国産哨戒機 P-1

国産哨戒機 P-1

日本の海を空から見張る哨戒機。
(1990年代前半までは対潜哨戒機と呼称していましたが、現在は不審船対策の見張りなども行うため「哨戒機」と呼ばれています)

その任務はP-2J「おおわし」、P-3Cオライオンと引き継がれてきましたが、P-3Cで最も早く導入された機体で1980年代前半。既に、かなりの高齢機となっています。

そんなP-3Cの後継機として導入されたのが川崎P-1。

2016年3月末時点では、P-3C保有数が68機に対し、P-1が9機となっているので、まだまだ数の上ではP-3Cが海上自衛隊航空部隊の主力機と言えますが、P-1が最終的に70機程度まで配備され、P-3Cを置き換える予定となっています。
(平成29年度予算時点で33機の発注は確定)

今回は、日本の海を守る哨戒機、その将来を担うP-1の紹介です。

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輸送機と同時に開発された哨戒機

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P-1哨戒機の開発計画はC-X/P-X計画として、次期輸送機と次期哨戒機を同時に開発してコスト削減を図るという、珍しい経緯を辿っています。

しかしC-X(C-2)ほどではないものの、こちらのP-1もなかなかの難産となり、リベットに不具合が見つかったり気圧試験でヒビが入ったりと、トラブルを幾つも乗り越え2012年に初飛行。
2013年には1号機と2号機が配備されますが、配備後もメーカー試験飛行でエンジン全停止という、あわや大事故なトラブルが発生するなど、なかなかに苦難の歴史を乗り越えてきた国産機です。

P-1の特徴

海上自衛隊ではP-2J、P-3Cとターボプロップの哨戒機を長いこと運用してきました。

哨戒任務は低速域での長時間フライトになることが多いのでターボプロップの特性は要求にマッチしていると言えるでしょう。

P-1は、そんなターボプロップからターボファンエンジンに変更したという、歴史の転換点となった機体です。

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P-1のエンジンはIHI製のF7エンジン。P-1の為に開発されたエンジンで、バイパス比が非常に大きいのが特徴です。
F7エンジンのバイパス比は8.2:1。ボーイング737-700/800などのエンジンがバイパス比5.5:1と考えると、非常に大きなバイパス比を持ったターボファンエンジンであると言えます。

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T&Gの真下にいても、騒音はジェット機としては非常に小さい

このエンジンによりP-1は、ターボファンエンジンでありながら、哨戒機として必要な性能を確保するに至ったのです。

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出力は1発あたり6tonほどと控えめになっていますが、この機体サイズとしては珍しい4発機仕様です。

哨戒機のエンジンが4発は多いのでは云々というのは、何かと語られる機会の多い話で、双発エンジンにすると機体の構造がシンプルになるので、運用面(特に予算的なところ)で何かと有利になる反面、片方が停止すれば推力の半分を一気に失うことになる。
4発だと運用に手間とお金は掛かるが、エンジン1機の推力は1/4なので、1発やられても75%の推力を残せる。

哨戒機は特に磁気探知哨戒(MAD)をやる時には「プロペラが波飛沫掛かってなんぼ」と言われるほどの低さを飛ぶので、いざという時に推力の余裕がどれだけあるかは、普通の航空機のそれとは比較にならないほど命に関わる問題なのです。

P-1では結果的に現場の意見が優先され、4発機となりました。
(筆者も4発機で良かったと思う派ですが、こればっかりは正解はありません。一長一短ですから)

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哨戒機としての性能は従来のP-3Cと比較して大幅に進化していると言われており、機首などには対水上捜索なども可能なフェイズドアレイレーダーを装備。

また、対潜哨戒ヘリSH-60Kなどにも採用されている戦術システムの搭載により、従来の「職人業」と言われた対潜哨戒で、ある程度の自動化を実現しています。
(それでも最終的には人の判断が左右すると思いますが)

データリンクも備えており、水上部隊や空自と目標共有なども可能です。

P-3C同様、兵装にも対応していますが、ハードポイントの数が大幅に増えており、対艦誘導弾を最大8発携行可能とのこと。(いつかミサイル満載状態のP-1を見てみたい・・・)

これだけの搭載武装を想定している為か、空荷だとかなり推力に余裕はあるようで。
国内だとあまり激しい飛行をしているところは見ませんが、海外のエアショーを見る限り機動性はかなり高いようです。

P-1の今後

現在、P-1は平成27年度予算で20機の一括調達が計上されており、今後数年間はこの計画に基づき調達が継続される予定です。

平成30年度に20機のうちの5機が、以降1年毎に5機ずつ追加され平成33年度末にはP-1保有数は33機まで増加する見込みです。

現在公表されている予算では、ここまでしか分かりませんが、P-3Cの機体高齢化(寿命延伸措置は計画されています)を考えると、今後も1年に複数機の調達が継続されるのではないでしょうか。

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平成29年5月 この時点で最新だった5512号機
まだ尾翼に飛行隊番号が入っていない

平成30年4月
15号機の厚木配備を確認

現在の機体数を考えると、向こう10年くらいで、P-3CとP-1がほぼ半々くらいになるのではと思います。