空挺降下はパイロットも大変

空挺降下はパイロットも大変

空挺降下はパイロットも大変

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高度340mからパラシュートだけを頼りに地上へ舞い降りる空挺隊員。

屈強な精神と高度なパラシュート取り扱いに関する知識・技術を求められますが、空挺隊員を目的地まで運び、無事に降下させる降下母機となる輸送機のパイロットも、実は非常に大変な仕事をしています。

一見、まっすぐ飛んでいるように見える、空挺降下の降下母機。
一体、どれだけ大変なのか解説していきます。

極限まで速度を落として飛ぶ

空挺降下の際に一番重要なこととして「正確なコースを飛ぶ」ことは勿論ありますが、それと同じくらい「極限までゆっくり飛ぶ」ことも求められます。

C-1輸送機の場合、第1空挺団の解説によれば降下時の飛行速度は約210km/hとのこと。
機体のサイズを考えると、これでもかなり「ゆっくり」なのです。

何故、ここまで速度を落とす必要があるかというと、地上降下後の作戦行動に大きな影響が出てくるからです。

C-1輸送機の場合、フルに搭載すると空挺隊員45名が搭乗可能ですが、降下に際してはどうしても1人または両ドアから2人ずつ(13式空挺傘だと可能です)順番に降りないといけません。

と、いうことは最初の隊員が降下してから最後の隊員が降下を完了するまでの間には相当な時間が経過することに。

仮に30秒掛かるとして、先ほどのC-1輸送機の速度であれば、その間に1750m進んでいます。
これが250km/hになると2083m、300km/hになると2500mです。
210km/hと300km/hでは750mもの差が生じます。

降下範囲が広がれば広がるほど、降下後の部隊再結集には時間を要します。
また、降下に必要な距離が長い→降下場所の制限が大きくなります。

その為、降下母機のパイロットは極限までゆっくり飛ぶことを求められるのです。

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よく見ると、フラップを下しているのが分かるかと思います。

飛行機にとって「ゆっくり飛ぶ」というのは、それだけ失速速度に近い状態で飛ぶことになるので、リスクを伴う飛び方です。
エンジンのレスポンスに限界がある大型のジェット機で、更に低高度を飛ぶ=失速時のリカバリー操作に余裕が無い、となればパイロットのプレッシャーは相当なものだと思います。

刻々と変わる機内重量

空挺降下でもう一つ大変なのが「積荷」である空挺隊員が次々と機内から出て行くので、機体の重量が大幅に変化するという点です。

空挺隊員の装備重量はおおよそ60kg~80kgと言われています。
(背嚢+落下傘+個人装備などの合算)
これに隊員本人の体重もありますから、1人降りるごとに150kg近く、両ドアから同時に降りる降下なら2人同時なので300kg一気に変化する計算です。

当然、重量が変化すれば、それに対する微調整を加えてやらないと高度・速度を保つ事が出来ません。

ゆっくり飛行するのに加えて、更に重量の変化に対する修正まで行い続けなければならないとなれば、パイロットの負担は尚更凄まじいでしょう。

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安全・確実な空挺降下を支える輸送機パイロット。
空挺降下の展示を見る際は、是非とも此方にも注目してみてください。