F-15Jは更なる改修でミサイルキャリアーへ。日の丸イーグルの未来予想図。

F-15Jは更なる改修でミサイルキャリアーへ。日の丸イーグルの未来予想図。

先日、平成31年度の防衛省概算要求が発表になり、その中にF-15J戦闘機の改修に関する事項が盛り込まれました。

F-35Aの調達が進む中、F-15Jはこの先どのような姿になっていくのか。

解説していきます。


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ミサイルキャリアーへ

先の概算要求資料によれば、F-15Jの改修の大きな方向性として

  • 搭載弾薬数の増加
  • 電子戦能力の向上

が挙げられています。

このことからF-15Jの新たな改修は、いわゆるミサイルキャリアーと呼ばれるタイプの戦闘機を目指すものと考えられます。

航空自衛隊が導入するF-35Aなど第5世代戦闘機は、その高いステルス性と引替えに搭載武装をウェポンベイに収めなくてはならず、搭載量に自ずと限界が生じます。

ミサイルキャリアーは、第5世代戦闘機とタッグを組むことで、この短所を補うことが出来る存在です。

即ち第5世代機が索敵・捕捉を行い、自らのミサイルではなく後方に控えるミサイルキャリアーに代わりに撃ってもらう。

これにより「手数」を増やすことが出来るのです。

F-15の強みと弱点

F-15は非常に優れた戦闘機です。

大出力のエンジン、大柄な機体、優れた機動性と第4世代を代表する制空戦闘機の1つであることは間違いありません。

しかしその一方、大きな機体が他でもない弱点でもあるのです。

F-15のレーダー反射断面積=RCSは一説に10㎡以上。

これは第4.5世代機と比較しても10倍近く、第5世代機比較では数千倍にも達する値であり、RCSの大きな機体は敵のレーダーに容易に補足されます。
例えばRCSが100倍なら探知距離は約3倍も長くなる計算です。

レーダーで如何に速く相手を見つけるかが勝敗の鍵となる現代の空中戦においては非常に不利なのです。

ミサイルキャリアー化はF-15の「大きさ」という強みを活かして搭載弾薬数を増やしつつ、索敵をステルス性に優れる第5世代機に委ねて自らは後方に陣取る事で弱点である被探知性をカバーする、ある意味でF-15らしい姿なのかもしれません。

どのような姿になるか

F-15のミサイルキャリアー化については、アメリカ空軍へボーイング社が提案したF-15 2040Cと言われる計画が既に存在しており、航空自衛隊のF-15J改修もこれに近いものになるのではないかと考えられます。

現行のF-15はミサイルを8発携行することが出来ます。
胴体下部ステーション左右に4発、左右主翼の各2発ずつです。

画像では胴体下部の左側ステーションに2発装着しているのが確認できます。

F-15 2040Cではこれを胴体下部ステーションはマルチエジェクションラックを用いる事で4発→8発に。更に左右主翼はミサイル4発を纏めて装着出来る4連パックランチャーにすることで左右で8発。

合計で16発のミサイルを搭載出来る機体にするものとされています。

加えてミサイルの携行数増加だけではなく、電子戦能力、特に自己防御能力の強化が図られています。
イーグル受動・能動警戒生存システム、通称EPAWSSといわれるデジタル式電子戦システムは、先に述べたF-15の大きなRCSという弱点をカバーするためには不可欠であると言えるでしょう。

但し、2040Cでは米軍機仕様でCFT=コンフォーマルタンク(機体側面などに密着させるタイプの増槽)の使用が想定されているのに対し、航空自衛隊のF-15JはCFTを装着出来ないため、胴体下部ステーションについては2040Cと違うものになる可能性があります。

改修は恐らくMJ機のみ

航空自衛隊のF-15には前期型のSJ・Pre-MSIPと後期型のMJ・MSIPという2種類の機体が存在していますが、恐らく今回の改修を受けるのはMJのみになると思います。

ミサイルキャリアーは機体単独ではその能力を発揮する事が出来ず、敵機を捕らえる「眼」となる第5世代機、更にはAWACSなどとのデータリンクが肝となります。
と、なると1553Bデータバスを持たず電子装備の換装に大幅な制限が生じるSJ機をミサイルキャリアー仕様に変更するのは相当な予算が必要になるでしょう。

またミサイルキャリアーがその真価を発揮するには「眼」となる第5世代機を十分な数揃える必要があります。
どんなにミサイルを積んでても敵を見つけて情報を貰わないことには撃ちようがないのです。

F-35Aは現在、F-4EJ改の後継機として2個飛行隊の配備が確定していますが、このまま終わるとF-15J飛行隊が7個飛行隊に対してF-35Aが2個飛行隊でアンバランスです。

なのでF-15SJ機の大半が改修を受けずにF-35Aに更新されて
F-35A飛行隊とミサイルキャリアー改修されたF-15J飛行隊が同数程度
という姿になるのではないでしょうか。

 

先に書いたF-15 2040Cは「2040年まで戦闘能力を保つ」という意味合いで2040の数字が付いているそうですが、我が国のF-15もまだまだ仕事を終える日は遠いようです。

※参考書籍

  • F-15完全マニュアル(イカロス出版)
  • J-Wings2016年9月号
  • 知られざるステルスの技術(著:青木謙知)
  • F-15の科学(著:青木謙知)