国の行政機関、地方公共団体、外国の行政機関その他の部外団体等から行事に対する協力の要請を受けた場合には、その行事が次の各号の一に該当し、かつそれに対する協力が広報上相当の効果があると認められるときに限り、所要の協力を行なうことができる。
(1)国の行政機関、地方公共団体、外国の行政機関又はその他の公共的な団体が主催する公共性を有する行事
(2)前号の団体以外の団体等が主催する行事で自衛隊と日本国民及び外国人との親和を図るため特に効果があると認められるもの。
(3)学術研究その他特に協力が必要と認められるもの。

と書かれており、防衛省・自衛隊の広報・PRに繋がり、かつ公共性がある場合には協力が可能となっているようです。

推測ですが、さっぽろ雪まつりへの協力などもこの根拠に基づいて実施されているのではないでしょうか。

 

また式典会場上空でのブルーインパルスの飛行も『広報活動』の一環と言えます。

費用は誰が払う?

自衛隊が活動するとなると、当然色々とお金が掛かる事になります。

給料を貰ってる隊員を従事させるということは、当然それも立派な費用です。

ではオリンピック等に自衛隊が協力した場合、その費用は誰が払うのか?

自衛隊法施行令を見ると

第百二十六条の十四
第百二十四条の規定は、法第百条の三の規定により運動競技会について協力を行なう場合の費用の負担区分について準用する。

第百二十四条
第百二十二条の規定による土木工事等の実施に必要な費用のうち、次の各号に掲げるもの以外のものは、当該土木工事等の委託及び実施を申し出た者(以下「申出者」という。)が負担するものとする。
一 隊員の給与(旅費を除く。)
二 隊員の糧食費
三 自衛隊の車両、航空機、船舶、機械及び器具の修理費

と、いうことで『申出者』、すなわち協力を申し出た組織が自衛隊に動いてもらった分の費用を負担することになります。

『警備』は可能?

今回の報道において筆者が1つ気になっている点として『警備』で協力を求めるとしている点です。

実は自衛隊法施行令において、協力できる内容として

第百二十六条の十三 法第百条の三の規定により運動競技会の運営について協力を行なうことができる範囲は、次の各号に掲げるとおりとする。
一 式典に関すること。
二 通信に関すること。
三 輸送に関すること。
四 奏楽に関すること。
五 医療及び救急に関すること。
六 会場内外の整理に関すること。
七 前各号に掲げるもののほか、運動競技会の運営の事務に関すること。

となっており『警備』というのは明記されていないためです。

会場内外の整理を行う『警備員』として解釈するなら別の話ですが。

前回の長野五輪などと比較しても国際情勢は大きく変化していることから、この辺をどのように法改正などで対応していくのか。

気になるところであります。